es エス   2001年・ドイツ
出演: モーリッツ・ブライプトロイ/クリスティアン・ベッケル/オリバー・ストコフスキー
監督: オリバー・ヒルツェヴィゲル
 
 

 元新聞記者のタレクはネタを売り込むために潜入取材をやってみることにした。4000マルクの報酬を与えるとして募集したバイトを、囚人役と看守役のふたつのグループに分けて2週間役割を演じきるという実験内容だった。
 さて、この実験は1971年にスタンフォード大学心理学部で実際に行われ、2週間の予定が1週間で打ち切るハメとなってしまった、曰く付きの実験で、以後このような実験は禁止されることになったというのだから、どれだけ被験者が心理的に追い込まれたかが伺える。

 話を映画に戻そう。実験を行う教授らは常時監視カメラで記録を撮っており、そのことは被験者たちも皆知っている。看守役がどんどんエスカレートして威圧的になっていく様子をモニターするのだが、教授たちにとってはこれは予測範囲内のこと。というか、むしろそれを実証するための実験なのだ。
 檻の中で囚人が騒ぎ立てて収拾がつかなくなったとき、看守は暴力を使わずに鎮圧することを教授から要求されるのだが、これがすごい。まず消化器をぶちまけて、三段式の簡素なパイプベッドを取り除き、毛布類も持ち出す。さらに囚人を全裸にしてしまうのだ。そしてそのまま冷たい床の上で一晩を過ごさせる。
 いっておくが、囚人役は善良な市民である。

 これを見たとき、アメリカ兵士によってイラク人捕虜が虐待を受けているという報道を思い起こした。彼らも全裸にさせられて、さらには屈辱的な格好で写真に撮られている。
 映画では監視カメラのないところで、囚人に対し、おしっこをかけたり、バリカンで頭を刈ったりする。それはさらにひどくなってついには暴行を加え、女性の助手を連れ込んでレイプ未遂まで起こす。
 そこまでいくかよ。とも思うが、でもそれが人間のサガというものなのでしょう。
 大学内での実験でもそこまで人は凶暴になれるのだから、現場にいる軍人が横柄な態度になるのは想像するにたやすい。
 ある意味、この実験は成功なわけだ。
 行くところまで行き着いてしまった刑務所の中の狂気をこの映画で。断っておくが、最後まで救いようがない。

リアル度 
バトルロワイヤル度 


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(C) Sachiyo Kawana