ペイ・フォワード 可能の王国   2000年・アメリカ
出演: ケビン・スペイシー/ヘレン・ハント/ハーレイ・ジョエル・オスメント
監督: ミミ・レダー
原作: キャサリン・ライアン・ハイド
 
 

 「ディープ・インパクト」で有名となった監督、ミミ・レダーは女性だ。両者はまったく違うタイプの作品で、彼女自身も武器を振り回さない作品は初めてという。感動を売りにした今回の映画。彼女の手腕はいかに?
 「アメリカン・ビューティー」のケビン・スペイシー、「シックスセンス」のハーレイ・ジョエル・オスメントという、豪華キャストにも助けられ、物語は穏やかに進行していく。

 冒頭で登場するのは記者のクリス。取材中、強盗に車をつぶされ、途方に暮れているとジャガーをポンとくれた紳士がいた。腑に落ちないクリスは彼を追い回し、おもしろい話を聞き出した。
 一方で、中学生になったばかりのトレバーは、シモネット先生に「世界を変えるとしたらなにをするか」という課題で、ペイ・フォワード(次へ渡す)を考えた。親切を受けたら、別の3人に親切を渡すというもの。
 はじめはシモネットも「ユートピア的だ」と、成り立つはずのない法則と思っていたが、トレバーの懸命さに心打たれていく。

 物語は、ペイ・フォワードを成功させようと自分の周りの人間を助けるトレバーと、ペイ・フォワードを考えついた人物を取材するために聞き込みをするクリスの、二つの軸で描かれている。
 クリスのほうは、まるで噂話の元を探るようで、どこにたどり着くのか、見ている方はわかっているのだが、なかなかおもしろい。これが親切?と首を傾げたくなることもあるが、その相手にとって一番うれしいことは、まさに千差万別なのだ。

 トレバーの環境はまったくよくない。アルコールに溺れる母親と、家出を繰り返し、暴力を振るう父。いじめにあっている友達も救い出せず、自分には不可能なことがあると知ってしまう。
 だが、トレバーは諦めなかった。
 結末はあまりに唐突で、賛否両論だろう。これがドキュメンタリーだとすれば、確かに、ペイ・フォワードはニュースとなってより多くの人に浸透したかもしれない。
 けど、これは映画だ。わたしはまだ、ペイ・フォワードをしていない。もし、親切を渡されて、ペイ・フォワードの話をされたら、やってみようという気が起こるかも・・・。

感動度 
構成度 


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