三番目の妹


 私はよく同じ夢を見る。決まって三番目の妹が死ぬ夢だった。なぜそんな夢を見るのかわからない。たかが夢といっても、不気味なことに変わりはなかった。

 きのうも、妹は死んだ。サマースクールに出かけた妹は、河の中州に取り残され、鉄砲水に襲われて流されてしまったのだ。私も中学生の時、同じところへ行ったので、その情景が生々と浮かんだ。
 運良く妹の遺体は見つかったものの、損傷は激しかった。でも、実際には見たことがないから、ただのイメージでしかない。映画かなにかで見た水死体から思い起こしたのだろう。
 私は妹のアルバムから遺影を選んであげた。とても、妙な気分だった。

 妹にそのことを話すと、葬式ごっこがやりたいために生かしちゃ殺してるみたいだといわれた。
 そうなのだ。そもそも、なぜ三番目の妹なのだろう。実際、私にはひとりしか妹がいなかった。三番目の妹は私の空想で、この世には実在しない。夢になると出てくるのだった。

 私が五歳の時、夢の中で三番目の妹が生まれた。それからは、私と同じように夢の中で成長して、今では中学二年生だった。しかし、目が覚めるとき、必ず三番目の妹は死んだ。死ぬのを目撃することもあれば、授業中に亡くなったことを聞かされたこともあったし、きのうのように葬儀までやることもあった。
 今回の夢はちょっと長くて、出棺間際、遺体がなくなるという騒ぎが起こった。結局、見つからないまま夢が終わってしまったのだが、目が覚めるときには必ず三番目の妹はいなくなっていた。まるで、この世には存在しないことを認めているかのようだった。

 自然、疑いたくなるのは、三番目の妹の出生についてである。だが、五歳にもなれば、自分に妹ができたら、記憶に残りそうなものだ。実際、三つ年下の妹が生まれてきたときのことを、私はよく覚えている。
 もし、願望が夢に反映されるなら、お兄さんができていたはずである。私が生まれてしまった以上、それは永久に叶わない夢であった。妹はひとりいるのだし、もうひとりほしいとは思ったことがないので、どうして夢に出てくるのか、わからなかった。

 三番目の妹。私は思いきって母に聞いてみることにした。すると、母は三番目の妹ができていたかもしれないというのだった。
 私が五歳の時、母は妊娠したのだという。だが、経済的に余裕がなかったために、おろしてしまったそうだ。
 その子が男か女かはわからない。けれども、私は女の子だったと信じている。妹の霊が彷徨って、私の夢に入り込んでしまったのだと思いたい。今度、夢に出てきたら、ずっと寄り添っていよう。絶対死なせはしないって、誓うから。


 もし、あなたの夢に知らない人が出てきて、あたかも知人のように振る舞っているなら、それはあなたの周りで亡くなった誰かかもしれない。


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