■□斬新なコンセプト□■
今作を手がけたのは「アクアノートの休日」「太陽のしっぽ」「巨人のドシン」を制作した飯田和敏氏。「海亀文庫」第1弾としてWiiウェアで発売された。
SRL社が開発した不気味な収容施設「ディシプリン」。プレイヤーは施設運用実験の被験者「you」。妹の手術費を得るために名乗り出たらしい。
案内の手紙と共に送られてきた「youコン」はグロテスクな形をしたもので、施設内ではそれを使っているところを目撃されてはならないという。youコンの存在はトップシークレットなのだ。果たしてこの施設の目的は何で、youコンを持たされた特別な存在ともいえる主人公はどんな使命を背負わされているというのか……。
■□しつけ・規律・懲罰――ディシプリン□■
主人公は檻の中で生活し、常に監視が見張りをしている。最大3人が収容され、罰則は連帯責任となる。彼らは何らかの自責の念をかられているようだ。
そしてその他の収監者は自分の意志で行動を取ることができない。空腹や退屈、排泄、清潔などの項目がグラフ化され、メーターがいっぱいになると異常行動を起こし、監視に怒られてしまう。それを避けるために主人公はyouコンを用いてそれらを解消する道具を指し示してやることになる。
youコンにはyou液(溶液)を溜めることができる。それを監視に見つかってしまうと怒られてしまうので、後ろを向いているときにうまく溜めて放出させなければならない。
3回監視に怒られると「おひとりさま」という懲罰が与えられるのだ。なにもしないで時間が過ぎるのを待つしかないが、暇つぶしにyouコンをマッサージしていると時間が経つのが早くなる。形が形だけに、卑猥です。
欲求が解消されるたびに収監者は主人公に心を許していく。最後にyouコンで液体をかけてやると昇天(?)し、心の結晶を残していく。youコンにそれが溜まっていく。
■□作業感が・・・□■
実験施設に監禁されるというコンセプトはおもしろく感じたが、同部屋の収容者の面倒を見るという作業に追われ、まさに拘束されている退屈さを味わえるが、エンターテイメントとしては本末転倒な気もする。「普通の」ゲームならば、施設の真の目的に気づき脱出をはかるべく戦いに乗り出すといったふうになろうかと思うが、このゲームはそうじゃない。
一人称と三人称が入り交じっている感じなのではっきりしないが、主人公は一部記憶がないようで、その記憶を取り戻していくのもストーリーとして練り込まれているが、結構あいまいな描き方をしている。
「ディシプリン」ってなんだったのだろうか。
ネタバレになってしまうけど、収容者の話に古代エジプトの「カー」と「バー」の話題が出てきた。バーは鳥のような姿をしていて、死後の魂とされている。ディシプリンとは前世での罪を償い来世へと飛び立つ狭間のような空間なのだろうかとも思った。
ともあれタイトルにもあるように「誕生」というキーワードは外せない。檻の中は受精卵を作るためのシャーレのようでもあり、子宮のようでもある。
飯田氏の脳内を抽象化したような作品だ。「ゲームはエンターテイメント!」と思っている人にはたぶん向いていない。
第2弾を買うかどうかは……もちろんそれの内容次第。
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