如月あすか様 より | ||
月蝕 手を伸ばし 月の光を吸い取った黒髪掬い上げ そのまま下まですっと。 わが新妻はさながら夜咲く白百合。 まろやかな身から放たれる香気は甘く 優しい毒に縛られる愚かしき我。 「殺生丸さま…」 わが名を呼ぶ甘い声。 誘っているのか、作為なくただ呼んでいるだけなのか。 そんなことはどうでもいい。 ただ、もう抗えぬ。 綸子の夜着を肩からそっとすべらせ、あらわになる雪白の肌。 そこから先の言葉を私は知らぬ。 はだけた夜着からのぞく白桃の乳房。 やがてその肌が鴇色に染まり 今宵も己だけの標(しるし)で埋め尽くされる。 知りえるのはそれだけ。 少女の華奢な指が私の手に触れる。 制止しているのか。 小首をかしげて微笑む。 初めて見る艶然たるまなざし。 いつ、そんな表情を覚えたのだ。 知らぬ間に遠くにいくようで、私はお前が怖い。 こうして夫婦の契りを結んだ今も 他の男を見ることなどまずありえぬと知りつつも その身がするりとこの手から抜けていきそうで 私はお前が怖い。 ならば この一時を。 天駆ける流星さながらの 今は過去となる一瞬一瞬を。 お前のためだけに、注ぎ込もうぞ。 夜をこめてその身を抱き 無垢な白百合を鴇色に染め上げ 遥遠より来たる細き光とどめる瑠璃の空の下 上げよ、我より知らぬ声を。 そして 甘いたたかい果てた後は 乱れを物語る 若い黒髪も 無粋な夜着も すべて忘れ果てろ。 一糸まとわぬ姿で 東雲もしらず、ただまどろむがいい。 <終> 皆様、堪能されましたでしょうか! あすかさんより22222のキリ番で、「夜の殺りん」というリクエストを頂きました。 そのイラストに、なんとあすかさんが文を付けて下さったのです!! これがもう、素晴らしいのです。 甚大な妖力を持つあの大妖怪殺生丸が、ある意味りんに惑わされ、 不安さえ覚える心情にじん、ときました。 それほどに兄上はりんちゃんを……////// 大人な場面なのに、汚れない光と透明な空気が流れているようで、 私の絵には、本当に勿体無さ過ぎる玲瓏たる文! 陶然とさせられました。 あすかさん、素敵な文を付けて下さって本当にありがとうございました! いただいた日:2005.07.04 |