『武闘派な人達……』
はじめに
T3の晶ENDのだいたい一年後の春くらいの話です。
筆者独自の設定があり、読者方々の知り得る内容と異なる部分が多々あるかと思います。
まだまだ拙い文章ですが、そのようなことをあまり気にしないという方はご覧下さい。
〜〜明心館本部道場〜〜
「神前に礼! 館長に礼! お互いに礼!」
「はぁ〜、疲れたぁ〜」
練習の締め括りである礼が終わると、晶の隣にいた同年代の少年が腰を下ろし、言った。
「何だよ、あれくらいの練習でヘバってんなよなぁ〜♪」
「そんな事言ったってな〜、俺はお前みたいなパワータイプじゃないんだから仕方無いって〜の!」
「ふ〜んだ、ただ体力がないだけだろ?早朝マラソンとかしたら、少しは体力つくんじゃないか?」
「俺、朝が弱いからダメ……」
「お前なぁ……」
晶は相手の言葉に苦笑しながら胴着を脱ぎ始める。
「………」
「ん? どうかしたか?」
「え? あ、何でもない。 じゃ、俺も着替えちゃうか……。 あ、おい、晶……」
「ん?」
「覗くなよ♪」
「ばぁ〜か、さっさと行け! お前こそ女子部の更衣室に近づいて邪な行為なんかするなよ!」
「はぁ? 今日は女子来てたっけか?」
「ほぉ〜、今の言葉は挑戦として受け取ってもいいのかな?」
「へっへぇ〜んだ♪ここまで来てみな♪」
晶と言い争っていた少年は、それだけ言うと、足早に男子更衣室に走って行った。
「チッ、相変わらず逃げ足だけは速いんだよな〜、あいつは……」
そう言いながら、床に置いた胴着を拾い、自分も着替えようと晶は女子更衣室に行こうとした。
そして、更衣室の入り口に差し掛かった時、不意に後ろから声を掛けられた。
「おい、晶ボーズ」
「あ、はい。何ですか、館長?」
「お前、今日は真っ直ぐ帰るのか?」
「はい、今日は師匠の家にお客さんが来るらしいんで、真っ直ぐ帰る予定ですけど、何か?」
「じゃあ着替えたら裏の駐車場に来な、送って行ってやる」
「は、はぁ、ありがとうございます……」
巻島はそれだけ言うと、自分も更衣室に向かいながら胴着を脱ぎだし始めた。
〜〜車中〜〜
「館長、この車、一体どこで手に入れたんですか?」
晶は初めて乗った巻島の車に興味津々といった感じで聞く。
「これか?こりゃあ、横須賀のGIから安く買い取った」
「G、GIって、米軍の事ですか?」
「おう、何でも、アフガンで何発も食らった、ツワモノだそうだ」
(な、何発もって…… そういえば、何となく火薬の臭いが……)
「ところで、晶ボーズ」
「え、はい、何ですか?」
晶は巻島の声に答えながら、練習後に買ったスポーツドリンクの蓋を開け、口にする。
「恭也とはどうだ?」
「は? 師匠とですか?
そうですねー、前に一本取ってからも何度か相手してもらったんですけど、やっぱり師匠にはまだ
まだ敵いませんね……」
「そうゆうこっちゃねーよ。男と女のなかでって事だ」
「へっ!?」
巻島の言葉に晶は驚き、素っ頓狂な声とともに巻島を振り返った。
「あん? 俺がおめぇと恭也の関係に気が付かないとでも思ってやがったのか?」
「い、いえ、そうゆう訳では……」
「大体よぉ、おめぇも恭也の野郎もお互いを見る目が違うんだよ。
あんなの、少年部のガキでも気が付くぜ?」
「そ、そんなにですか!?」
「おうよ」
〜〜高町家〜〜
「レンよ、御爺さんはいつ来るんだ?」
「もうそろそろやと思うんですが…」
「もしかして、道に迷ってるんじゃないかな?あたし、そこら辺見てこようか?」
「む、そうだな…… では美由希、お前はなのはを迎えに行きながら神社の方を見てきてくれ。
俺は駅に行ってみる」
「うん、わかった」
「あの〜、うちはどないしましょ?それに、お二人とも爺さまの顔わかるんですか?」
「うむ、以前に写真を見せてもらったから俺は大丈夫だ」
「あ、あたしも覚えてるよ♪」
「じゃあ、すんませんけど、よろしくお願いします」
レンがそう言うと、恭也と美由希は二人揃って玄関に向かって歩き出した。
そして、恭也が靴を履こうとした時、玄関の外に気配が一つある事に気が付く。
「む、誰か来たみたいだな……」
「え?」
恭也の言葉に、美由希が玄関を向くのと同時に向く。
数瞬後、玄関が『ガラッ』という音とともに開いた。
「ただ〜いまぁ〜♪」
「あ、なのは♪ お帰り♪」
「うん♪
あれ、お兄ちゃんにお姉ちゃん、これからお出掛け?」
「ああ、レンの御爺さんを捜しに行くところだ」
「え? レンちゃんのお爺ちゃんならなのはの後ろにいるよ」
『え?』
なのは一人の気配しか感じなかった恭也と美由希はその言葉に驚き玄関の外を見た。
「ほっほっほ、こんにちは」
そこには緑色の人民服を着た白髪白眉の老人が笑みを浮かべながら立っていた。
恭也、美由希、なのは、レンがリビングに入ると、レンのお爺さん、鳳龍道に席をすすめる。
「すまんね、長旅で疲れてしまってすっかり遅くなったよ。
初めまして、レンの祖父で鳳龍道じゃ」
「初めまして、自分は高町恭也といいます。母はいま仕事で席を外しているいますので、代わって
自分がお爺さんをお出迎えするように言われました」
「あ、私は妹で高町美由希といいます」
「えと……、高町なのはです」
「ほっほっほ。よろしくのう」
「あの、ちょっとよろしいでしょうか?」
龍道が出されたお茶を一口啜るのを待って、美由希が声を掛けた。
「ん?なにかな?」
「その、日本語がお上手なんで、一体どこで学ばれたのかなと……」
「ああ、そうですか。
日本語は昔、まだ私が武術を教えていた頃に日本から来た武術家に習ったんじゃ」
「日本からの武術家……、ですか?」
「うむ、滞在していたのは一ヶ月程なんじゃが、その間にワシと何度も仕合ったわい」
「じ、爺さま、だからそないに日本語が上手かったんやね……
うちはてっきりママに教わった思うてたわ」
そんな事を語り合いつつ、時間は過ぎ、やがて高町家の前に一台の車が停まった。
〜〜高町家・玄関〜〜
「ほれ、着いたぞ」
「あ、ありがとうございました……。
(こ、これでやっと開放される……)」
晶は車内での巻島から言われるセクハラまがいの言葉に辟易しながら車から降りる。
そして、晶が『バタン』と助手席のドアを閉めると、反対側、運転席側のから巻島が降りた。
「館長?これから茅場町の道場に行くって言ってませんでしたか?
確か、青年部の相川さんが結婚するから、それの祝賀会するんじゃなかったんですか?」
「あん? まぁ、そんな事も言ったが折角来たんだ、友人の息子の成長は見ないといけねえだろ?
それに、最近は何だか俺から逃げてるみてぇだからよ」
「はぁ……」
巻島はそれだけ言うと晶を先に玄関へ向かわせ、自分は門の影に隠れた。
「ん?誰か来たようですな?」
恭也達がリビングで談笑していると、龍道がふと漏らした。
その言葉に恭也は意識を集中し、周囲の気配を探る。
「この気配は……」
恭也は一言呟くと、席を立つ。
そして、それと同時にいつもよりおおきな晶の声が玄関から聞こえてきた。
「ただいま帰りましたぁ〜」
「やはりな……」
恭也は少し微笑むと、皆に一言言うと玄関に行く。
「あ、師匠♪ ただいま戻りました♪」
「ああ、お帰り」
晶は満面の笑みを、そして恭也は少し照れた微笑を互いに向ける。
次の瞬間、晶の背後から黒い影が飛び出し、恭也に襲い掛かった。
「なっ!?」
恭也は瞬時にバックステップで攻撃をかわしながら廊下を過ぎ、縁側から庭に出る。
「ほう、晶と乳繰り合ってた割には動きは変わってねぇなぁ?」
「!?」
巻島の言葉に、恭也は縁側に立つ晶を見る。
すると晶は顔の前で手を合わせ、しきりに謝っていた。
(むぅ……、仕方無いか……)
恭也は巻島に無手のまま身構える。
「ほぅ……、無手でワシの相手をしようってぇーのか?」
その言葉に恭也は何も答えずにいる。
「おもしれぇ……、祝賀会なんかよりも、こっちの方がいいなぁ……」
そう言うと、巻島も恭也に対し身構える。
緊迫した空気が辺りに張り詰める。
『!?』
「ん?皆、どうしたの?」
リビングで談笑していた四人の内、なのは以外が庭の空気が急に張り詰めた事に気が付く。
「なのは、お姉ちゃん、庭を見に行ってくるから、ちょっと待っててね♪」
「どれ、ではワシも少し庭の様子を見せてもらうかね♪」
「あ、うちも♪」
「じゃ、なのはも♪」
「あ……、なのははここに居た方がいいよ」
「え? 何で?」
「何でって……」
「な、なのちゃん、もうそろそろ「どきどき地球旅行」が始まる時間やから、ここにおった方がえ
えんとちゃうか?
それに、うちの爺さまとは明日も話せるやろ?」
レンの言葉に、なのはは渋々とだが了承し、リビングに残ると、美由希達は縁側へと向かう。
「あ、晶!? 庭から何か凄い気配感じるんだけど、どうかした……」
美由希は縁側に居る晶に声を掛けたが、そこまで言うと、後の言葉は庭からの怒号によってかき消
された。
「うぉぉぉぉーー!!」
「ふんっ!」
『ドンッ』
「ぐっ……」
「きょ、恭ちゃん!? そ、それに館長も……、一体なにしてるの!?」
美由希は声の主に気付き、驚きの声をあげた。
「いや、その〜……」
晶は頬に汗を流しながら、事情を三人に説明すると、美由希とレンは開いた口が塞がらないといっ
た感じで呆れてしまった。
だが、レンの祖父、龍道だけは神妙な面持ちのまま、二人の攻防を見ていた。
そして……
「レン、お前の棍はあるかのう?」
「え? うちの棍ならそこにあるで」
レンは祖父は何を思ったかは考えもせず、愛用の棍の場所を教える。
「ふむ……、ワシにはちいと短いな…… ま、よかろうて……」
そういうと、龍道は棍を持ち、跳躍すると恭也の斜め前方に位置取り、棍を構える。
「え?」
「ほっほっほ、ワシにも一手御教授させてくれんかのう」
「………爺さん、もう若くねぇんだから、怪我するといけねえぞ」
巻島の言葉に答えず、龍道は棍を軽く振るう。
「………」
「あの、危険ですので下がっていていただきたいんですが……」
「恭也君、相手が本気なのに自分が本気を出さないというのは、武術家にとって、この上ない侮辱
ですよ」
「え……」
龍道の言葉に、恭也はハッとする。
が、次の瞬間、その場から龍道の姿が消えた……
「ちぃ…」
巻島は正面から迫り来る棍をかわしながら、龍道の棍を蹴り上げ、破壊する。
さらに、軸足を捻り、蹴り上げた足で踵落としを放った。
しかし、龍道はそれをバックステップで難なくかわす。
「ほぅ……」
「ふむ……」
間合いが開き、二人は無手のまま対峙する。
数瞬後、二人の後ろの土が跳ね上がり、拳と蹴りの応酬が始まる。
「はぁ……、レンのお爺ちゃんで凄いんだね……
巻島館長とあそこまで打ち合える人って、私、恭ちゃん意外で初めて見たよ……」
「俺も、師匠以外で館長が本気出してるのを初めて見ました……」
「いや、うちも爺さまがあないに本気で拳を打ち出してるんは初めてや……」
『え?』
レンの言葉に美由希や晶だけではなく、恭也も驚き、振り向く。
「おい、カメ。お前、身内があれだけ強かった事も知らなかったのか?」
「うっさいわ、おサル! うちは日本生まれの日本育ちや、ずっと中国におる爺さまの強さなんて
わかるかい!」
「だが、以前に道場を持ち、門下生も居ると聞いたことがあるが?」
「確かに、そないな事も言いましたけど、まだ爺さまが若い頃のことやって、うちはよう知らんで
す……」
恭也達がそんな会話をしている最中も、巻島と龍道の戦いは続いていた。
そして、『ドンッ』という鈍い音に四人は二人を思い出したように、庭を見る。
そこには、巻島が破壊された燈篭を背に立っていた。
「こ、『吼破』で燈篭を破壊してしまったのか……」
その光景に、恭也はおろか相対している龍道もその破壊力に呆れ返っている。
「ちっ、よけやがったか……」
巻島は燈篭を破壊した拳に毛ほどのダメージを受けていないのか、すぐに拳を握り直し、構え、向
かっていく。
龍道は向かってくる巻島に向かって軽く跳躍すると、飛び蹴りを放つ。
巻島は両手をクロスさせ、ガードするが、着地した龍道はそのまま『寸掌』を放った。
「うぉ!?」
龍道の飛び蹴り、『浮月腿』を受けてバランスを崩していた巻島は『寸掌』の衝撃に耐え切れず吹き
飛ぶ。
しかし、巻島は後ろにあった松の木を蹴り、見事に着地してみせる。
「ほっほっほ、『寸掌』を受けても大丈夫とは、頑丈な体じゃのう……」
「けっ、ジジイのくせにえれぇ技使うじゃねえか……、よっ!」
巻島は言葉とともに足下の土を蹴り上げ、目潰しとた。
「!?」
突然のことに龍道は一瞬怯み、巻島はその隙を見逃さず、一気に間合いを詰め、振り打ちを龍道の
腹部に突き込んだ。
「え、えげつない……」
恭也は巻島の行為にボソっと小さく漏らすだけだが、レンは巻島の行為に晶へと食って掛かる。
「晶! おんどれの師匠はあないに小汚い事するんかい!?」
「ぐ……、で、でもなぁ、これは武道家じゃなく、武術家としての仕合なんだから、汚いなんて言
えないだろーが!」
「なにおー!」
「やるか、このカメ!」
「おう!やったろうやなか!」
「お、おい、晶、それにレン、この状態で庭に出るのは……」
「(お)師匠は、黙っててくださいっ!」
「う゛……」
一瞬、二人の剣幕に押されてしまった恭也の二の句を待たずに二人は庭へと飛び出す。
「ちぇりゃぁぁぁーーー!!」
「うりゃぁぁぁーーー!」
『ガンッ!』 『ドンッ!』 『バシッ!』
晶とレンの二人はいつもの調子でド突き合いをはじめてしまう。
「ふぅ……、あの状態では何を言っても無駄か……」
恭也は諦め半分、呆れ半分といった感じで縁側に腰を下ろす。
(しかし……、あの燈篭はかあさんに何と説明すればいいんだ……)
恭也は無残にも破壊された、数分前までは燈篭であった石の塊に目をやっていると、隣の美由希が、
「あ……」
と、呟いた。
「ん? どうかしたか、美由希?」
立ったままの美由希を恭也は見上げると、全身を『フルフル』とさせながら、何かを指差している。
恭也はその指差す方を見た。
そして、そこには既に乱戦状態になっている四人によって無残な姿に変わり果てた花壇があった。
(そういえば、明日あたりにチューリップが咲くと今朝言っていたな……)
「せっかくなのはと一緒に植えたのに……」
(む…、そういえば以前に泥だらけになりながら二人でチューリップの球根を植えていたな……)
「なのはと一生懸命に植えて、そして、やっと明日あたりに綺麗な花が見れると思ったのに……
ゆ、許さないんだから……、いくら晶やレン達だからって……」
「み、美由希?」
「恭ちゃん、止めようなんて思わないでね……」
「ちょ、待つんだ美由……」
美由希は恭也の言葉も最後まで聞かず、しかも、どこから出したのか小太刀(木製)を手にしなが
ら四人に斬りかかって行く。
「まったく……、あれでは晶やレンと変わらないではないか……」
恭也は美由希の事を、まだまだ子供だなと思いながら目も前に繰り広げられる光景に見入る。
「ふむ、龍道さんのあの動き……、習得すれば膝にかかる負担が少なくて済みそうだな……」
普段、レンが見せる動きよりも数段は鋭く、そして洗練された龍道の動きに、恭也は吸い寄せられ
始める。
「ふむ……、着地の瞬間に……、打撃を受ける時はああして流すのか……」
恭也は、今見た動きを忘れないうちにメモか何かに残しておこうと、庭に背を向けたとき、背後か
ら『ガチャン、ガチャーン』という何かが割れる音が聞こえた。
そして、恭也はもしやと思い、再び庭を、自分の盆栽を見る。
そこには、二つあった盆栽用の棚のうち、一つが見事に破壊され、無残な姿を曝していた。
勿論ではあるが、その下には見事に粉砕された鉢と踏みにじられた盆栽が惨めな姿を恭也に見せて
いる。
「………………」
恭也はその光景に、先ほどの美由希同様に『フルフル』と震えている。
だが、それも暫しの間だけで、恭也は再び自室へ行き、机の上に置いてある紙とペンをとる。
と同時に、そのすぐ脇の床の間に置いてある「八景」が眼に留まる。
「………………はっ! 何を考えているんだ、俺は……
たかが盆栽じゃないか……、また育てればいいんだ……、また、育てれば……」
恭也は冷静になろうと、深呼吸をする。
が、再び庭から『ガッチャーン、ガチャーーン』という音が聞こえてきた。
「ぼ、盆栽じゃないか……、そう、たかが盆栽……、ぼ、盆栽……、盆栽……、盆栽……」
恭也は努めて冷静になろうとしていた。
だが、次の瞬間『ボキッ、バキッ』という鈍い音が恭也の耳に入った。
「ぼ、盆栽……、盆栽………、お、お、お、俺の盆栽ーー!」
瞬間、恭也は手に持っていた紙とペンを投げ捨て、床の間に置いてある小太刀を掴み庭に飛び出し
た。
「俺の盆栽――!!」
という、言葉とともに………
「はぁ〜、『どきどき地球旅行』面白かったぁ〜♪ 来週も楽しみだなぁ〜♪」
リビングではテレビを見終わったなのはが満足そうにソファに腰を下ろす。
「あれ〜、そういえば、お兄ちゃん達まだお庭にいるのかな?」
ふと、なのはは気が付き、庭を見た瞬間、黒い影が横切った。
「?」
気になったなのはは縁側へ向かい、そこで見てしまった。
自分の兄と姉を含めた六人が乱舞し、拳を、蹴りを、そして剣を振るう姿を……
なのははその光景と庭の状況をみて、少し眩暈を覚えた。
だが、気を取り直し、大きく息を吸い込む。そして、
「や、やーーめーーなーーさーーーいっ!!」
『びくっ!』
庭にいた皆はその瞬間まで繰り出そうとしていた拳、蹴り、剣を咄嗟に止めると声の主、なのはを
向く。
「な、なのは……」
「も〜、お兄ちゃんもお姉ちゃんも何してるんの!
お庭がメチャクチャになっちゃてるじゃない……」
「う……、これはだななのは……」
「たとえお兄ちゃんであろうと、庭が元通りになるまで言い訳は聞きません!」
「う……」
「かっかっか!恭也もこの嬢ちゃんには敵わねぇか!」
「館長さんもです!」
「うっ」
そして、なのはは龍道を見る。
「はぁー、レンちゃんのお爺ちゃんまで参加しちゃって……」
「うう……」
次に美由希、晶、レンと見回すが、三人ともすまなそうにしていた。
「取り敢えず、お庭のお掃除をしてもらいます!」
なのはの言葉に、六人はそれぞれが箒やらシャベルやらを持ち出して破壊してしまった盆栽や花壇、
燈篭を片付けだす。
その後は、六人ともなのはにリビングでこってりとしぼられ、その最中に帰ってきた桃子とフィアッセは、一体何があったのだろうと、首を傾げていた…………
後日、恭也は龍道が帰国する際、
「これで、101戦50勝50敗1引き分けか……、死ぬ前に、若い頃の決着をつけたいものじゃ
な……」
と漏らすのを聞いたという。
〜〜あとがき〜〜
蒼空です。
HP立ち上げに際しまして、相互リンクを貼っていただいた記念SSとして書きました。
なんだか、纏まりのないSSになってしまって、スミマセンでした(^^;
感想など戴けたら幸いです♪
でわでわ〜〜