(離婚の年の5月、通勤途上で口ずさんだ唄)
交差点の歩道橋に切り取られた山なみ
金色の風が揺らすプラタナスの葉よ
笑いさざめく緑の少女たちよ
ビルの隙間からあふれる空は
そんなにも楽しく青いかい
風をはらんで走る自転車は
歩道に焦燥の轍を作り
国道の先 薄い山影へと逃げていくよ
後ろに残してきた悲しい瞳は
そこにあるはずもすでにないのに
山すそには小さなオドリコソウが
ひそやかに輪舞しているだろうし
暗い木陰にシャガの群落が
ささやきを交し合っているのかもしれない
幸せはそこにきっとある
ぼくはいま埃と塵にまみれた街を走る
憧憬と焦燥がせめぎあう通勤ラッシュの国道を
傷つけてきた全てのひとへの贖罪を抱いて
許してください
許してください
あなたがたがぼくから離れて幸せでありますように
全ての懲罰がぼくに訪れますように
もっともみじめな終わりがぼくを待っていますように