小野坂昌也館



小野坂昌也のトークライブ概論 第一版

野木弥史著/南茶伝出版/2006.03.11


§ はじめに

1 小野坂昌也のトークライブ概要
 1−1 出演者
 1−2 公演名
 1−3 開催日時
 1−4 ライブ会場(小屋)
 1−5 客層
 1−6 チケット
 1−7 ライブの進行

2 トークライブが残してきたもの
 2−1 男性客
 2−2 女性席
 2−3 座敷席
 2−4 ジャッジマン
 2−5 着ぐるみ
 2−6 小屋(ライブ会場)が潰れる

3 トークライブの精神
 3−1 アンケート
 3−2 物販
 3−3 非公開
 3−4 あいさつをする

§ おわりに
§ 謝辞

■ 参考資料
・ 公演会場
・ 出演したゲスト



§ はじめに

 小野坂昌也によるトークライブに1997年から足を運び、その長きに渡り客として彼らを観続けてきた著者がここに、小野坂昌也トークライブの概要を主観でまとめた。出演者と客の双方に、気持ち新たにライブに取り組むきっかけになればと思う。


1 小野坂昌也のトークライブ概要

 小野坂昌也によるトークライブは、1997年3月渋谷公園通り劇場で公演された「声優コレクションスペシャル」に始まる。「舞台で芝居がやりたかった」という小野坂昌也の欲求が発端であり、コンセプトは「楽屋の雰囲気そのままで」というようなことで、「普段仲間と喋ってる面白い話をする」ことである。その名の通りトークをするライブであるが、トークのみで終わることは稀で、コーナーで誰もやらないような面白いことをやろうという基本姿勢がある。当時の異常な声優ブームの中、声優によるこのようなお笑いメインの公演は例がなく、それ故か「声優コレクション」としても「番外」で扱われた。現在の声優お笑いライブのさきがけとなっている。


1−1 出演者

 小野坂昌也の他、相方として上田祐司がメインで出演し「主催者」である。たまに上田が仕事で出演できず、小野坂昌也の一人舞台になる場合もあって、「主催者は小野坂」という風になっているが、小野坂は上田を込みとしている。ゲストも出演するが、基本的に「長時間ノーギャラ」のプライベート出演が条件であり、「タレントを何だと思ってるんだ!」と所属事務所からクレームがつくなどで折り合いが付かず、極めて流動的である。主に小野坂にゆかりのある、丁度仕事なくて暇な男性タレントが、公演前1週間ほどの直前の個人交渉で出演する。「何も言われなくてもスケジュールは空けとけ」というのが小野坂のスタイルである。また、「客として観にきた」などということは通用せず、「来るなら出ろ」と舞台に上げさせられる。さらには、ゲストであっても「傍観」は許されず、積極的に面白い事を喋ることを要求している。


1−2 公演名

 1997年の声優コレクションの副題として「小野坂昌也トークライブ」がつけられたが、これが冠になったのは渋谷公園通り劇場の閉館が決まり、声優コレクションが終了し、1999年心機一転フジタヴァンテホールに会場を移ってからである。小野坂は「小野坂昌也のトークライブ」は、このフジタヴァンテが第一回目だと思っているようだが、著者は1997年の声優コレクションが最初と支持したい。当初の「小野坂・上田のトークライブ」が、「小野坂昌也のトークライブ」になったのは、多忙の上田が出演を見送った時期が続いたことによる。上田の出演状況によって言い替えていたが、不確実になったので後者に統一された。結果、上田が安定して出演するようになった今も「小野坂昌也のトークライブ」のままであるが、上田が出演する場合には小野坂がライブ冒頭で「小野坂・上田のトークライブ」と挨拶し、これが本来の形であることを印象付けている。


1−3 開催日時

 2ヶ月に1度を目標に定期開催される。このコンスタントな開催は、小野坂の当初からの理想であった。公演は小野坂が暇な土曜日に殆ど開催されているが、火曜日や金曜日だったこともある。公演時刻は午後6時台から午後5時台へと早まってきている。午前中だったことは一度もなく、1日1公演である。公演時間は約3時間で、長くなると小屋に怒られるとみられる。開場から開演までの客入れ時間は30分であり、段取りにより開演が定刻より5分程度遅れる場合があるが、厳格ではない。


1−4 ライブ会場(小屋)

 ライブは東京都心の会場のみで開催される。基本的に金をかけずに開催をするため地方での公演は実現不可能としており、過去に一度もない。会場へはJRもしくは地下鉄の駅から徒歩10分前後程度の位置にあることが多く、出演者は電車もしくはタクシーを利用して来る。音響と照明機器、空調設備のある、キャパシティ200から400前後の小ホールが利用される。座席は全てもしくは大半が固定式で、可動式が大半備えた会場はフジタヴァンテホールの他に利用されていない。当初立ち見はなかったが、現在では当たり前の客入りとなっている。小野坂は基本的に「皆に座ってもらう」精神を持っており、立ち見を気にしている。さらには舞台上でライトに当たっている出演者と客席との温度差が激しく、夏の暑い時期や冬の寒い時期など、頻繁に客の体調も気にする。どの会場とも相違なく会場内での飲食・録音・撮影等行為は禁止されているが、強制退場などの罰則はなく、これまで大きな問題は確認されていない。


1−5 客層

 客層は10代から30代の男女である。当初は圧倒的に男性が多かったが、現在は逆に圧倒的に女性が多い。単独か同性が数名集まったグループが殆どで、男女のカップルは「らしき」が散見できる程度いる。母子で来るケースもある。殆どが関東圏の客であるが、北は北海道から南は九州まで、飛行機に乗って観に来る客もいる。大半が直近の「アニメファン」とみられ、「声優コレクション」から参加している著者のような古い客は、極少数みられる。2回以上参加のリピーターが大半だが、初参加の客も毎度十数名確認される。ライブの特性を説明しなくてはならないので、小野坂は新しい客を嫌っている面がある。さらに客の中には「出演者の入り待ち・出待ち」、「当日券入手の為の早い時間帯での行列」をする者がいるが、それらの行為を一切拒絶している。


1−6 チケット

 前売りチケットは公演の1ヶ月程前の日曜日午前10時からローソンチケット、チケットぴあのどちらかで発売される。当初は前者が多かったが、現在は後者が多い。当初は告知を控えるなどしていたため、発売数日後に完売していたが、現在は1分である。席種については、当初全席自由席だったが、2003年から全席指定席となった。当日券は、業者がオリジナルに印刷したものが、前売り券の1割り増し程度で当日会場入り口にて100枚程度販売される。大方「立ち見」となり、整理番号順の入場となる。会場により、売り切れる場合もある。もぎりは、舞台効果演出含め業者スタッフが行う。小野坂はチケット価格について現2500円程度を妥当としており、オークションによる高騰を嫌っている。また、広い会場で開催しないのは、その分チケットが値上がることを善しとしていないからである。


1−7 ライブの進行

 ライブの進行は小野坂が行なう。進行台本の作成は小野坂が手掛ける。業者スタッフはBGMやジングルの挿入、照明の操作、舞台袖で時間配分を知らせるなど行うが、舞台上の小道具の移動等は出演者が率先して行う。舞台中央のバミリを目印に、小野坂を上手、上田を下手に配す。出演者の音声はピンマイク及びハンドマイクで拾う。


2 トークライブが残してきたもの

 小野坂昌也トークライブが通過してきたいくつかの重要なポイントを記述する。


2−1 男性客

 当初、小野坂昌也トークライブは9割がた男性客で占められていた。小野坂と上田は当時「ときめきメモリアル」のラジオドラマで競演、ドラマ後のトークの2人の掛け合いがリスナーに人気となったため、「ときメモ」のユーザである「男性」が客として訪れるのは自然の成り行きだったと考えられる。尚、少数来ていた女性客は、上田のファンであった。すなわち、客の殆どが小野坂のファンであったといえる。


2−2 女性席

 今でこそチケットは「指定席」が販売されているが当初は「自由席」であり、前売りを早く買えた者勝ちの入場であった。「女性席」は、大多数が男性客で必然的に最前列に陣取る男性客に腹を立てた小野坂が「女の子に席を譲れ」と言ったことに始まる。実際、「ミニスカ専用」等の女性席が作られた事もあるが、それ以外でも男性客が自主的に女性客に席を譲るという行為が幾度も見られた。


2−3 座敷席

 フジタヴァンテホールは前列から中列ほどまで座席が可動席であったが、椅子を並べず座布団を並べ座敷席として使用した。大勢の客に対応するため、舞台の行きを狭め座敷席を広げたこともある。薄い絨毯の上の薄い座布団に座るが、後方の椅子席の方が楽なので割と空いていた。人気の声優を近くで見たいという欲求よりも座り心地を優先したという、客の冷静な判断が垣間見られた。


2−4 ジャッジマン

 小野坂と上田の対決の企画が度々行われているが、その両者を裁く「ジャッジマン」がゲスト出演するのが恒例であった。過去の公演を懐かしむ客が、最も復活を望んでいるキャラクタといえる。


2−5 着ぐるみ

 ライブ中に度々使用される着ぐるみは、冷酷で切れキャラである上田がそのギャップを演出するため着用したことに始まる。初登場はカッパである。上田が自宅で裁縫及び工作を行い、自作する。タイツ素材の動物を得意とする。着ぐるみ及び小道具は量販店で目的とするものがあれば購入しそのまま使用するが、それは稀で、材料から購入しオリジナルを製作するケースが多い。


2−6 小屋(ライブ会場)が潰れる

 小野坂昌也トークライブを公演した会場のうち、渋谷公園通り劇場、フジタヴァンテホール、銀座ガスホールが後に閉館している。小野坂がライブをやった小屋は潰れると言われている。ちなみに小野坂が、会場のことを「小屋」といっている。


3 トークライブの精神

 浮かれたアニメ声優オタク達の目を覚ますような、小野坂と上田の、身分の枠に囚われない反逆的な舞台精神は当初から一貫されており、ライブのカラーとなっている。小野坂昌也トークライブは、「毒づく・暴走する」のような凶悪な面と、「出演者がトイレで退席・トークライブなのに誰も喋らない」のようなユルい面を持っている。また、客から出演者に話しかける行為を認めているが、「笑ってほしいところで笑い、答えてほしいところで答えろ」のように、その時と場合の空気をよんだ上で行えと、全ての客のモラルに任されている。よく小野坂が「こんな感じですから」と客に断ることがある。小野坂昌也トークライブには独特のルールが育っており、そのような「ならでは」のノリを尊重している。あまりにも奔放で、舞台慣れした初登場の出演者の誰もを驚かせているが、客はこれらが新たなうねりなのだと察知し、正しく解釈しなければならない。


3−1 アンケート

 小野坂昌也トークライブは、客の話を聞くライブだといえる。「普通に喋ってるよ」とゲスト出演者が驚くほどである。その中でアンケートは当初から行われている。アンケート式の「客いじり」は、挙手方式と、記入方式の2種類ある。挙手方式は客層を判断するためライブの冒頭でよく行われる方法であり、すべての客が適度に参加しなければならない。記入方式はライブ後半で読むネタ的なアンケートと、ライブの感想を聞くアンケートの2種類あり、開場時に用紙がスタッフにより配付される。客は開演前の時間内に速やかに前者のアンケートの全ての欄を記入し、場内を回るスタッフに提出しなければならない。すなわち、開演ギリギリに開場に到着しアンケートが書けなかった及び、筆記用具を忘れたから書けなかったなどという行為は、このライブの客として歓迎されていない。感想のアンケートは閉演後に速やかに記入し、出口で提出しなければならない。これは出演者たちが飲み会の時の話のネタにしているといわれている。両者アンケート用紙は書式が似ているため、感想用の用紙に誤って記入し(もしくはその逆で)、提出しないよう良く確認しなければならない。質問内容は長らく変更されていない。


3−2 物販

 唯一、小野坂が自主的に製作したCDのみ2度会場で販売されたが、基本的に何も販売しない。


3−3 非公開

 小野坂昌也トークライブは「声優コレクション」後、内容の非公開を貫いており、密室芸が売りとなっている。伏字をしないネットなどでの内容公開は、ライブの存在意義の軽薄化につながり、非難の対象となっている。特にゲスト出演者の情報漏洩は、それ目当てで来る客で溢れかえさせることが懸念されるばかりでなく、そのタレントと所属事務所との間に予期せぬ軋轢を生じさせかねない事態となりうる。実際過去に、何らかのクレームがあったと見られる。客は、非公開を理解しなければならない。


3−4 あいさつをする

 どんなに毒づき、暴走しようが、終演時には必ず出演者全員がお客に向かい頭を下げお礼の挨拶をする。客はその意味を正しく察しなければならない。


§ おわりに

 以上示したように、小野坂昌也のトークライブを単なる声優イベントと片付けるのはもったいない。テニプリであろうがボーボボであろうが、入り口は何でも良い。この40前後のオッサンどもが舞台の上で、 何を自覚し何をやっているのか、そしてライブに何が息づいているのか、実感されたい。小野坂昌也のトークライブは、声優という彼らの一表現の上っ面をなめるだけでなく、さらに深い人間像の発見へと取り組めるのである。


§ 謝辞

 小野坂昌也のトークライブに関わる全ての人々に深く感謝を申し上げます。


■ 参考資料

・ 公演会場
(○:存続 ×:閉館)

×渋谷公園通り劇場(渋谷)
×ヴァンテホール(代々木)
○文京シビックホール小ホール(後楽園)
○科学技術館サイエンスホール(竹橋)
○豊島区立南大塚ホール(大塚)
×銀座ガスホール(銀座)
○下北タウンホール(下北沢)
○目黒区民センターホール(目黒)
声優コレクションが公演された小屋。告知を控え密かに開催。
閉館が決まり、フジタヴァンテの歌を完成させる。
小野坂に不評。
特に無し。
特に無し。
特に無し。
特に無し。
最も多く利用されている。
(2006.03末現在)


・ 出演したゲスト

男性:20名程度 女性:10名程度 (2006.03末現在)