登山のガイド
ウェアの基本 歩き方 マナーと注意事項

ウェアの基本

アウター

登山ではレインウェアは雨に濡れないための物と思っている方が多いと思いますが、実はそれよりもっと重要な機能があります。

雨や風を通さないレインウェアを着ていると大量に汗をかき、それで体が濡れます。汗を外に出し、外部からの水の侵入を防ぐ浸透防水素材のレイン

ウェアは高価ですが、登山には必須と言えるアイテム。山では雨は下からも来ますのでスーツタイプがベスト。

稜線では必ず風も吹きます。ビニールやナイロンジャケットは風を遮りますが、蒸れて汗をかき冷えてしまいます。風を通さず呼吸する素材のウィンド

ブレーカーも素材の進歩で手ごろな価格で手に入ります。

レインウェアは防水浸透素材が最適。かつてはゴアテックスは蒸れる。汗は逃がさないなど性能は今一つでしたが、近年の技術の進歩や新しい素材の登場で汗蒸れも解消されるようになりました。依然として高価な物が多いですが、快適さはコストに似合うようになっています。 ウィンドジャケットも高い浸透性と防風性、そして軽量コンパクトが主流になりました。
ファイントラック エバーブレスフォトン マーモット スーパーマイカJkt RAB ニュートンJkt MH ゴーストウィスパラーJkt サロモン S-LABライトJkt
エバーブレス メンブレン ナノプロ メンブレン eVent 3L ウィスパラー リップストップナイロン クリマウィンドプロ

パンツ(トラウザーズとも言う)はかつてはコットンパンツが主流でしたが、やはり素材の進化によって撥水や防風UVカットなどの機能が標準的になり

した。耐久撥水加工のパンツならスパッツ(正式にはゲイター)の必要もなくなりました。長時間履く縦走では速乾性も重要になってきます。

耐久撥水 速乾 ストレッチ素材 耐久撥水 ストレッチ クライミング
アークテリクス ファイントラック ホグロフス マーモット ミレー マムート ピークパフォーマンス モンベル
パリセードパンツ カミノパンツ リザードパンツ トレックコンフォパンツ セニューストレッチパンツ ポルドイAFパンツ ファーザーパンツ クリフライトパンツ

山は夏でも寒くなります。標高が上がれば気温は下がり、風が吹けば体温が奪われます。行動時は暑くても長袖シャツは怪我や肌冷えから守る重要

なアイテムです。薄手のフリースや速乾素材のシャツは例え着る機会が少なくてもぜひ持って行きましょう。

手袋(軍手でも良い)も必ず用意しましょう。山では切り傷からバイ菌が入って化膿するなんて事もよく起こります。

帽子も、怪我を防ぐだけでなく日差しから守るために必需品です。

最近では落石や滑落時の怪我の防止という観点で、槍穂高連峰などではヘルメットの着用も薦められています。

マウンテン ハードウェア フォックスファイアー ノースフェイス ヘリーハンセン ペツル
キャニオン ロングスリーブ スコーロン フィフスチェックシャツ アルファドライハイブリッドクルー ドライライナートレッキング エリアA48

ベースレイヤー

ベースレイヤーはいわゆる下着の事。下着は直接肌に触れるので汗で張り付きます。下着が濡れていると最も体温が下がりやすくなり、体温が下が

ると体力も消耗します。

最近ユニクロなどでも売っている速乾吸湿素材の下着だと汗でべとついたりせず、濡れてもすぐ乾きます。

高機能タイツ(ワコールのCW-Xやスキンズ等)は高価ですが筋肉の疲れを軽減し関節痛防止にも効果があります。実際履くと履かないとでは疲れ方

が違います。保温用と熱を逃がすクールマックスタイプがあります。スキンズなど加圧式の物は履いたまま寝ても寝ている間に筋肉をほぐす効もあ

ります。

おすすめのベースレイヤー:吸湿速乾素材のパンツとシャツ、パタゴニアのキャプリーンというベースレイヤーは薄手から極厚まであり季節に合わせ

て選べます。

靴下

靴下もメーカーや素材によってかなり違います。汗を外に逃がし快適なメリノウールかラムウール(寒冷時)の混紡ソックスがベスト。

クッション性の高いパイル加工された登山用ソックスは衝撃も吸収してくれます。織りが悪いと履いていて靴の中で靴下が弛み行が悪くなる場合が

あります。履く時に苦労するようなしっかりした織りの物が良い。

ただし極厚のソックスは縦走など冬山には必要ですが、通常の登山では蒸れやすく乾きにくいので、中厚ソックスがベストです。

靴擦れ防止には薄いシルクのソックスに綿や天然素材の物を重ねて履くのが効果的。

おすすめの靴下:ブリッジデイルというイギリスのソックスは種類が多く高品質。夏山ならコンフォートサミットというモデル。

ミズノのアーチハンモックというサポータータイプのきついソックスも履くのは大変ですが効果大。

ステッキ(トレッキングポール)とピッケル

登山用ステッキは正式にはトレッキングポールといいます。きつい登りや下りの急斜面では、歩行が楽になり膝の負担が減ります。

最近はストレート2本使いを見かけますが、2本だと特に下山時に前傾姿勢になりポールに体重をかけ過ぎて却って危険です。

ポールはあくまで補助として使います。

Lグリップのステッキタイプを1本使うのがおすすめです。スプリング内臓のアンチショックモデルは腕の疲労防止に効果があります。

植物を傷めないよう登山道以外では保護キャップは忘れずに付けましょう。先端は石突と言って石に当てるための物です。

最近は持っている人をあまり見かけませんが、ピッケルは急斜面や雪渓でスリップしたり転んで滑り落ちた時、制動をかけ滑落を防げます。使い方を

覚えないとなりませんが命を守れる道具です。雪渓や急斜面のガレ場を歩くルートの時は持って行きましょう。

長めで軽量な縦走用ピッケルもあります。

ピッケルやステッキに付いているスリングは必ず手首に通して、転んでも手放しても失くさないようにします。

その他必ず持っていく物

ホイッスル 仲間とはぐれたりルートを見失った時は動き回らずホイッスルを吹いて、自分の位置を人に知らせます。

磁石と地図 地図はリーダーや人にまかせず、一人づつ持参します。磁石も地図を読む時必要です。

ツェルト 緊急時に雨や風を防ぐテントの代わりになるもの。サバイバルシートというハイテク素材のシートも安価で売られています。

非常食 カロリーメイトやチョコレート、キャンディーなど、万が一の時に備えていつも持っていきましょう。

ライト 予期せぬ事態や遅れで日が落ちた時、ライトなしで登山道を歩くのは非常に危険。自分の位置を人に知らせるためにもLEDの長時間使える物

が良い。

手ぬぐい 怪我をした時傷口を縛ったり止血にも使えます。手ぬぐいは簡単に裂け、縛るのにも便利。バンダナもそういう時用に考案されたもの

医療品  痛み止めや下痢止め、バンドエイド、包帯、消毒薬などが必要。防水の袋やバッグに入れておきましょう。

携帯電話と予備の電池 万が一に備え携帯電話は持参しましょう。山では通話エリアが狭いのですが稜線や見通しの良い所では、繋がる場合もあり

ます。予備バッテリーや手動の充電器、ソーラーチャージャーもいざという時役にたちます。携帯電話は電池が切れてもしばらくすると復活する場合

あります。(auの携帯は、山ではすぐにバッテリーが切れてしまいます。使う時意外電源を切っておく)

 ナイフ、ライターかマッチ、メモ紙とボールペン、マジックなど濡れても消えない筆記具。

あれば便利な登山用の等高線のマップが入ったGPSナビゲーションは、軌跡表示があれば登った道が分かるので道迷いの心配も減ります。

歩き方

登山には状況に合った歩き方があります。

きつい傾斜の足場の悪い道や、岩がゴロゴロした段差の大きい道、滑りやすい泥濘やガレた道も必ずあります。

滑って転倒すると大けがに繋がる状況も多く、一歩一歩足元を確かめて歩かなければなりません。

最も重要なのが疲労を減らすという事。足を高く上げず小さな歩幅で重心がぶれないように歩くのが基本です。

傾斜がきつい登りでは足を逆ハの字に開いて歩くと筋肉や筋に負担が少なく、重心も安定します。

急な下りですべりそうな所では、歩幅を靴の半分程度にするとスリップせず安定して歩けます。

人のペースは気にせず自分のリズムで、同じテンポで歩きます。団体(パーティー)は遅い人に合わせます。

山で見かける人のほとんどはペースが速過ぎます。特に登りは下山の体力に大きな影響がありますのでゆっくり歩く。

もう一つ大切なのが目線です。歩いている時は足元ばかり見ていると頭上の危険に気が付かない。ガレ場や雪渓では時々上を見る。

人は見た方向に体が向かいます。足場の悪い所で目線を動かすとバランスを失います。必ず体で向きを変えるように心がける。

急斜面を横切る(トラバース)時やヤセ尾根を歩く時、人は怖いと体をひいてしまうので山側に傾きます。体が傾くと重心がずれます。

谷側の足をやや開き、谷側に加重します(スキーの谷足加重と同じ)。

水分の補給は高山病を防ぐ最良の手段。あまりのどが渇かなくてもまめに飲むようにしてください。汗をかく事で代謝が上がります。

休憩を取るタイミングは、自分の疲れ具合で決めます。しかし長時間休憩すると体が冷えて疲れます。小休止は10分以内にします。

すぐに座ると乳酸が出て良くないと言う人がいますが、それは間違いです。乳酸は疲労回復物質で乳酸飲料は回復に効果があります。

食事など長時間休憩した場合は体が温まるまで非常にゆっくり歩きます。

マナーと注意事項

最寄の警察や入山口に入山届けを必ず出します。用紙は入山口、交番にあります。もし用紙がなくても住所、氏名、人数、連絡先、日程、コースなど

紙に書いて箱に入れておく。ネットで申請する事もできるようになりました。あまり知られていませんが、下山届も出しておくのが最良。

山に行く時は家族や友人などに必ず行き先を言っておきましょう。

狭い登山道や場所によってはミスが命に関わることも少なくありません。人に道をゆずらない人、大人数で繋がって歩くグループを多く見かけるように

なってしまいましが、5人以上の集団はすれ違いを考えてグループに別れて少し距離をとって歩いてください。

一般的には登り優先と言いますが、状況をみて判断します。道を譲る時は必ず山側に立ちザックが後ろになるように立ちます。

大体の登山道はマーキングがあります。もし道を見失ったら必ず引き返しマーキングを見つける事。

登山道は大抵稜線にあります。迷ったり道を見失った時はあせらずに下山中でも谷筋には下らない。稜線まで登りルートを見つけます。

沢筋は下れば戻れそうに思いますが、滝や断崖があり必ず行き詰まります。遭難者の多くはベテランでも沢筋を下り迷います。

危険や怖さを感じたら進むのを諦めて来た道を引き返す勇気も重要。

動植物や自然環境の保護も人間にしかできないことです。山に持ってきたものはすべて持ち帰るのが原則です。

食べ物の包み紙のナイロンやプラスティックも同様、登山道に必ず落ちているキャンディの包み紙などぜひ拾って下さい。

愛煙家のみなさん、フィルターは自然分解しません。携帯灰皿を持ち吸殻は必ず持ち帰ってください。

高度が2,000m以上になって頭痛がでたら、高山病の可能性があります。そういう場合は休憩を取り15分以上休みます。吐き気がしたら危険信号です

ので下山します。高山病は放っておくと、命にかかわる場合があり、高度が下がらないとけっして治りません。

下山すれば回復しますので、人が付き添って下山します。

アルプスでの救助は今はヘリコプターがメインになっていますが、救助を求める場合のサインが決まっています。

手に白や色の鮮やかなタオルや衣類などを持ち、片手で頭の上で振ります。ヘリが近づいてきたら上下に振ります。

誤認を防ぐため救助以外はヘリ手を振ったりしないようにしてください。見通しの良くない所ではヘリに向かってカメラのフラッシュを焚くのも有効。