初心者からの脱却
登山のスキルアップと道具を使いこなすガイド

スキルとは手腕や技量。難ルートを攻略するのも技術と経験がいりますが、怪我なく安全に登山をするのに必要なのがスキルです。

整備されたルートを何年登ってもなかなかスキルは上がりません。自分で学ぼうとしなければなりません。

一番重要な事は安全に登り無事に下山する事。決して無理はせず危ないと思ったら引き返す。撤退する勇気が必要です。

その山特有の気象条件や寒暖差、風や天気の読み方を学ぶ。登山道具を使いこなす、高山病や怪我、事故の対処方もスキルの一つです。

ここでは知識として身につけられるスキルを紹介します。

体力をセーブして、怪我をしないスキル
疲れない歩き方

自分の体力、体調を知りそれに合わせた登山をするのが基本です。能力が高くても体力を上手くコントロールできると登山が安全で楽に

なります。

体幹(四肢と頭を除く体と筋肉)を鍛えると、重心がぶれずに歩けるようになり疲れも軽減されます。日頃の僅かな時間でトレーニング

できますのでぜひお勧めします。

登山を始める前に体が温まっていれば、疲労感や疲れが少なく楽に登れます。準備運動はアキレス腱を中心に充分筋を伸ばします。

一番重要なのがペース。登るスピードが上がるほと筋力、体力の消耗は倍増します。歩幅が大きいのも同じ。歩き始めは体が温まるまで

小股でゆっくり歩きます。歩き始めはゆっくりと、体が温まるまでの30分は、普通の半分くらいの歩幅、ペースで歩きます。足を高く上

げず1歩1歩足を置く場所を選んで登ります。こうすると自然にゆったりした歩き方になり一定のリズムが生まれてきます。

装備が軽い場合は1時間毎に休憩し、足が冷える前に動きます。重い装備の場合は、30分に毎に休憩といったペースが理想です。

重い装備の時はさらに歩幅を小さく、半歩位の歩幅で一定のペースで登ると体力はかなりセーブできます。下りも急坂ほど歩幅を

小さく取ればスリップや転倒もしにくくなります。

登山地図などでコースタイムを参考にし1時間毎に30分、昼食に1時間プラスした休憩を取ればゆとりを持って登れます。

膝と腰を使い重心を体の中心からずらさずに意識して歩くと楽になります。腰をいれて膝を曲げて歩くのはボッカなど体幹の優れた人

の歩き方。

体力の弱い人でもトレーニングより、数回こういう歩き方で登山をしていくと体が覚えます。

ルートによる対応 岩壁 クサリ場など

一般登山道でも山によっては岩壁を登ったり、ナイフリッジを渡ったり、ガレた急斜面や雪渓のトラバース(横断)があるところもたく

さんあります。まず覚えたいのが岩壁の登り方。クサリやロープがある所でも基本は同じです。

常に体の3点に体重をかけて(三点支持)岩にへばり付かず、手足を張って体と岩の距離を空けます。手がかり、足がかりをしっかり見極

めて、一度に体重をかけず軽く体重を乗せて崩れ落ちたりしないか確かめます。これは浮石にも役に立つスキルです。

ナイフリッジや狭い稜線などでは、目線が重要。足元に集中し他に目線を移動しない。人は見た方向に体が向かう傾向があります。

視線を動かす時は停止し、体の向きを変える時は足で方向を変えます。体の重心軸がぶれなければ、転倒の危険も減ります。

鎖やロープは引っ張りテストをして、安定を確認してから腕の力ではなく、足で登ります。

ルートによる対応 ガレた急斜面 雪渓など

ガレ場を歩く時は、登りも下りも歩幅が重要。 1歩1歩を小さく半歩幅で足を置く感じで一気に体重はかけません。

特に下りはザックを体から離すようにショルダーベルトを調整し、前かがみにならず、上体を起こして少しふんぞり返るような姿勢で、

地面と接地面が広くなるように足を着きます。

急斜面のトラバースではストックを山側に着き、谷側の足をやや外向きに体重移動を小さく体が傾かない歩幅で歩きます。

足を下ろす時は地面に平行に、つま先やかかとから先に行かないように心がけます。

雪渓は踏み跡があると、どうしても大股になりがちですが極力小股で。つま先を蹴り込むキックステップが基本です。

方向転換をする時は上体ではなく足から小刻みに動きます。

すべってしまったら、足のかかとでブレーキをかけます。後ろ向きならつま先を蹴り込みます。頭からすべったら、雪面をつかんで体の

向きを入れ替え、足が下で下向きになるようにします。

ピッケルがあるなら、トップを握って体重をかけるように脇で抱えて刃を雪面に打ち込んでブレーキをかけます。

ルートによる対応 トレッキングポール

下りは登りより膝に負担が大きくなります。最近はトレッキングポールが当たり前ですが、2本使って下ると体が前傾しステップも大きく

なります。

ポールに頼りすぎると、手に力が入り重心が不安定になります。トレッキングポールはあくまで補助です。ポールを突く位置も遠くでは

なく、次の1歩の辺りにつきます。

ステップが大きくなると衝撃も増え、スリップしやすくなります。横方向にステップを広げたり、踏み出すポイントを一つ手前にする等

の意識が重要です。

トレッキングポールは平地歩行ではストレート2本が楽ですが、登山では1本使用、Lグリップがおすすめ。

天候を読む 地域ごとの特徴を知る

天気を読むのは登山の当然のスキルです。ラジオを聞き天気図を書くのもかつては当然のようにやっていました。しかし現代では天候を

読む事が軽視されています。天気予報など人の情報に頼るからです。天候は命を左右する大きな要素。

最近では多目的ツールとして登山用の腕時計に気圧計が組み込まれていて、気圧傾向や天気を予測する機能は標準です。

しかしそれは、あくまで目安。気圧傾向だけで天気を予測する事は不可能です。大事なのは地域毎の気候の特徴を知る事です。

アルプスでは稜線では風が強く、午後にはガスが上がるのは常識です。例えば白馬岳は山頂から北側は雪を吹き飛ばすほどの強風地帯。

中央アルプスの駒ヶ岳の稜線は世界でも屈指の強風地帯です。八ヶ岳も硫黄岳から赤岳への稜線も突風地帯です。

表銀座の大天井周辺は雷が多く発生する場所。

夏でも強風にさらされたまま長い時間歩き、雨やガスに合うと低体温症になり動けなくなる事もあります。

低気圧の間に南から高気圧が入り込むと、アルプスでは爆弾低気圧という暴風雨が吹き荒れ、夏場でもブリザードになります。

台風が通過した翌日も危険です。鉄砲水や土砂崩れが発生します。

情報を知るには山小屋で聞くとか、ネットで遭難事例を調べたりするのも有効な方法ですが、登山者同士の情報交換も重要。

入山者も下山者もお互いに情報を伝えましょう。

山の天気の常識。雷雨や風を伴う雨の時は行動しない。晴れ間が見えても高い所に雲がある場合は天候は良くならない。

夏は午後には雲が上がってくる。

体調管理や知識
痛み(靴擦れから膝や足首)に対応

山で会う人で、怪我ほどではないけれど痛みを訴える人を良く見かけます。どこかが痛いとき市販の痛み止めは有効です。

痛み止めは胃に負担があるものが多く、眠気が出たり頭がボーっとするものもあります。こういった副作用が少なく良く痛みを抑えて

くれるのが、イブプロフェンという成分が入った痛み止め。宣伝ではありませんがエスタックEVEという薬は幅広い痛みに効きます。

靴擦れや膝の痛み、打撲の痛みにも効果あり。

もう一つ山で怖い高山病ですが、これは初心者ベテラン問わずに起きることがあります。高山病はトレーニングなどで改善することはな

く特効薬はありません。吐き気を伴う頭痛が出たらとにかく下山。

軽い症状なら高度順応するため休憩を取り水をたくさん飲みます。ゆっくり登る事も可能ですが、症状が改善されないなら下山しかあり

ません。放っておくと死に至る事もあります。一つの情報としてダイアモックスという緑内障の薬が効果があると言われます。

エベレストなどの高山では特効薬として用いられます。入山前に飲むのですが、発症してから飲んでも効果がある場合もあります。

日本では医師の診察と処方箋が必要です。

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