良いかい良いかい。どんな動物に対しても、苛めてはいけないし、野生なら追いかけてもいけない。意味も意図もなく関わってはいけないよ。いたずらしてはいけないよ。

 ――うん。判った。でも、なんで?

 人が知らないだけで、動物の中には神様がちょくちょく混ざっているからさ。

 え〜藩国で良くある子供との会話

 ***

「というのは良く話に出てるんだけど、なんというかねぇ」
 書類をばさりと投げて、え〜藩国藩王花井は呟いた。
「まあ……仕方ないといえば仕方ないんでしょうけど」
 摂政であるところの関は、テーブルに散らばった書類をかき集めながら応じる。
「私たちは実際問題、HBペンギン殿を始めとする鳥の神様方やら、ブータ殿やらを少なからず一方的に知ってますから良いんですけど、一般にはそういうわけはないでしょうね」
 散らかされた書類には、「地鶏および卵の密猟増加」の文字がある。元来裕福ではないが、戦時となってますます逼迫しているえ〜藩国の財政は、好意的に見ても芳しくないというのが現状である。常に綱渡り。国民の間ではすでに厭世観が漂っている。
 実質国民にとっての初戦が自国を舞台にした上、港を始めとする主要部の壊滅と多くの人的被害。北国で寒さや辛さに強いとはいえ、精神的な疲労と限界は、もはやどうにもならないレベルである。
 食糧事情だけならば、小麦や卵を主要生産物としていることもあり決して悪くないが――むしろ食料だけなら山とあるのである――いかんせん、娯楽がなかった。北国に娯楽は少ないのだ。
 娯楽がない=気晴らしがないということで、人々はますます荒む。心の荒みは、社会も荒ませるのだ。
「娯楽だ! 娯楽が足らん!」
 藩王はそう叫ぶと、えーという顔をした関を尻目に、執務室を飛び出した。この男、サウドを敬愛してやまないために、国民の心持というのには非常にこだわるのであった。

「で、娯楽といえばゲームだ」
 飛び出した藩王花井がどこへ来たかというと、広間である。え〜藩国の主たるメンバーは、城では基本的に広間にいるからだ。
「ということで、朝倉、佐倉、ゲームだ! 娯楽が足らん!」
「北国人の娯楽生産不足は、今に始まったことでもありませんわ」
 ほほ、と笑うのは榊である。一方、名指しされた朝倉と佐倉は、ぽかんと花井を見ている。
「話が通じません、はんおー」
 呆然と応じるのは佐倉である。朝倉は、なんか面白そう、とすでに目を輝かせている。
「いや、俺ね、動物とかそういうものへの畏敬の念っていうか、地鶏の密猟に心痛めてるから、国民に心の安らぎでゲームってどうよって思うんだけどどうよ」
「あー。つまり、国民に心の安らぎ与えるためにゲーム作ろうぜ。ついでに地鶏神様ちゃんと普及して密猟やめてもらおうぜ、ってことですか」
 朝倉がふふふと笑いながら確認すると、同じく花井もふふふと笑いながらうなずいた。
 言質を得たりと喜ぶのは朝倉である。
「じゃ、俺ゲーム作るから、地鶏はとーるん任せるね!」
 言うが早いか、朝倉はさっさと飛び出していってしまった。
 花井がそれを見送って、ゆらり、と視線を佐倉に向ける。
「とーるん」
 話し言葉で言うならば、「超いい笑顔」で、花井は佐倉の肩をたたく。
「がんばれ」

 こうして、え〜藩国ゲーム班が動き出すこととなったのである。


ゲームダウンロードページへ(地鶏神HI! 祭り跡地)

CopyRight (c) 2007 SAKURA Tole All Rights Reserved.