Das Pferderennen
競馬愚痴



04.Juli.2006 Dienstag ダンスインザムード、アサヒライジング、カネヒキリ

 7月1日に米ハリウッドパークで開催された Cash Call Mile Invitational Stakes (GIII) で、ダンスインザムードが優勝しました。藤沢和雄調教師の話では、秋は天皇賞を目標にするとのこと。これを聞いて一瞬、ん?たかがGIII勝つためにアメリカまで行ったのか?と思いましたが、これは早とちり。社台のニュースによれば、賞金総額75万ドルはアメリカの牝馬限定レース中最高額で、今はGIIIだが近い将来GI格を得るレースだとのことです。今回ダンスインザムードの手綱を取ったのは北村ではなくエスピノーザ。藤沢師は外国人使えるときは日本人騎手使わなくなったなあ。美浦のベテラン騎手は横典以外ダメなのか。ダンスインザムードが二度目の海外遠征で初勝利を挙げたのはめでたいことです。よかったよかった。
 翌日の American Oaks (GI) では日オークス3着のアサヒライジングが出走して2着。鞍上はダンスインザムードと同じエスピノーザ。1枠をひいたので、上手く逃げて粘ったんだろうなと思っていたら、「スタートを遅く出てしまい、ダッシュもつかなかった」というエスピノーザのコメントを発見。どうやら出遅れてしまい、最内枠だけに外から他馬が殺到して前をふさがれてしまったようです。日本のオークスでは善臣騎手の好騎乗で逃げ粘っての3着だっただけに、スタートがまともだったら、と古賀調教師も残念でしょう。ただ、初の海外遠征でGI2着は立派な成績じゃないでしょうか。勝った Wait a While の1分59秒38(2000m)は、昨年のシーザリオが出したレコード1分59秒03と比べても優秀の一言。ここは勝ち馬の強さを讃えておきましょう。「エスピノーザの、雑な騎乗は明らかだった」というサンスポの記事や「アメリカの三歳牝馬芝路線のレベルが低い」という見方は、ちょっと行きすぎだと思うのです。世界の壁は厚くて高い、それでいいじゃないですか。
 先月29日、ドバイワールドカップで2着入線した米馬 Brass Hat の薬物使用疑惑に裁定が下り、同馬が失格となりました。結果、5着入線だったカネヒキリが4着に、8着だったスターキングマンは7着にそれぞれ順位が繰り上がりました。これは嬉しいニュースなのですが、残念なのは馬への薬物使用が明らかになってしまったことです。びっくりするくらい強い馬がいても、どうせ薬使ってんだろ、という色眼鏡で眺めてしまう時代だけはきてほしくありません。この他にも、イギリスのトップジョッキー、キアラン・ファロンの八百長疑惑がどうやらクロで決着しそうな雲行きですし、競馬のアンフェアな側面にはがっかりさせられてしまいます。日本では絶対にこんなことがないようにと祈ります。

03.Juli.2006 Montag 函館SS回顧、イカうまし

 荷物を抱えて市電を降りたのが15時10分。函館スプリントステークスの発走は15時25分だから、時間がありません。両手に荷物をぶら下げて走ります。正門をくぐってすぐの場所にあるパドックでは、もう騎手が騎乗しています。やばい。しかも先頭は地下馬道に消えてるし。新聞すら買っていないので、職員のおっさんが配っているレープロをひっさらって赤ペンを抜きます。あとは馬番を確認してマークカードを塗るべし。馬券親父のうねりをかきわけ、スタンド1階に入ってマークカード確保。塗ります。左ワキえぐりこむように塗ります。
 函館SSは2番ダイワパッションが出走取り消しになり、馬券は6番から4番、5番、8番、10番、11番、12番、13番、14番の馬連8通り。外枠を厚めに買いましょう。窓口の行列に並びつつカードを塗ります。買い終わると同時に締め切りのベルが。間にあったという喜び、間にあっちゃったという悲しみ、複雑な思いを抱えてゴール前へ。号泣の準備はできました。
 函館のファンファーレが鳴って、発走。14番マイネルハーティーがちょっと出遅れますが、これはいつものこと。7番ギャラントアローが逃げます。これもいつも通り。しかしこれに8番タニノマティーニが絡んでいきます。おいおい大丈夫か須貝。しかしこれが残る。直線入り口でギャラントアローは沈んでいきますが、タニノマティーニは頑張ります。馬場の真ん中を通って伸びてくるのが6番シーイズトウショウ。1番人気と5番人気の組み合わせだからそんなにおいしくはありませんが、当たるにこしたことはないので、「そのまま!」と叫ぼうかな。と思ったとたん、背後から馬券親父のしわがれ声が絶叫。「池添池添池添!」。がちがちの1番人気の騎手をそんなに叫ぶなよおっさん、と思ってよく見ると、シーイズトウショウの脚色がちょっと怪しい。タニノマティーニはとっくに余力がない。外から何かが猛然と差してきます。まずい。こうなったら恥を忍んで、たとえ単勝2.1倍の馬の騎手の名前でも叫びます。「池添池添池添!」。背後の親父と大合唱。だが。もっと注意して見ると、外から差してくる馬は12番。11番から外は全部、しかも厚めに買っているので、シーイズトウショウと1、2着が入れ替わるくらい構いません。叫ぶ対象を変えましょう。「池添池添いけ・・・差せ差せ差せ!」。もうどの馬を応援しているのかさっぱりわからない。
 終わってみれば、12番ビーナスラインが6番を差しきって完勝。しかもこれが単勝13番人気。1番人気との組み合わせだけに馬連は57倍とやや物足りないものの、小人物はこれでも脚が震えるのです。おまけに気まぐれで厚めに塗ったもんだからもう。競馬場を出て寿司屋に直行。
 しかししかし、呆然として函館の確定を待っていたせいで、本当に買いたかった福島メイン、ラジオNIKKEI賞のタマモクロス産駒タマモサポートの単勝を買い忘れてしまったのです。ああ、自分の小心が心底憎い。

30.Juni.2006 Freitag マイク・タイソンの誕生日

 6月30日は鳩飼いで有名なタイソンさんの誕生日です。
 今年から新設されたサマースプリントシリーズ第一戦の函館スプリントステークス(GIII)。中心は今年の高松宮記念で1番人気になったシンボリグラン(6着)と、最先着したシーイズトウショウ(3着)。シンボリグランは近三走が6着、6着、7着。あまり元気がないように見えます。今回は1600mから1200mへ距離短縮となりますが、前走が安田記念(GI)だっただけに、疲労が気になります。
 シーイズトウショウは前走CBC賞を快勝し、函館SS三連覇をかけて乗り込んできます。中京から函館のローテーションは昨年と同じ。磐石でしょう。
 馬連の軸は6番シーイズトウショウ。相手は手広く取ります。2番ダイワパッション、4番トールハンマー、5番フサイチホクトセイ、8番タニノマティーニ、10番マイネルアルビオン、11番ブルーショットガン、12番ビーナスライン、13番プリサイスマシーン、14番マイネルハーティーへ。
 では、馬券を買いに函館へ行ってきます。

29.Juni.2006 Donnerstag 発表より悪かった馬場と、馬場のわりには良かった時計

 宝塚記念を勝ったディープインパクトの時計は2分13秒0。昨年の京都新聞杯(三歳限定GII)が同じ梢重発表で2分13秒0ですから、数字だけを見ればいかにも平凡。しかし今年の宝塚記念の馬場は、重馬場だったのではないかと思います(芝の馬場状態は固い=速い時計が出る順に、良・梢重・重・不良)。
 宝塚記念の直前10Rに行われた、芝1200m戦の三年坂特別(三歳以上1000万下条件)は、ナリタシークレットが逃げ切って1分10秒1。京都競馬場で梢重の馬場状態で施行された1000万下条件の芝1200m戦と比べてみましょう。05年5月7日の鷹ヶ峰特別は1分09秒1。04年10月9日の壬生特別は1分09秒4。良馬場なら、京都の芝1200m(1000万下)は1分07秒〜1分08秒後半で決着しますから、今年の三年坂特別の1分10秒1が、遅い時計であったことがわかります。ちなみに、重馬場施行の03年2月23日山城ステークスは1分09秒5でした。ただしこれは1600万下条件で、クラスが一段上ではありましたが。
 1R前の三年坂特別でさえ、ふつうの梢重の馬場と比べ、遅いタイムで決着していました。雨は降り続きました。宝塚記念が果たして本当に梢重の馬場だったのか?そうではなかったと思います。
 ディープインパクトに抗って逃げ粘ったバランスオブゲーム(3着)にしろ、上がり3ハロン35秒8で「切れた」ナリタセンチュリー(2着)にしろ、重馬場で実績があり、良馬場の前走で大敗していた馬です(バランスオブゲーム安田記念17着、ナリタセンチュリー天皇賞・春12着)。4着のダイワメジャーは皐月賞馬ながら、その前はダートを勝ちあがった馬。5着カンパニーは重馬場施行の今年の大阪杯で1着。反対に、昨年のオーストラリア・メルボルンカップでレース前「コースに水をまかれて」大敗したアイポッパーは、13着のシンガリ負け。ハットトリック(7着)、シルクフェイマス(12着)と、湿った馬場を苦にする馬は軒並み大敗しました。
 2着のナリタセンチュリーの時計が2分13秒7です。ディープインパクトとの差は0秒7、馬身差にして4馬身。馬場状態は発表よりも悪かったけれど、ディープインパクトの時計は馬場の悪化を超越して速かった、というしかないと思います。ちなみに、この1年間に行われた京都芝2200mのレースは16あり、馬場状態を問わず早い順に並べると、今年の宝塚記念のディープインパクトの勝ち時計は2位(1位はエリザベス女王杯の2分12秒5、しかし良馬場)。
 何がいいたいのかって?僕たちは今年の宝塚記念で、凱旋門賞を勝つ馬を見てしまったってことです。

25.Juni.2006 Sonntag 宝塚記念考察、前走連対馬を重視

 午前4時開始のアルゼンチン対メキシコ戦を観ていたはずが、気がつくと午後2時。宝塚記念発走まで1時間30分。しかし僕は慌てません。こういう時のために前売りがあるのです。
 宝塚記念の馬券は、前走連対馬を中心にします。今年のメンバーなら、馬番順に、リンカーン、アイポッパー、コスモバルク、ディープインパクト。また、天皇賞5着のトウカイカムカムも加えます。
 ただし、リンカーンは長距離実績しかないこと(GI2着は3回とも全て2500m以上)、アイポッパーは湿った馬場への適性に疑問符がつくこと、コスモバルクは帰国してまだ日が浅いことから、それぞれ評価を下げます。
 三連複で買います。2番トウカイカムカムと8番ディープインパクトを軸に、1番リンカーン、3番アイポッパー、6番コスモバルクへ流します。

19.Juni.2006 Sonntag 楽しいだろう

 トウェインが書いている。「人生は果てしなく楽しいことだろう。生まれた時が80歳で、それからだんだんと18歳になってゆくのだったら」と。
 後年、誰かがつけ加えた。「だがそのように生きられたら、それだけで充分に楽しいことだろう」と。

07.Juni.2006 Mittwoch 従来の手続きよりも煩雑な電子申請とは如何に?

 こまごました文書をそろえて郵送しなければならない手続きを、web上の操作で済ませることができる電子申請は、本来とても便利です。ただし、web上の操作が簡単ならば、の話ですが。こまごました文書をそろえるよりも時間がかかるような電子申請は本末転倒です。
 電子申請のほうが文書申請よりも便利だから、ではなく、それが電子申請であるから、という理由で電子申請が採用されているのでは、利用者はたまりません。

06.Juni.2006 Dienstag 今週は中京でCBC賞(GIII)、東京でエプソムカップ(GIII)

 JRAは今年から、12月のGIIだったCBC賞を、6月のGIIIに格下げしました。1200mのハンデ戦ですから、波乱が期待できます。最も重い58kgを背負うのはゴールデンキャスト、プレシャスカフェ、リミットレスビッドの3頭。ゴールデンキャストは前走の勝利で人気になります。あまりよいオッズは期待できません。それゆえ「夏は牝馬」の格言に従って、シーイズトウショウ、テイエムチュラサン、ナゾ、ペニーホイッスルから軸にする馬を選びます。
 消費者金融会社プロミスがCMで大人のマナーについて講釈を垂れ流していますが、高利貸しから教わるようなマナーなどありません。暴利を恥じるならまだしも、その上にあぐらをかいて居直るとは、いやはや。

04.Juni.2006 Sonntag 安田記念回顧、インへの固執を嘲笑ったブリッシュラック

 ブリッシュラックが2・1/2馬身差をつけて勝利。勝ちタイム1分32秒6は、過去10年の比較で3位タイ(同04年ツルマルボーイ1分32秒6)のタイムです。
 ブリッシュラックは昨年4着。アサクサデンエンが1分32秒3で勝ったレースを、今年より0.1秒だけ速い1分32秒5で走っています。高い水準で能力を維持していました。
 期待したテレグノシスは直線伸びず、9着。もったいなかったのはダンスインザムードの北村騎手。直線、前をふさがれて追えませんでしたが、残り200mで道をこじ開けると、3、4頭をゴボウ抜き。しかし最後はダイワメジャーと並んで交わせず、5着に終わりました。道中の位置取りが後ろすぎたことと、インをついての直線勝負にこだわりすぎたことが、敗因でした。

02.Juni.2006 Freitag 展望も糞もない

 最終の壁は厚い。

31.Mai.2006 Mittwoch 安田記念展望、こんな時こそ香港勢を

 ダンスインザムードは、牡馬との混合戦では、天皇賞・秋で2着、3着があるのみ。昨年は京王杯から安田記念のローテーションを取り、どちらも惨敗。天皇賞・秋の良績にしても、人気馬がだらしないレースをしたために起きた人気薄での好走。ヴィクトリアマイル優勝で人気を背負う今回は、買う理由がありません。
 ダイワメジャーはマイラーズカップ勝ちから直接の参戦。このローテーションは悪く、過去5年間で連対馬を出していません。マイラーズカップと安田記念の間に1戦挟んでいれば買いなのですが。
 東京の1600mに良績を残すオレハマッテルゼは、前走京王杯スプリングカップを優勝。王道ともいうべきローテーションで、堅軸。
 ダートで凡走続きのメイショウボーラーも、コース変更があるとはいえ、前残りの傾向を考えると、買いたい1頭です。
 ただ、これという日本馬が少ない今回、こういう時こそ人気薄の香港馬の好走があるもの。人気が低い順に香港からの遠征馬を買おうと考えています。

29.Mai.2006 Montag ダービー回顧、巧みに逃げたアドマイヤメイン

 二冠馬となったメイショウサムソンの勝ちタイム2分27秒9は、重に近い馬場状態を考慮しても、遅すぎます。
 過去10年で2番目に遅く(03年ネオユニヴァースが2分28秒5、馬場は重)、過去20年でも下から3番目の勝ち時計(89年ウィナーズサークル2分28秒8、馬場は良)。ただ、いかに重に近い馬場だったとはいえ、今回ここまで時計が遅くなったのは、勝ったメイショウサムソンの実力うんぬんの問題ではありません。ポイントは、スタート直後の前半3ハロン(600m)のタイムにあります。
 過去20年で最も遅い時計が出た1989年、前半3ハロンは37秒0(12.5-11.3-13.2)。これに次いで遅かった2003年は36秒4(12.4-11.1-12.9)。3番目に遅かった今回が、37秒4(12.6-11.8-13)。いかに前半が遅かったかがわかります。
 このペースを演出したのがアドマイヤメイン。スタート直後、フサイチリシャールに競られるも、上手にコーナーを回って先手を奪い、ペースを落としました。前残りの馬場という考えから先行各馬が色気を出したために、厳しくつつかれることもなく、青葉賞そのままの平均ラップでの逃げ残り。結果的に、皐月賞よりもひどい先行ペースになりました。
 アドマイヤムーンの敗因は距離で、サクラメガワンダーの敗因は湿った馬場。トーホウアランは京都新聞杯のように前で粘るレースができなかったことが敗因。しかし、芸がなかったのがフサイチジャンク。中団でじっと構えたまま、直線でほとんど順位を上げられませんでした。先行の位置取りでレースを進めていた連勝中と違い、皐月賞、ダービーと、自分から動いて前目のポジションを取りに行く力がじょじょになくなっているような気がします。能力の底が見えました。

26.Mai.2006 Freitag ダービー展望、後方待機勢の巻き返しを

 皐月賞馬メイショウサムソンは小回りの中山で持ち味が生きただけに、直線が長い東京で、どこまで粘れるか疑問。今回は有力な逃げ馬2頭、アドマイヤメインとフサイチリシャールがいるだけに、早めに捕まえに行けば、切れ味に勝るフサイチジャンク、アドマイヤムーン、サクラメガワンダー、マルカシェンクが台頭するでしょう。
 同じ先行馬でも、2番人気には支持されるだろうメイショウサムソンよりも、ずっとプレッシャーの少ない立場で挑めるトーホウアランが買いです。ただ、フサイチリシャールがアドマイヤメインに競りかけ、ペースが上がったときのことを考えて、軸は後方待機のフサイチジャンク、アドマイヤムーン、サクラメガワンダー、マルカシェンク、ジャリスコライトあたりから選ぶのがいいでしょう。

25.Mai.2006 Donnerstag 『ダ・ヴィンチ・コード』感想、キリスト教徒的批評の傲慢

 『ダ・ヴィンチ・コード』の映画の劇評に、次のようなものがありました。即ち、教会批判が込められたこの映画と原作を、発禁したりせずに受け入れたキリスト教文明圏と、ムハンマドの風刺画に怒り狂って暴動を起こしたイスラム教文明圏とを比較し、前者の文明の成熟度を誇る内容でした。
 この解釈は的外れです。『ダ・ヴィンチ・コード』はキリストを爆弾魔やテロリストに見立てているわけではありません。その中で展開されているのは、あくまでキリスト教会の体制批判です。キリストの聖性を剥ぎ取り、堕落した人間に貶めることが目的なのではありません。イスラム教の開祖をテロリストに貶め、その信者たちもすべからくテロリストである、という印象を与えることを目的としたムハンマド風刺画とは、決定的に違うのです。風刺画が非イスラム教徒の手によって描かれた、という点も重視しなければなりません。先述の劇評を書いた記者は、マーク・トウェインの言葉「真の不敬、それは他人の神を敬わぬこと」の意味を考えてからペンを執るべきでした。
 また次のような、フランス人の筆による批評もありました。即ち、キリスト教の教義に関わる深遠な問題を、ハリウッドとトム・ハンクスごときに扱わせるべきではない、というものです。ある改修中の教会を覆うシートに『ダ・ヴィンチ・コード』の宣伝が描かれていたのが、抗議を受けて撤去されたできごともありました。キリスト教文明の成熟度について、これ以上何をか言わんや、です。呆れる他ない成熟ぶりではありませんか。
 もちろん、これらはごく一部に散見される事例にすぎません。『ダ・ヴィンチ・コード』についての諸批評は、全体的に冷静で、次の点でほとんど一致を見ています。それはつまり「つまらない」。
 それが本当かどうか確かめようと、僕も観てきました。「つまらない」は酷評にすぎます。原作とまったく同じ場面、展開が続く中盤は確かに退屈ですが、イアン・マッケランのティービングは魅力的で、『最後の晩餐』講義のくだりもCGで視覚的にわかりやすく表現してあります。男と女が抱き合って終わる「ハリウッド的」展開の原作から少し趣向を変えたラストも、原作に対する皮肉のようで、面白かったのでは。
 ちなみにナショナル・ジオグラフィック日本版の5月号特集「『ユダの福音書』を追う」も、初期キリスト教の内部対立に言及していて、興味深い内容でした。生臭い権力闘争ってのはどんな組織にもつきもの。たとえそれが神の子と聖人の教会であっても。だから歴史は楽しいし、勉強する意味があると思うのです。

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