アンパンマン論(金曜日5限、特別講義、中洲教授)

以下の文章は、先日おこなわれた中洲教授による講義をうつしとったものである


樸の好きなテレビ番組のひとつに『それいけアンパンマン』というのがあります。アンパンマンが、一切の無駄をはぶいた必要最小限の顔をしていることからもわかるように。その番組も30分の中で2本と短く。わかりやすい内容であり、子供にも親しめるようになっていることはみなさん御存じのとうりですね。
しかし、その単純さゆえにこの番組は幼児番組というレッテルを貼られ、その奥深くにねむっている教訓に気づかれないことが多いんです。もっとも、受身的に見ていたんではその教訓には気づくことはできませんで、積極的な姿勢で見ることで自然と心に伝わるものなんです。この講義では、そのような積極的な姿勢で見ることを目標にアンパンマンをよりおもしろく見る方法を例を挙げながらすすめていきたいと思ってまーす。
アンパンマンの作者であるやなせたかしさんが言うには、「アンパンマンは正義のヒーローのなかでも最も弱く、顔がぬれるだけで力をなくしてしまう。しかし、そんなハンデをかかえているにもかかわらず悪にたちむかっていく勇気をもっている。」さらに、「アンパンマンは武器を一切もたず、どんなに悪い相手でも殺すことはしない。アンパンマンは勇気と同時に愛ももっている。」とのことでした。すこし無理がある気もするけど、これはまさに「愛と勇気だけがともだちさ」というオープニングの歌に通じますね。そういえばこの歌、下ネタになってましたね。「ナニが君の幸せ、ナニをして喜ぶ」って。さっきまで寝てたのに、こういう話になるとみんな起きだすんだからー。まったく。まだ始まったばっかりだからがんばってくださいね。
ここからは僕の感じ取ったことを言います。アンパンマンに出てくるキャラたちって様々ですよね。ウサギやカバやハミガキ粉まででてきちゃうんだから。(純粋な)人間なんてジャムおじさんとバタコさんの二人だけ。だけどみんな仲よし。その世界では、人間もウサギもハミガキ粉も対等な関係になっているわけです。人間にも一つの命。ウサギにも一つの命。その価値に優劣なんてつけられない。どんなものでも命の価値はいっしょというわけです。蚊にさされたぐらいで殺してはいけません。…でもやっぱりかゆいのやだから殺しちゃう。理想と現実は遠いですね。
さっきの話に戻るけど、この話の世界では人間も動物も植物もみんな仲よし。これは、『自然と共存する人類』またはそれらを総合して『自然』と例えることができます。しかし、そんな平和をバイキンマンがあらゆるメカを使って壊そうとするわけです。これを『機械化に走った人類』と例えます。すると、機械化に走り、自分達でなんでもできると思い込んで傲慢になった人間が、原始時代からともに共存してきた自然の恩恵も忘れて自然破壊をしている姿とダブってみえませんか。そして、そのお返しにアンパンマンがバイキンマンをやっつける。つまり、自然が公害という形で人間に返してくるわけです。ちょっと話が深刻になりすぎました。次からもっと明るい話にします。
バイキンマンが悪さをした後、正体をばらす(ばれる)とき、アンパンマンは「君のしわざだったのか…」というセリフをよく言いますが、見てる方としては、「悪さをするのはいつもバイキンマンなんだからそんくらい気づけよ。」とか思っちゃいます。しかし、気づかないということはバイキンマンは本当はいいやつだと信じていたからです。正義のヒーローには、アンパンマンがもっているような人を信じる心が必要なんです。アンパンマンの信じる心はすごいですね。…それとも、バカだから気づかないのでしょうか。僕は前者であると信じたい。
そろそろ話も終わりに近づいてきたところでちょっと余談を。メロンパンナとチーズは実は結構深い関係で、声優どうしが夫婦なんです。おどろきですね。
「アンパンマンって新しい顔がきたとき古い顔ってどうなるの?その場に捨てていくの?」とおもった人もいるでしょうが、実は、アンパンマンの古い顔は、新しい顔が来たとき自然消滅するそうです。地球にやさしいですね。ちなみにアンパンマンの誕生日は2月6日で、やなせさんと同じです。
さて、講義もこれでおしまい。みなさんお疲れ様…ってよく見たら前の方の人しか残ってないじゃん。残ってる人たちも懲りずにまた出席してね。(拍手がパラパラときこえる)


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