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初ウルトラ 100キロ完走記
2005年10月23日、隠岐の島 ウルトラマラソン100キロ完走の記録

スタート午前5時。
前日からの風雨がまだ続いていると言う悪天候。
計画していた半袖シャツ・短スパッツは急遽変更、
長袖・長スパッツ・手袋・カッパ装着という スタイルでのスタートとなった。
自宅を出る直前、ひょっとしたら必要かな?念のための寒さ対策に用意したものが役に立った。
寒さに震えながらも、スタート地点ではかがり火が煌々と焚かれ、合図とランナーからも同時に拍手が沸き起こり、 いざ、100キロへ・・・。
まだまだ夜明け前、暗闇の中、海岸に繋がれているイカ釣船では、吊りランプに灯りをともしてくれてコースを照らしてくれている。
街頭の無いところでは、自動車のライトも照らしてくれている。
転ばぬように水たまりにはまらぬようにが精一杯で、足下に注意しながら、もう後には引けない、前進あるのみという感じ。
私の周囲では、これってキロ8分より早いペースだよね・・・って囁きが聞こえる。 暗くて距離表示にも気がついていなかったが、私としては楽なペースで淡々と走っていた。

夜が明ける頃になって、やっと距離表示も意識できる余裕が・・・。 キロ8分よりも速い、たぶん7分40秒くらいだわ。 高波6メートルって朝のニュースが言っていたけど、なるほど海岸に打ち寄せてくる波は 凄まじい勢い、風もまだ相当強い。
なんとか雨は小降りになってきた。

寒さで冷えてトイレに行きたくなったが、なかなか見あたらない。
10キロ過ぎたところでようやくトイレ発見。 皆、思いは同じだったのか、ちょっとした行列が出来ていたが、やはり並んで、すっきりと仕切り治し。
風が相当強く、トンネルが見えてくるとホッとしたが、その逆でトンネルの中は風の吹き抜けになっており、返って厳しいことを思い知らされる。
トンネルが見えるたびに覚悟!ってな気持ちになる。
大きなアップダウンもあったが、なんとか上りも走り続けることが出来、 48.5キロの休憩所に到着したのは11時10分。やはりキロ7分40秒くらいで来たことになる。この調子だと完走できるかもしれないという 希望が持てた。
更衣室で濡れてしまった上衣だけ着替え、長スパッツの方は着替えを持たなかったのでそのまま。 給食に出されていた、おにぎり、梅干し、めかぶの味噌汁の美味しかったこと。隠岐そばもいただいた。
さすがにカレーにまでは手が出せなかったが、しっかり燃料補給しいざ後半戦へと・・

午後からは天気はしだいに回復してきて汗ばむようになってきている。
50キロ過ぎる頃は、冷静に頭の中で<時間÷距離>が出来なくなってきていた。
自分の走りやすいペースで、前を走るランナーを見失わないようにという感じでヒタヒタ走る。
足もそんなに辛くないし、マイペースで走れていたが、確実に前半よりもペースは落ちてきているのが分かる。
ちょっと辛いなって思ってた時に、道ばた繋がれていた牛の角に応援の旗がくくりつけられていた。
なんとも微笑ましい光景に気持ちが和む。

スタートしてから10時間後の午後3時に75キロ地点通過。
77.4キロ地点では最終の給食で、冷や奴とぜんざいが用意されていた。
お豆腐も美味しかったが、ぜんざいの底に入っていたお餅のありがたかったことと言ったらない。2杯もおかわりしてしまった。
「あと22.6キロ、ゴールが見えてきたね!」ってランナー同士の間にもホッとした笑顔での話が弾む。
「初ウルトラだからなんとかゴールしたいです!」
って言うと、
「こんな厳しいコースで初ウルトラ制覇できたら、他は目じゃないってよ!」
って言われてしまった。そんなにこれって厳しいコースなんだろうか???
ほんのひとときではあったが、息抜きが出来、また走り始める。が、しばらくしての上り坂でとうとう歩きが入ってしまうようになる。 足が全然上がっていないのが分かる、靴底が地面を離れていない。
痛みなどは感じないから、疲労のせいなんだろう。やはり100キロは長い。
あんなに食べてきたのに、またお腹も空いてきた・・・と思い始めていると、私設エイドであんパンを用意してくれている人がいた。
「ありがたいです!!」と叫んで飛びつく。
しばらく行くと、今度はチョコレートをくれる人がいた。
ああ、これでゴールまで走れる!とかなり嬉しかった。

あと10キロという所で午後5時半を過ぎていた。そろそろ陽が傾いてきている。明るいうちにはフィニッシュは無理になってきた。
左腕の二の腕が抜けるようにだるくなり、振ることが出来なくなってきた。
元気な時なら10キロ1時間ペースだろうけど・・・制限時間の午後7時半にはまず間違いなくゴールできるだろうけど・・、と頭の中で必死に計算しながら走る。

残り3.5キロ付近で午後6時半! これなら歩いてだって制限時間はクリアできると安堵したが、こうなったら7時前には到着したいと、ヒタヒタと走り続ける。
あたりはとっぷりと暗い。が、監察のスクーターの方が後方からライトで足下を照らしてくれている。
前方に黄色のウェアの男性がかすかに見えているが、監察スクーターが私に付いていてくれると言うことは、女性優先なのか、私の走りが相当危なっかしく見えているのか?などと考えたりしていたが、
ともかく足下を照らしてくれているのは、本当に助かっているし、「歩かない、走るんだ!」って言う最後の気力を後押ししてくれている。
いよいよあと1キロ、もう大丈夫!
ここでジワジワと感激がこみ上げてきて、暗いのに応援に立って声をかけて下さる人たちにみんなに
「ありがとうございました!」 「お世話になりました!」
って応えている声も涙でつまりそうになる。
ゴール手前100メートルほどの所で、監察のスクーターの人にも、「お世話になりました!」って振り向いた途端、足下にあったゴムマットに躓いて前に転倒、 監察の方を慌てさせてしまったが、大事なく、ここは笑顔ですぐに立ち上がり、目前に待ってフィニッシュテープを目指す。
両手を上げて「やったー!」と叫んでゴール!
午後6時55分!13時間55分のラン。
アナウンスでは私の名前やら、どこから参加したかなど、いろいろ紹介して放送してくれている、大感激!

完走メダルをかけてもらい、シューズにつけたレコードチップをはずしてもらって、やっとジワジワと実感がわき上がる。私の前を走っていた黄色のウェアの男性と健闘を讃え合ってしまった。

走っている時にはもう麻痺状態だったのか、椅子に座ってから、いざ立とうとすると、足がガクガクして歩行も困難って感じになってしまっていた。
足を引きずりながら、預けていた荷物を受け取り更衣室にてシャワーを浴びて着替え、いざ後夜祭へ!!
生ビールも格別なら、サザエの壺焼き・イカのお造り、カニもお味噌汁などなど、盛りたくさんのご馳走を満喫。ランナー同士も自然と話が弾む。
このコースで完走できたら、どこのウルトラも走れるよ!って言葉が多い。
それだけアップダウンがきつかったと評判だった。
初めてだという緊張感があったせいか、本番に向けて私なりに練習してきた事、体調管理してきたことで成果が出せたことで今は満足している。
100キロは、ホントに長丁場だから、いろんな面でベストに自分を持って行くのは大変だろうなとは思うが、長時間のレースを通じて山あり谷ありを克服していく面白さがあった。
また走ってみたい距離である。

練習面でも精神面でも大きく協力して支えてくれたチームやランナー仲間のみんな、多くの友人たち、家族、そして当日、強風の中・寒さの中、外に立ち応援し下さった隠岐の島の皆さんに、心から感謝です。