網平均について

測量計算ソフトSpace Net の操作には直接関係ありませんが、
参考としまして網平均計算について簡単にご説明いたします。


測量計算ソフトSpace Net につきましては以下のページをご覧ください。
「Space Net XY・高低網」「Space Net 三次元網」「Space Net 水準網」
「Space Net 自由網(XY・高低)」「Space Net 自由網(三次元)」
「Space Net 自然網(XY・高低)」「Space Net 自然網(三次元)」

網平均とは?  観測値によって点が豆細工のようにつながり合っている状態を網(network)と呼びます。測量の網平均とは、観測できる角や距離を数多く観測して、求めたい未知量である地表の点の位置(標高やXY座標)を求める方法です。高い精度を求めるため、未知量の数以上の多くの観測量を用いて最小二乗法の原理に基づ計算を行います。

測量網平均の目的は次の2点です。
@「観測値の補正量の二乗和を最小」を満足する未知量の最確値を求める。
A観測の精度を示す指標である、単位重みの標準偏差を求めると共に、未知量の最確値の標準偏差を求める。 
網の形の種類 (1)単路線
    
(2)定形型(Y・X・A・H型)

(3)任意型(自由な形)
 網平均を行う測量の種類  
(1)XY網・・・TSでの観測値の距離と水平角を調整します。
    
(2)高低網・・・TSでの観測値の高低角を調整します。(距離はXY網結果を採用)

(3)三次元網・・・GNSS測量機での観測値の基線ベクトルを調整します。

(4)水準網・・・レベルでの観測値の比高を調整します。
網平均の種類  (1)厳密平均・・・最小二乗法(観測値の補正量の二乗和を最小)で新点の最確値(結果)を求める方法です。重量、観測方程式から行列計算により、近似値の補正量及び観測値の補正量、標準偏差を求めます。

XY網の場合、角と距離は異種観測ですが、距離の誤差を角の誤差に換算して同時に観測方程式にかけて距離と角の補正量及び最確値(座標)を同時に求めます。観測値が2次式のため観測方程式を作るにあたって線形化が必要なため原理的に未知量の近似値が必要になり、網平均1回目と2回目の最確値の差が大きい場合は、小さくなるまで網平均を繰り返す必要があります。しかし、最初の近似値の精度がある程度良ければ網平均を繰り返さなくともmm単位の結果に差がありません。

高低網の場合、観測値は高低角、距離はXY網の平均結果を観測値とします。観測値は2次式になります。

水準網の場合、観測値は比高(標高差)で観測方程式の係数は1、-1、0で単純です。観測値は1次式のため観測方程式を作るにあたって線形化が不要であり、原理的に未知量の近似値が不要で、網平均の繰返しも不要です。

三次元網(未知パラメータを推定しない時)の場合、観測値は基線ベクトル(三次元直交座標の座標差)で観測方程式の係数は1、-1、0で単純です。観測値は1次式のため観測方程式を作るにあたって線形化が不要であり、原理的に未知量の近似値が不要で、網平均の繰返しも不要です。
GNSSは三次元直交座標X、Y、Zの各成分毎に基線ベクトルの成分凾w、凾x、凾yが観測されているので、その3つを三次元空間座標の比高と考えれば、それぞれの成分について水準測量の観測方程式と全く同じになります。

(2)簡易平均・・・TS多角測量、水準網の一部(交点以外の新点)に用いられる方法。
TS多角測量では最小二乗法で一度に最確値を求めるのでなく、交点について方向角とXY座標を分けて最小二乗法を適用し、その他は簡易的な計算で求めます。最初に各路線毎に観測角から交点での基準方向の観測方向角を求めてから最小二乗法で一つの値に決定し、観測角との差を均等配布します。次に各路線毎に補正後の角と平面距離から交点観測座標を求めてから最小二乗法で一つの値に決定し、閉合差を求めてから各点にコンパス補正して座標を決定します。

厳密に計算を行うには、簡易平均のように2段階に分けて計算するのではなく、角と座標の条件式を同時に解く必要があります。

網の形が理想形(路線が直線状、点間距離が等しい)に近いほど厳密平均と簡易平均の最確値の差は小さくなるようです。
 網平均の特徴 厳密平均のXY網は観測値が、@内角のみ(三角測量)、A距離のみ(三辺測量)、B図形の全ての内角と距離(多角測量)、C内角と距離の任意混合の4タイプについて計算可能です。@ACは計算可能とするための角と距離の判断が難しいと思います。作業規程の準則等では、わかりやすいB多角測量のみ規定しています。

簡易平均のXY網は観測値が、B多角測量のみ計算可能です。

厳密平均のXY網は、与点での取付観測が必要なく与点が2点以上、または1点1方向角が固定されれば計算可能です。作業規程の準則等ではXY網は多点固定(3点以上)の方法のみ定められていて、与点2点または1点1方向角固定の方法は定めていません。

簡易平均のXY網は、基本的に与点での取付観測が必要です。例外的に与点2点が固定されれば計算可能です。(無方向トラバース)

厳密平均のGNSS三次元網、水準網、高低網は1点が固定されれば計算可能です。作業規程の準則では三次元網のみ多点固定のほか1点固定(仮定網)の方法が定められています。1点固定の最確値の網の形は観測値のみで決定されるため、与点の相対精度に影響されず純粋に観測値の点検が可能です。また、固定する与点と固定しない与点との整合性が閉合差で確認できます。

厳密平均のXY網の1点1方向角固定、三次元網・水準網・高低網の1点固定は、下記自由解法の最確値の網の形と合同になります。また、1点固定解法と自由解法の差は、@XY網は移動・回転 A三次元網は三次元空間上の自由な平行移動 B高低・水準網は上下のみの移動 となります。

@厳密平均のXY網の1点1方向角固定と、Aヘルマート変換(倍率固定)を組み合わせると、自由解法と結果座標が一致します。
例外として閉じた多角形(環)のない図形では、@開放、放射トラバースまたはその任意組合せと、Aヘルマート変換(倍率固定)を組み合わせると、自由解法と結果が一致します。
網平均の適用  (1)厳密平均・・・単路線、定形型、任意型

(2)簡易平均・・・単路線、定形型、任意型

厳密平均と簡易平均のどちらでも全ての図形が計算可能です。

簡易平均(無方向トラバース以外)は、交点の観測方向角と観測座標を求めるために、全与点での取付観測が必要になり、取付観測不要な厳密平均に比べ観測が大変になります。(伐採・視通の確保)

厳密平均に用いる最小二乗法の種類  (1)観測方程式・・・観測値に加えるべき補正量Vと、数学的モデルに含まれる未知のパラメータの間に成り立つ式。

(2)条件方程式・・・観測量相互の間に数学的に厳密に成立しなければならない関係式。(例えば三角形の内角合計=180°)

(1)(2)の計算方法は違いますが、どちらも最小二乗法のため最確値は一致します。

観測方程式は、ほとんど自動的にプログラムが組めますが、互いに独立な条件方程式の作成はコンピュータにとって容易でないため厳密平均のプログラムは、ほとんど全て観測方程式による方法です。
厳密平均の解法の種類  (1)固定解法・・・与点座標を固定する方法です。作業規程の準則等で唯一定められた一般的な方法です。与点を固定するため隣接する地域との整合性がよく、与点同士の相対精度が良好な場合に向いていると思います。与点同士の相対精度に応じて、観測値の補正量が変わります。
仮に観測値に誤差がなくても、与点と与点の相対精度が悪い場合は正しい観測値が補正され、標準偏差も大きくなります。

(2)自由解法(フリーネットワーク解法)・・・与点座標を固定しない方法です。与点同士の相対精度が悪い場合や与点の検証に有効です。与点同士の相対精度に、観測値の補正量と標準偏差は影響を受けず、今回の観測精度のみに影響を受けます。与点の相互取付または環の箇所以外は、観測値の補正はされず標準偏差も求まりませんので可能であれば標準偏差の求まる図形にした方が良いと思います。

(3)自然解法・・・(1)と(2)の中間の結果が求まります。観測値のほか、与点座標も観測値として扱う方法です。与点座標の重みを大きく同一にすれば最確値が固定解並になり、小さく同一にすれば自由解並になります。また各与点座標の重みを大小異なる値にすれば、重みを大きくした与点はあまり動かず、小さく設定した与点は大きく動きます。

「Space Net XY・高低網」「Space Net 三次元網」「Space Net 水準網」は、厳密平均、観測方程式、固定解法です。他の一般的な市販厳密網ソフトも同様です。

「Space Net 自由網(XY・高低)」「Space Net 自由網(三次元)」、は、厳密平均、観測方程式、自由解法です。

「Space Net 自然網(XY・高低)」「Space Net 自然網(三次元)」、は、厳密平均、観測方程式、自然解法です。

参考として、簡易網は固定解法のみ計算可能です。