用語 01・跳板



 「チョンチョン」は中国では何というのでしょうか。


 中国用語では跳板(チャオパン)、あるいは跳牌(チャオパイ)といいます。「牌を1枚跳ねて(飛ばして)ツモる」という意味です。

 跳板ってのは「チョンチョン」と少し似てますね。関係あるのでしょうか?

 

 「チョンチョン」の「チョン」は、「少し」とか「小さい」という意味の日本語「ヽ(ちょん)」です。跳(チャオ)と語呂は似ていますが、直接の関係はないと思われます。

 もし「跳」が中国語でドンと発音されていたとしたら、中国ではドンパンと発音されるわけですが、日本ではやはりチョンチョンでしょう。


 跳板と「チョンチョン」が直接の関係はないとしても、日本ではそれ以外に呼ばれないとしたら、「チョンチョン」が正式用語ということになるのでしょうか。


 そういうことになりますね。
 あまりにピッタリした表現なので、他の表現が入る余地がないという事でしょう。


 跳板がチョンチョンと呼ばれるようになったのは、跳板と語呂が似ていたからではないとしたら、どういう理由でしょうか。


 大正時代、松山省三という画家が銀座でプランタンという屋号のカフェーを経営していました。ところが大正十二年、関東大震災で被災したため、新宿区牛込神楽坂に移転しました。

 この店へ洋行帰りの市川猿之助平岡権八郎が上海で買った麻雀牌を持ち込んできました。最初は松山省三・松井潤子夫妻を初め、佐々木茂索広津和郎(作家)片岡鉄兵などがルールもチャランポランのうろ覚えでやっていました。

 そこへ草創期の大先達である林茂光(りんもこう)氏が、画家・多賀谷信乃の紹介で顔を出すようになり、正しいルールを教えた。跳板についてもその時に指導したのですが、「チョンと取って、チョンと取るんですよ」と教えました。

 すると見ていた広津和郎が「先生、チョンチョンとやるんですね」といいだし、それ以来「チョンチョン」がまかり通ることになったと伝えられます。

 この後もプランタンには、前島吾郎、古川緑波、川崎備寛、長尾克など(いずれも日本麻雀界草創期の重鎮)、ますます多くの文人・画家・芸能人が集まりました。これはまさに麻雀時代の夜明けを告げる光景というので、日本麻雀史上でプランタン時代と称されます。

英名・Skip a stack
資料・「麻雀を語る(南部修太郎)」[改造・S5/4]
   ・「麻雀春秋(林茂光)」[林茂光麻雀研究所・S6・1]