点数 16・嶺上符


 この前ある雀荘で、そこの店長にリンシャンツモではツモの2符がつかない(ピンフ以外でも)と聞いたのですが、本当でしょうか?

 本当といえば本当です。
 嶺上牌でツモアガリすると嶺上開花となります。この嶺上開花は現在の麻雀が成立した1850年代か60年代には一翻役ではなく加符役(翻ではなく、符が余分に貰えるだけの役=加4符)でした。これを嶺上符と呼びます。現在でも辺張とか嵌張でのアガリは2符加算されますが、それと同じ感覚です。
 そして自摸和も同じ符役(加2符役)でしたから、辺張とか嵌張でツモアガリした場合は2符+2符=4符となります。となれば嶺上開花の場合も4符+2符=6符となるはずです。しかし嶺上開花の4符には自摸の2符も含まれているという考えからなのか、自摸の2符は加算されませんでした。嶺上開花したときは4符取得する代わりに自摸の2符は加算されませんでした。
 やがてこの嶺上符がやがて加十符となり(「麻雀牌譜」1880年頃?)、次に一翻役に昇格しました。加符役の嶺上開花が一翻役に変化したのですから、この時点で嶺上符は消滅しました。ところが、1930年頃、「嶺上開花であっても自摸の2符を認めるべきだ」との声が高くなり、徐々に認められるようになりました。そして現在では認めるルールが圧倒的なのですが、昔の影響でまだ認めていないルールも存在しているのです。

 現在でも九州でのアルシャール系麻雀とか、静岡県の一般リーチ麻雀系の一部で認めないルールが行われていると聞きますが、まだあちこちに残っているのですね。

 なお現在は海底自摸和も一翻役ですが、これも嶺上開花と同様、もともとは加4符役でした。そしてこれも嶺上開花と同じ経過で一翻役に昇格しました。そこで当初は海底自摸和した場合も、自摸の2符は加算されませんでした。いまでは嶺上開花と同様、ほとんどのルールで海底自摸和でも自摸の2符が認められています。しかし、これも昔の影響で認めていないルールもあります。
 


シュール札幌 投稿日:2010/07/14(Wed)

はじめまして、シュール札幌と申します。
いつも楽しく拝見しております。

この度は、ひとつアドバイスをしていただければと思い、書き込みを致します。どうかよろしくお願いします。

私が通っている雀荘のオーナーがルールの勘違いをしているのではないかと思うのですが、オーナーは嶺上開花と面前清自摸和は重複しないと言っているのです。

オーナーの言い分は、嶺上牌はあくまでもカンをした時の補充牌である。そこで嶺上開花での和がりに自摸符がつかない(この雀荘のルールです)。
つまり嶺上牌は純粋な自摸牌ではないので、嶺上牌で和がった場合 嶺上開花ではあるが面前清自摸和ではない。そこで嶺上開花が海底ツモと重複しないように、嶺上開花と面前ツモは重複しないと言うのです。

私はこれを聞いたとき、ほぼ全ての雀荘や団体で重複するのを知っていましたが、「じゃあ理由を言ってみろ」といわれて反論できず、私は、「調べてきます」と言って、いざネットで調べてみても理由はどこにも載っていませんでした。

私が今考えた反論は、暗カンだけの副露なら「面前清」であり、たとえ補充牌の和がりでも「ツモ和がり」として処理されるのですから重複する。

オーナーはこれで納得してくれるでしょうか、もっと確信をつく理由は考えられますでしょうか。どうかご返信をしていただけますでしょうか。よろしくお願い致します。

シュール札幌 投稿日:2010/07/17(Sat)

こんにちは、私の質問に書き足りない事がありますので補足いたします。
オーナーの言い分についてです。
「暗カンをすることにより符が付き、その時点で得点が上がるために、二重に得点が上がることはない」と言っているのです。

私は、面前時に暗カンをした時点で嶺上開花を上がれなくても符の上昇はその後も続きますので<嶺上開花の一度のチャンスとずっと続く符の上昇は関係が無い> 、面前ツモ和と嶺上開花は重複すると思います。

なかしま 投稿日:2010/07/15(Thu)

他家の捨て牌から補充していないから門前が清い

嶺上牌は他家からの補充牌ではない

従って門前清模和は成立する

んじゃないかなぁ?
暗槓は副露じゃないと思うのですよ。
だから、暗槓を含んだ三暗刻、四暗刻が成立するわけで。
副露していないなら、門前清模和でいいですよねー。

あさみ 投稿日:2010/07/19(Mon)

なかしまさん、コメントありがとう

> 暗槓は副露じゃないと思うのですよ。

たしかに暗槓子は通常の意味の副露牌ではないですね。
云うなら隔離された立上牌(リーシャンパイ)という感じ。

あさみ 投稿日:2010/07/17(Sat)

 こんにちわ、シュール札幌さん
 別にオーナーさんに反論してやろうという気はないのですが(^-^;

 まずオーナーさんの主張についてですが、これはまったく根拠のない言い分ではありません。たしかに中国古典麻雀の時代には、嶺上開花自摸和は外形的には両立していませんでした。

 中国古典麻雀の時代には嶺上開花海底自摸和普通の自摸和も一翻役ではなくて符役でした。現在も辺張や嵌張のアガリには2符加算されますが、符役とは、それと同じように符だけが加算されるアガリです。そこで嶺上符を2符とすれば、嶺上開花したときは嶺上符2符+自摸符2符=4符となるわけです。

 しかしなぜか嶺上開花した場合には 嶺上符2符+自摸符2=4ではなく、最初から嶺上符を4符として計算していました。つまり内容的には自摸和の2符を加算しても、取り扱い上 自摸符を加算しない形で処理していたということです。

 これは海底自摸和もまったく同じです。海底自摸和海底符4符のアガリでしたが、この4符には自摸の2符も含んでいました。したがって海底自摸和嶺上開花したとき、海底符・嶺上符のほかに自摸の2符が加算されることはありませんでした。

 海底自摸和嶺上開花のとき 自摸の2符を加算しないで最初から4符と設定した理由はよく分かりません。たぶん現在の小三元の設定と同じ感覚だったのではないかと思います。
 現在 小三元は二翻という設定が一般的ですが、三元牌の二翻が加算されて必ず四翻になります。そこで最初から四翻と設定しているルールがあるわけです(もちろんこの場合、三元牌の二翻は加算しません)。

 それと同じで、海底自摸や嶺上開花は絶対に自摸和です。そこで改めて嶺上符2符+自摸符2=4という計算をしないで、最初から4符として計算していたのではないかと思われます。すなわち嶺上開花海底自摸があったとき、自摸和の2符は外形的には存在していなくても実質的に存在していたわけです。この辺りの経緯については、下記などをご参照ください。

点数論3 第四章 自摸符 http://www9.plala.or.jp/majan/tre12.html
嶺上開花 http://www9.plala.or.jp/majan/han6.html
嶺上開花 http://www9.plala.or.jp/majan/rule2.html

 やがて時代を経るにしたがって、ルールは大きく変化してきました。そして1880年頃から1900年にかけた役の昇格機運にともない、海底自摸嶺上開花・搶槓などが加4符役から加10符役に、さらに一翻役に昇格しました。このアガリ役の昇格にともない、嶺上符や海底符は消滅してしまいました。嶺上符や海底符が消滅したのですから、そこに含まれていた自摸符も当然 消滅しました。

 しかし同時期に符役から一翻役に昇格した自摸和は、ほぼ同時に嶺上開花海底自摸和の一翻との両立が認められました。これは「もともと嶺上開花と海底自摸和には自摸和の得点が含まれていた」という認識からだったのではないかと思います。しかし合体していた嶺上符と海底符が消滅してしまっているので、自摸和の一翻は認められても自摸符の方はしばらく認められない時期がありました。

 しかし昭和初期になると、「自摸和である以上、ツモの2符を認めるべきでないか」という論調がおき、やがて日本では広く認められるようになりました。この辺りの事情は、中村徳三郎「麻雀疑問解答『海底撈月や嶺上開花の時は二符加へるか』」(S3/9/1文芸春秋社)などで述べられています。しかし現在でも嶺上開花や海底自摸については このオーナーさんの店のように、一部に「嶺上開花では自摸符を加算しない」というルールが残っているわけです。

 ルールはそれぞれですので、それはそれで構いません。しかしだからといって それを理由に「門前自摸和と嶺上開花は両立しない」としてしまうのは行き過ぎのように思います。

 それは嶺上開花には自摸符を加算しないという古典ルールを根拠として門前自摸和と嶺上開花は両立しないとするのであれば、同じ状況にある門前自摸和と海底自摸和も両立しないということになってしまうからです。門前自摸和には古典ルールを適用して門前自摸和を加算せず、海底自摸和には古典ルールを適用しないで門前自摸和を加算するというのは、あまり論理的ではないと思います。(^-^;

 またオーナーさんの「暗カンをすることにより符が付き、その時点で得点が上がるために、二重に得点が上がることはない」と云う部分についてですが、これは自摸符 and 門前自摸和の一翻と、嶺上開花 and 海底自摸和の問題とは別に関係はありません。もし嶺上開花のとき自摸符が加算されないのは「暗杠で符が増えるから」というのであれば、これも“暗杠に関係のない海底自摸和のアガリはどうなるのか”という話になってしまいます。

 こう云うとオーナーさんは「海底牌は正規のツモ牌なので門前自摸和と両立する。しかし開杠による嶺上牌は補充牌であって正規のツモ牌ではないので門前自摸和と両立しない」と云われるかも知れません。しかし補充うんぬんというのは、杠の手順を説明するときの便宜上の表現に過ぎません。そういう手順上の表現をルールの根拠とするのもどうかなと思います。

 麻雀のルールは長い間にいろいろ変化して今日に至っています。そのルールの変化は、別にルール的な検証を経て成立してきたものではありません。かなりの部分が、単に“この方が面白いだろう”という感じで変化してきたものです。

 その中には論理的には少しおかしいようなことであっても、“ま、これでいいか”ということで処理されている部分がいろいろあります。もちろん トラブルを避けるためには できるだけ整合性を持ったルールの方が良いに決まっています。しかしあまり細部にこだわると、かえって全体がおかしくなってしまうこともあると思う次第です。(^-^;


シュール札幌 投稿日:2010/07/17(Sat)

こんばんわ。あさみさん、この度は詳しくかつ分かりやすいご説明を頂きまして、誠にありがとうございました。
 ちなみに、私は「反論」という言葉を使用しましたが、オーナーに対して怒っている訳ではないですので、ご安心ください。むしろ、オーナーは非常にいい人で信頼できる人ですから。どうか、皆さんもオーナーに対して不信感を抱かないように深くお願い致します。

 さて、さらにお聞きしたいことがございます。
 私は重複するべきと思いますが、競技麻雀のルールでも嶺上開花での和がりに自摸符をつけない団体がありますが(私はそこにお世話になっています)、その団体でも、面前ツモ和と嶺上開花は重複するのですが、それは何故ですか?

「嶺上牌は純粋なツモではないので2符つかない。補充牌であるからだ」と聞いたことがあるのです。「では、純粋なツモではないなら、面前自摸和はつかないのでは?」と、言われることもあると思うのです。これについて浅見さんはどのように思いますか?

お手数をおかけいたしますが、ご返信して頂ければと思います。


あさみ 投稿日:2010/07/19(Mon)

こんにちわ、シュール札幌さん

>その団体でも、面前ツモ和と嶺上開花は重複するのですが、それは何故ですか?

“それが順当なルールだから”ということと思います。

>「嶺上牌は純粋なツモではないので2符つかない。補充牌であるからだ」と

 いかにも もっともらしい説明なので、そんな説が流布したのだと思います。
 海底自摸和と嶺上開花したときにそれが門前のアガリであれば門前自摸和の一翻が加算されるか否かということと、海底自摸和や嶺上開花したときにツモ符(2符)が加算されるか否かというのは細かくいえば別問題です。

 一般のリーチ麻雀の得点計算は、符計算と翻数計算の2段構造になっています。そして2符つくかつかないかというのは下段の符計算上の問題、門前自摸和の一翻が加算されるか否かというのは上段の翻数計算上の問題だからです。
 したがって壁牌ではなく王牌からのツモに門前自摸和が加算されても何の問題ありませんし、チーポンしてから自摸アガリした場合に、門前自摸和の一翻は加算されなくてもツモの2符は加算されるわけです。

 なお嶺上開花や海底自摸和したとき、現在でも門前自摸和の一翻は加算されてもツモの2符を認めないルールが存在しています(と云ってもσ(-_-)がそういうルールを体験したのはかなり前のことなので、今はどうなっているか分かりませんが)。

 そこで そのときのメンバーに、「海底自摸和したとき、ツモの2符はつく。しかし嶺上開花したときにはつかない」と云うと、おそらく「ナニ ソレ?」って云われます。(^-^;

 いずれにしても嶺上開花と同じくツモの2符が認められなかった海底自摸和にツモの2符が認められるようになったのに、嶺上開花の場合には認めない というルールが存在するのは、そんな“嶺上牌は補充牌だから”という感覚が原因になっていると思われます。

シュール札幌 投稿日:2010/07/19(Mon)

こんばんわ、詳しいご説明をして頂き、誠にありがとうございました。
今回の書き込みをオーナーに見せてみたいと思います。
それでは失礼いたします。

あさみ 投稿日:2010/07/19(Mon)

またいつでも書き込みしてください(^-^)/
別に麻雀のQ&Aではなく、麻雀雑談でもいいですよ(^-^;

我打麻将 投稿日:2010/07/22(Thu)

 初期には槓を含んだ三暗刻が「純粋な自摸のみではなく嶺上牌の助けを借りている」として受け入れられなかった (が、潔癖すぎるとして槓を含んでも認める方が一般に広まった) という話をどこかで読んだ気がするのですが、それと似た構造があるように思えました。
 門前清自摸和に槓の一切を禁じるという場合であるのならば、それでも理由付けは通じそうですね。

あさみ 投稿日:2010/07/23(Fri)

ども、我打麻将さん

>初期には槓を含んだ三暗刻が

 そんなことが書いてあるのは、麻雀祭都しか(^-^;
 ※「麻雀点数論 第4章 自摸符」の注釈コラム。

 http://www9.plala.or.jp/majan/tre12.html

 やはり何かのルールについて論じる場合、その問題だけをポイント的に論じるのではなく、全体的な見地からも考えることが重要と思います。
 たとえば自摸符も小符の1種ですが、小符には このほかペンチャン符 カンチャン符などがあります。現在の日本では8889とか6888でのアガリした場合、ペンチャン符,カンチャン符が加算されます。何の疑問もなく加算されていますが、中国古典麻雀時代には加算されませんでした。

 そういう小符全体 あるいは翻数全体の変遷をみないで ある状況における自摸符、あるいは門前自摸和の問題だけをポイント的に論じると、

>あまり細部にこだわると、かえって全体がおかしくなってしまうことも

 それとσ(-_-)は麻雀は符計算の無い得点算出法に移行してゆくと思ってます。じっさい一般リーチ麻雀でも、符ナシ麻雀が結構行われるようになっています。また算出の方式は大きく異なるとしても、純麻雀や公式中麻でも符計算はありません。そういう観点からは、嶺上開花に自摸の2符が加算すべきか否かということは大きな問題ではないような気がします(^-^;

我打麻将 投稿日:2010/07/24(Sat)

> そんなことが書いてあるのは、麻雀祭都しか (^-^;

 そうです。麻雀祭都のどこだかが思い出せなかったんです (><;)

> 現在の日本では (略) 何の疑問もなく加算されていますが、中国古典麻雀時代には加算されませんでした。

 現在の国標ルールでも、聴牌形に与えられる点数は純粋1門聴の場合だけですね。

> 嶺上開花に自摸の2符が加算されるべきか否かというのは、大きな問題ではない

 そうですね。
 符計算のある現在の日本式にしても10符単位へ切り上げてしまうので、符計算のある現在でも5回に1回 (他の部分の符が10で割って 0, 2, 4, 6, 8 余る場合のうち 0 余る=割り切れている場合) も実際の点数に影響があることはありません (満貫以上になる場合を除くため)。複数の待ちがある場合の聴牌形の2符ですら取り上げられることがほとんどないと思われますのに、まして嶺上開花で2符をつけるかどうかは些末な問題ですね。

 ちなみに私の周りで採用しているルールでは、ルールブックに「和牌の方法は点和と摸和のみを認める。点和には大明槓による搶槓を、摸和には槓の種類によらずすべての嶺上開花を含める」と明記しており、これを根拠に2符や門前清摸和1飜を加算しています。ルールは出来る限りシンプルに、例外のない規定とするのが優れていますね。

あさみ 投稿日:2010/07/25(Sun)

> そうです。麻雀祭都のどこだかが

 σ(-_-)もどこに書いたか思い出せなかったので、検索にかけました(笑)

>ルールは出来る限りシンプルに、例外のない規定とするのが

 もちろん、そういうことです。
 ただ麻雀は野球と同じで、決めておかなければならない事項が多いのも確かです。
 そこで重要となるのが、「ルールの首尾一貫性(例外がない)」ということになりますね。