その他10・期待値


 最近、近代麻雀とか Mahjong Walker とかで、「期待値」の概念を用いて計算しているところがありますが、あれ、数学でいう期待値とマッチしないのが気がかりです。

 ここでいう期待値とは、(E1、E2 は、便宜上つけたラベルです)
E1.各待ち牌に対するアガりの得点の和で定義されています。
例: http://www.mahjong.or.jp/quiz/ans9701.html。
(このページではツモ/ロンも考慮しているようですが)

 これだと、単純に考えて、待ちが10枚でいずれも3900点なら、期待値は3900×10 = 39000点となります。ところが、麻雀のアガり点で期待値を考えるなら、例えば
E2. 各待ち牌に対する(それが来る確率×アガりの得点)の和
とかするのが妥当ではないかと思います。

 この方式では、アガり牌が来る確率を定めるのが非常に厄介ですが、ちょっと強引に、待ち牌10枚のいずれかが来る確率を 0.2 として、いずれも点数が3900点になるなら、期待値は 3900×0.2 = 780点となり、数学らしい期待値だなぁと考えます。

ということで、
期待値 = 各待ち牌に対するアガりの得点の和
という定義はいつどこから発生し、またどのくらい広まっているのかご教示いただけましたら幸いです。

 麻雀は大正末期、日本へ伝来しました。それまで中国で長い間ゲームされていましたが、数学的側面の研究は皆無でした。しかし日本人はこういうことが大好きで、昭和に入ると、統計論や計数論、順列論等々、数理論がぞくぞく発表されました。

 いまそれらの論文をオパラパラッとめくって見ましたが、整数値とか何とか値と言う表現は見つけたのですが、「期待値」という表現は見あたりませんでした(もちろんパラパラと見ただけですから、見落としている可能性はありますが)。

 私が麻雀で期待値という表現を初めて聞いたのは今から30年ほど前です。麻雀の統計上の問題について「ああでもない、こうでもない」と言っていましたら、理系の友人が「それは期待値がああだから、こうだから」といいました。そのとき初めて期待値なる表現を知った次第で...

 で麻雀文献上、現時点で私が「期待値」という表現を確認できるのは、S57年11月、朝日新聞から刊行された「大型コンピュータがはじき出した麻雀の常識を破る本」という書籍の中です。

 「この表で見ると、トイトイの期待値はチートイツより大きいが...」
 「とすると期待値の計算はA*B*Cとなり、ポンの場合は6、チーの場合は
  両面なら8、ペンチャン、カンチャンなら4となる....」

 この文章から見ると、E2の雰囲気のようです。とはいえなにしろ出身が文系(法)なだもんですから、この本にやたらに出てくる「期待値」の意味がE1なのかE2なのかよく分かりません。m(_ _)m

 読者ですが。
 ここで出している期待値は、便宜上ではないんでしょうか?
 全ての牌が等確率で捨てられる場を想定すれば、比は一緒になりますよね? ツモの事を考えれば、全ての牌が等確率で来ますので、待ちの良さを比較する為には、簡単な手段だと思います。

 和がりの点数の期待値を出したいのではなく、「どっちを切った方が確率論的に有利か」という為の数字ではないでしょうか?

 質問者ですが、読者さんのコメントを読んで、あっと気づきました。

>全ての牌が等確率で捨てられる場を想定すれば、比は一緒になりますよね?

 この前提に従うなら(私も従うし、確率論を使ったたいていの麻雀戦術書も従っていると思いますが)、私が書いた E1、E2 って、大小関係を保存するじゃん! 意味はこうです(ちょっと数学的な記述をさせてもらいます)。

 手牌を t としたとき、E1、E2 を用いて求められる期待値をそれぞれ E1(t)、E2(t) と書くと、ふたつの手牌 t1、t2 に対して、
1. E1(t1) > E1(t2) ならば E2(t1) > E2(t2)、
2. E2(t1) > E2(t2) ならば E1(t1) > E1(t2)、
が成立します。理由は残り牌が p 枚なら、その中の1枚が出る確率が1/p になって、E2(t)=E1(t)/p という関係になるからです。)

 ということで、どっちの尺度を使っても、「どれを切るのが確率論的に有利か」の答えは同じになります。

 E1 のメリットは、残り牌の枚数を考慮しなくていいこと、そして計算が楽だ(割り算しないから端数が出ない)ということ、E2 の方は、数学的な意味での期待値を知っていれば親しみやすいこと、ですな。

 んで現実は、誰かが(E2 の、数学的な期待値にとらわれずに) E1 の尺度を用いて計算して、この「期待値」が有名になった、ということですか。そして結局私は、「期待値は 39,000点」に常に違和感を抱いてしまう、と....