雪がしんしんと降る夜じゃった。余はルビンスキー、ハイドリッヒ・ラング、ヨブ・トリューニヒトの3人をノイエサンスーシーに呼び、麻雀を始めた。
しょっぱなのゲーム、驚いたことにハイドリッヒが余の前にサイコロを差し出した。どうやら敬意を表して、「親決めのサイコロをお振りください」というつもりらしい。無礼者め、サイコロなぞ振らなくても、余が起家に決まっておるわ。
モノも云わずにラングにストレートを一発お見舞いしてから、サイコロを振った。もちろんこれは親ではなく、開門箇所を決めるためのものだ。
配牌を見て、余は第1打牌でを切った。すると南家のルビンスキーが、西家のラングは、北家のトリューニヒトはを切った。「ふみ....」と思いながら牌をツモると、であった。
カッとした余は、思いっきり牌を卓に叩きつけた。するとルビンスキー、ラング、トリューニヒトの3人も、それぞれ を卓に叩きつけた。
ふんっ、臣下の分際で、牌がカブッたくらいで牌を叩きつけるとはなにごとか!。思わず顔が怒りで紅潮した。それでも、ここでいつものように卓をひっくり返したのでは、余の手も台無しになる。なにせ余はいい手じゃったのじゃ。そこで我慢、我慢と言い聞かせ、ゲームを続けた。
ところがなんと、余の次のツモは、またしてもであった!。あまりの怒りに目の前が真っ赤になった余は、捨て牌すると同時に南家のルビンスキーを思いっきり殴りつけた。
椅子から転げ落ちたルビンスキーは、真っ赤に腫れあがった頬を左手で押さえながら座り直し、自分の牌をツモッた。そしてをツモ切りすると同時に、西家のラングを殴りつけた。たわけ者めっ、余のように自風を暗刻切りしたならともかく、とになんの関係があるというのか。
しかし誰しも知ってるように、己にやさしく人に厳しくがモットーの余である。他人の痛みなどどうでも良いので、ほっておいた。
ところが殴り倒されたラングのツモ牌が、また。もちろんラングもツモ切りすると同時に、北家のトリューニヒトを殴りつけた。(これはヤバイ)と思った余は、トリューニヒトが起きあがるなり、思いっきりトリューニヒトをけ飛ばした。もしかするとトリューニヒトのツモはまたで、ヘタすると血迷って余を殴りにくると思ったからだ。
案の定、トリューニヒトのツモはであった。しかしパンチとキックでグロッキーのトリューニヒトに反撃する力は残っていなかった。まさに余の先見の明のたまものである。
そんな程度のことでゲームは淡々と進み、13巡め、余はついに聴牌した。リーチしなくても十分な手であったが、彼らに恐怖を味わせるために声高らかにリーチを宣言した。
するとどうしたことか、ロイエンタールやミッターマイヤーならば、これでもか、これでもかと当たりそうな牌を切り出してくるのに、彼らはまるで死んで死んで死にまくっているようではないか。
なんというヘボで無策で無能であることか。あまりにヘタすぎて、「降りるくらいなら麻雀するな」という基本中の基本も知らぬらしい。そこで「放銃しても決して罪には問わぬ。安心して捨てるがよい」とやさしくアドヴァイスした。
そのせいか、ようやく「らしい牌」が捨てられるようになった。しかし一向にアガリ牌は出ず、ついに最後のツモを迎えた。余はもう発狂しそうであった。(もしこのツモでアガらなかったら、3人とも徹底的にぶちのめしてくれる)と固く心に誓いながら、ツモ牌に手を伸ばした。
すると、なんとその牌はまさしくアガリ牌のであった!。
「ツモオオオオオッ!」と高らかに宣言し、手牌を倒した。すると余の手を見た3人は、無礼なことに驚きもせず、異口同音に「なんだ、自分の待ちは純カラか」と云った。
(なにをバカなことを)と思った余は、3人の手を開けさせた。するとたしかに3人とも黙聴でロンできる手で聴牌しており、そのマチは余の手牌で殺されておった。
ふむう....珍しいことがあるものじゃ。そこで余は思いついた。こういう珍しいことは、すぐ帝国中に報道し、広く国民に知らせねばならぬ。ただちにその準備にかかるため、この時点でゲームを終了し、精算することにした。
このため、たまたま余が3コロトップで終了することになったが、もちろんそれは結果論にすぎぬ。
さてそこで問題じゃ。明日になれば詳しいことは報道されるとしても、いち早く余の手と、そしてルビンスキー、ラング、トリューニヒトの手を推理してみるがよい。
なに?、誰じゃ、“これが牌謎か、これじゃあ、おちゃらけじゃないか”などと云うのは?。そちも、ぶん殴ってほしいのか....(by ASAMI)
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