栄枯盛衰は世の常、銀河せましとかけめぐった日も、いまは星々の彼方の出来事。いまは余も、このヴァルハラで平穏な日々をおくっておる。しかしあまりに平穏で、いささか退屈で退屈で....
思えばたとえ星々の彼方の出来事といえど、ゴールデンバット朝の崩壊は、余にとって決して愉快な話ではない。そこでローエングラリ朝の功臣達を軽くヒネってやろうと思いついた。そこで先日、ドーベルシュタイン、ミッターマイナー、ロイエンテールの3人を呼びつけて、麻雀の夕べを催した。
ウン?、まだ星々の大海を駆けめぐっておるミッターマイナーが、どうしてヴァルハラにとな?。なに、別に不思議なことではない。最近ヴァルハラにナインゲーツという人物が参った。この男がここでミクロハードという会社を起こし、「Betujin-028」なるOSを開発した。これがなかなかの代物で、おかげでヴァルハラサーフィン自由自在となったのじゃ。
もっともこの「Betujins-28」、現在のところ、Death環境の元でしか動作しないという。そこで現在の100ヨタバイト程度のメモリでは、生物の直接転送はまだ無理じゃそうじゃ。そのため現世からヴァルハラにサーフィンして来るにはいったん冷凍庫に入り、仮死状態になる必要がある。
もちろんヴァルハラに到着終了したらすぐ解凍するわけじゃが、それがまだけっこう大変らしい。先日ミッタマイナーが参ったときは、全身、凍傷だらけじゃった。さぞかしエヴァ○ゼリンが嘆いたであろう。
余談はさておき、本日もミッタマイナーが参ったので早速、卓を囲んだ。しかしあまりに皇帝風を吹かせてもと思い、本来であれば無条件で起家となる余であったが、謙譲の美徳を発揮して自らラス親を所望しゲームを開始した。
ところが何と、余の下手に座ったロイエンテールは、あのヘテロクロミヤをキラめかせながらチャンタだとかタンピンサンシキだとか多彩なアガリを展開し、対門のミッタマイナヤーは疾風のごとく「ピンフのみ!」、「クイタンのみ」を連発する。
上家のドーベルシュタインに至っては、生きているのか死んでいるのか分からぬ様な捨て牌を続け、余の捨て牌に対して義眼を光らせながら「ロン!」「ロン!」を連発する。無礼者め!、余は犬ではないぞ!
軽くひねる予定が、最後の親を迎えた南の4局、相手3人はそれぞれ約2万点プラスのトップ争い、余はケチョンケチョンのダブ箱という状態であった..
「ウーム、オノレ。現世だけでなく、ヴァルハラにおいてもゴールデンバット朝に仇をなすか」と、さすがに冷静な余もいつもの通りテーブルをひっくり返しそうになった。
しかし、余にも大帝としての矜持がある。グっとこらえて最後の局に入った。するとどうじゃ。やはりオーディンの神は余を見捨てておらなかった!。なんと、その局で余は国士無双をツモアガリしたのじゃぁ。喜びに打ち震えた余は、手牌を倒すとこう叫んだ。
「見たかぁ!、完璧なダブル役満じゃぁ! 32000点持って集合ぅ!」
もちろんドーベルシュタインは例のごとく顔色ひとつ変えず「御意のママに」と32000点を差し出した。しかしロイエンテールは仲の悪いドーベルシュタインを睨みつけ、「たとえ陛下のアガリであっても、どうしてこれがダブル役満になるのか?」とブツブツ。
ロイエンテールめ、こんな簡単な理屈がわからぬのか。彼女イナイ歴3年でモウロクしたな。。。もう少しでロイエンテールの頭上にツール・ハンマーを振り下ろしそうになった。するとおとなしいミッタマイナーが、「陛下の申される事はいつも正しい」と、ロイエンテールをたしなめた。
もちろんその通りじゃ。余の申すことはいつも正しい。ミッタマイナーの指摘でロイエンテールも納得し、余の前には96000点の点棒の山ができた。そこですっかり満足しきった余は新しいルールを提案することにした。
「卿等もさすがにショックでゲームを続ける気力もないであろう。そこで余の慈悲を持って、アガリ止めなるルールを緊急提案するがどうじゃ」
もちろんドーベルシュタインは静かに「御意のママに」と返事いたした。しかしロイエンテールは愕然とした顔をしたあと、「陛下、仰せですがたとえ状況は厳しくとも、万分の一のチャンスがあればこのロイエンテール、多くのフロイラインと鍛えたこの粘り腰をもって最後の奮戦を・・」と申しおった。するとドーベルシュタインがすかさず、「控えられよ、ロイエンテール卿。御前であるぞ」
「なに!」とロイエンテールは気色ばんだが、ミッタマイナーが、「陛下の申される事はいつも正しい」と再度ロイエンテールをたしなめた。そこで無事、その半チャンは終了ということになったが、さすがに余もちょっと気の毒になった。そこで、「卿等の手は、どのようになっておったのか?。参考に見せるが良い」と3人に告げた。
冷静が氷の衣を来ているようなドーベルシュタインであるが、隠し事が大好きであるからさすがに一瞬躊躇しおった。しかしミッタマイナーが疾風のごとく手牌を公開したので、ロイエンテールに続いてしぶしぶ手を公開した。
するとなんと、さすがの余も驚いた!。下家のロイエンテールは万子、対門のミッタマイナーは筒子、上家のドーベルシュタインは索子で、それぞれ純正の九蓮宝灯を聴牌しておるではないか。しかも3人とも振り聴でもなければ、見逃しも一切していないという・・・。
ウーン、余が国士無双をツモアガリできたのは実に運が良かったわけか。しかし胸をなで下ろしながら3人の手を見ていた余は、おかしな事に気がついた。余が国士をツモアガったのはいいとして、彼ら同様、余も振り聴でもなければ、見逃しも一切しておらぬ。ではいったい誰が最後に聴牌したのじゃ?。
ドーベルシュタイン!、また卿が企んだのか?。ロイエンテール、やはり卿か?。ミッタマイナー、まさか卿では....?(by ASAMI)
|