Mahjan talk 雀話

    (57)魚釣りと麻雀


 30年くらい前の麻雀仲間にKさんという人がいた。仕事は薬剤師で大手総合病院に勤務。大きな病院なので、24時間動いている。そこで順番に夜勤がある。夜勤と云っても、ずっと仕事をしているわけではない。緊急事態に備えて宿直室で待機しているだけだ。

 夜になったら仮眠してもいいが、ときによっては内線電話でたたき起こされる。といっても緊急事態などめったにないので、夜はヒマで仕方がない。そこで悪童連(σ(-_-) )がしめし合わせ、3人で雀卓かついで窓から忍び込む....もちろん窓の鍵は、中からKさんが解除してある。

 ときには熱戦の最中、リ〜ンと内線が鳴る。するとKさん、「シー」っと指を口に当て、内線に出る。こちらも首をすくめて、小さくなる....(-_-; やがて「はい、分かりました」と返事してKさんは薬剤室に消えてゆく。戻ってきたらゲーム再開だ(もう時効だかんね)。そんなKさんのもう一つの趣味が魚釣り。シーズンになると乗合船を予約して、よく出かけていた。

 そんな或る日、いつものメンバーで麻雀してるとき、誰かが「うちらも海釣りをやってみたいな」と言い出した(誰が言い出したかはかは忘れた)。するとKさんも「いいよ、いつか一緒に行こう」 そういう話はすぐまとまるもので、某月某日、Kさんをリーダーに4人で出かけることになった。

 ところが出発の時間が、午前5時。遅くとも5時に集合するためには、みんな家を4時くらいに出なければならない。これは大変だろうというので、Nさんのマンションでテツマンすることにした。魚釣りと麻雀が一度に出来る、一石二鳥の大名案。

 前日の午後8時頃、Kさんの指示で準備万端整えたメンバーがマンションに集合した。準備万端といっても釣り道具などはレンタル。せいぜい服装とか、弁当とか、そんな感じだ。

 鯛を釣るとか鯉を釣るとかヨタをいいながらの楽しい麻雀。午前2時ころ、何回めかのゲームが南場に入った頃、Kさんが「5千点棒が1本無い」といいだした。「えっ、なんのこと?」というと、「大きな手に放銃した記憶もないのに○○点しかない」という。

 「へぇ〜」とは返事したが、なんせヘボがヨタを云いながらの麻雀。なにがどうであったか、経過なんざ覚えちゃいない。それでもいちおう互いの持ち点を調べてみた。すると点棒の数はピッタリあってる。しかし I さんが、「云われてみれば、自分の点棒がなんとなく多いようだ」という。するとKさん、「それは俺のだ

 どうやらどこかで渡し間違いがあったらしい。しかし「俺のだ」と云われてもちと困る... I さんも「間違いなら返してもいい」とはいうものの、そんなこと誰も覚えているわけない。そこでσ(-_-)が、「間違いがあった可能性が強いけれど、いまさらなんともしょうがない。このゲームはこのまま進行するしかない」と云った。もう一人のNさんは、我関せずと云う感じ。

 「現状進行」ではKさんは大いに不満の感じであったが、結局それでゲームを再開した。それ以後なにごともなく、その半荘は終了した。得点を記録して、さあ、次のゲーム。ところが、互いの点棒をそろえ始める段になったら、急にKさんが俺、もう帰る」と言い出した。

 「は?」と聞き返すと、「うん、もう眠いから帰る」といって席を起ってしまった。残った3人は呆然....何もすることがないので、その場でゴロ寝した....

 やはりそんなことがあると少々きまずい。しばらくは同じメンツで麻雀をすることもなくなった。そうこうするうちに I さん方で不幸があった。少々気まずいことがあってもこれは別問題。ただちに連絡をとり、Kさんも顔を出した。それがきっかけでまた話をするようになり、4人はいまでも仲良くおつきあいをしている。(^-^)V

PS:あれから30年経つた、いまだに釣りは行かずじまい(笑)

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