Mahjan talk 雀話

    (56)ミミに点棒


 先般、パンチラ写真を盗撮しようとして捕まったバラエティタレントがいた。記者会見で「“ミミにタコ”をもじって、“ミニにタコ”というストーリービデオを作ろうとして、うんぬん」とワケの分からないことを云っていた。

 学生時代の麻雀仲間に橋場(仮名)という同級生がいた。大学を卒業して30年以上経った現在でもつきあいのあるポン友である。学生時代の常宿というかゆきつけの雀荘は、水道橋にあったアイウエオという変な名前の雀荘。

 橋場たちといつもそこでゲームしていたわけだが、この橋場には、変わったクセがあった。それは点棒を数え終わって、さあゲーム開始というとき、小連隊(5千点棒)を耳に挟むということ。それが不思議なことに大連隊ではなく必ず小連隊。

 どうしてそんな事をするのか聞いたこともなかったが、たぶん“こいつだけは死守するぞ”というようなつもりだったんだろう。また最後に点棒計算したとき、誰かが「じゃ、俺がトップだな」なんて云うと、橋場は耳から小連隊を取り出して、「まだここに5千点あるじゃ〜ん」といって、相手をギャフンとさせるなんてこともあった。といっても(相変わらず、やってるな)と思うだけで、別に“かっこいい”なんて思ったことはなかった。

 そんな或る日、橋場がいないメンバーでゲームを開始するとき、ふとそれを思い出した。(一度、マネしてみるか)というので、5千点棒を小耳に挟んだ。しかし普段やらないことをやったせいで、挟み終わって牌に手を伸ばしたとたん忘れてしまった...

 そのままゲームは進み、オーラス近くになって箱をみると、たしか浮いている筈なのに沈んでる。(あれぇ?)と思ったが、無いものはない....(-_-)、そのままゲームは終了。釈然としないまま、精算が終わった。

 ところが次のゲームのため点棒をそろえ始めると、5千点棒が1本足りない(あたりまえだ...)。「どこだ、どこだ」という声のなか、「どうも変だと思っていたが、やっぱり俺の点棒が最初っから少なかったんだよ」と云ってみたが、相手にもされない。

 とにかく1本足して次のゲーム開始。開始してまもなく、何気なく耳に手をやると、変な感触。(おろっ?)と思って見てみると、当然ながら5千点棒。「おい、ここにあったよ。やっぱり俺の点棒だった」と云ってみたが、「アホだな、お前は」とバカにされただけで終わった....

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