Mahjan talk 雀話

    (46)生ぬる餃子


 大学時代、M山という同級生がいた。静岡県N市の餃子専門店の息子だった。彼も麻雀が好きだったが、腕がいまいち。負け続けるので、借金がたまる一方。あるときH場が、「お前はもう、雀荘に立入禁止」と言ったら、「じゃあ、座って入ってくるよ」と云った。そのM山が、大学近くの喫茶店のウエイトレスに一目惚れした。

 うん、たしかにグラマーでかわいい子だった。しかしσ(-_-)たちは、「やめとけ、やめとけ」とアドヴァイスしていた。彼女が悪い子だったからではない。その喫茶店に通ってくるお客はみんな彼女が目当て。そん中にはうちらの先輩もいた。おとなしいM山が太刀打ちできるわけはない。それでもM山は一所懸命だった。

 そうこうするうち、M山から「彼女が麻雀をやりたいと言っている。つきあってくれ」という話があった。要は彼女と一緒にいる時間を作り出すのにつきあってくれという話。もちろんノーレート。「ああ、いいよ」というので、某日、H場と一緒に洗足池のM山の下宿へ行った。

 彼女、M山、H場、σ(-_-)の4人で昼間っから麻雀をした。夕方になって、あぁ疲れた疲れた、というので一服した。そして蜜柑をかじりながら、「ぼちぼち腹が減ったな。メシでも食いに行くか」と話していると、彼女が「わたし、餃子を食べたくなっちゃった」。それを聞いたM山、「じゃ、俺、買ってくるよ」と言って外へ出ていった。

 ところがそれから、待てど暮らせど帰ってこない。やがて2時間たち、3時間たち....最初は「遅いなぁ」とか「どうしたんだろ....」なんて言っていたが、そのうち、「あのアホ、どこへ行きさらんしたんじゃ」とか、「おい、○子、はっきり引導渡してやった方がM山のためだぞ」と言う話になった。

 すると彼女、「私もおつきあいする気はない、と言ったんだけど」、というから、「そんな程度じゃダメだ。もっとガツ〜ンと言ってやらにゃあ」などと、もうボロクソ。しかしあまりにも帰ってこないし、4時間ほども経ったので、もう解散しようということになった。そして腰を上げかけたところにM山が「ただいま〜

 「お前、どこへ行っとったんじゃ」というと、「餃子、持ってきた」。話を聞くと、彼女においしい餃子を食べさせたくて、静岡県の実家まで行ってきたという。(゚0゚) 驚くやらあきれるやらしながら、座り直して包みを開けた。すると、もう出来てから2時間ほど経っている生ぬる餃子が山盛り出てきた。(-_-)

 名物の餃子らしかったが、腹が立っているのと生ぬる状態なので、あまり食欲が湧いてこない。それでもかわいそうに思っってみんなで一つ二つ口をつけた。結局、山盛り餃子を残したまま解散した。その後、M山と彼女はどうなったかって? もちろん振られたわさ。。。。

PS:振られたには違いないが、実は後日談がある。このあと彼女はその喫茶店を辞めて、別の喫茶店に移った。しかしM山は元の喫茶店の同僚から「小岩にいる」とだけ聞き出した。

 そして夏の猛暑のまっさかり、毎日、小岩中の喫茶店を訪ね歩き、ついに見つけ出した。これじゃあ、今でいう完璧なストーカー。しかしその話を聞いた時には、さすがにそのエネルギーに驚いた。

 もちろん今度は、その喫茶店に毎日通う。お客として静かにコーヒーを飲んでいるだけだから、喫茶店にしてみればお客さん。彼女としても文句も言えない。しかしこれじゃぁたまらんと彼女はまた雲隠れ。さすがのM山も、今度は手がかり無しでギブアップ。

 その後のことは知らないし、卒業以来、M山とも会っていない。いま頃どうしてるだろなぁ。。。

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