Mahjan talk 雀話

    (42)おい、9段9段


 囲碁・将棋・麻雀という。とはいえ社会的ステータスとしては、囲碁=将棋>麻雀という感じ。なら麻雀はどれくらいの社会的立場かといえば、まぁ、競輪・競馬と同じくらいの雰囲気。3つ併せりゃ麻輪馬(まりんば)だ。そんな社会的イメージを象徴するような思い出話。。。

 社会人のサークルにL クラブというのがある。ある地区のL クラブが、麻雀大会を開くことになった。開催場所として、あるホテルの大広間を借り切った。けっこう大勢の参加者があり、麻雀卓も40卓ほど用意しなければならない。

 幹事の○○氏は某麻雀団体に縁があった。この団体は、大きな大会をたびたび開催していたので、麻雀卓もたくさん備えていた。そこで○○氏から、40卓の貸し出しと当日のサポート依頼があった。

 縁ある人からの依頼ということで、会長が二つ返事でOK。そしてサポート陣として4人が指名された。当時σ(-_-)もこの団体に所属していた。そこで4人のうちの1人として指名があった。

 倉庫からホテルの会場までの搬送、設置。もちろん基本的には業者がやってくれるのだが、全部おまかせで知らぬ顔をしているわけにはゆかない。前日はドタンバタンと結構大変だった。

 正直言ってσ(-_-)なんかはペエペエだから、どう使われたって仕方がない。しかしあとの3人は、そもそもは当日のルール説明要員として指名を受けた高段者。肉体労働のサポーターとして指名されたわけではない。それでも設置しないことには話にならないので、みんなそれなりに大わらわ。

 当日、指定時間に会場にゆくと、すでに参加者の熱気でむんむん。やがて開始時間になって、まずは幹事の挨拶。それに続いて幹事から、我々の紹介があった。

え〜、本日は○X連盟より、4人の方にお越し頂いています。右からH9段、H8段、N7段、そしてぱしりの浅見さんです。ルールなどで分からないことがありましたら、手をあげてください。誰かがその席へ向かいます

 やがて熱戦が始まり、それにしたがってあちこちで手が上がる(うちの団体のルールでゲームしたので、それなりに質問があった)。1回戦はそんなんであったが、2回戦、3回戦となると質問も少なくなる。それと前回の記録を集計しなければならないので、4人は会場係りと集計係りに分かれて大忙し。

 で、3回戦の途中、σ(-_-)が電卓片手に集計作業をしていると、H9段がプリプリしながら控え室に入ってきた。

どうしました?」と聞くと、
「いま或る卓で手が上がった。質問かと思ってその卓へいった。するとなんて云ったと思う」
さあ。。。。
「『おい、9段9段、タバコが切れた。ちょっとロビーで買ってきてくれ』だと....」
「・・・・」

 そりゃHさんがプリプリするのも無理はない。いくらなんでもちと失礼。いや、別に段位に敬意を払わないから、と云うわけではない。それどころか麻雀における段位制は、囲碁将棋との比較やゲームの質として、誤解されやすいシステムと思っている。

 このあたりの問題は本題からはずれるので別の機会に譲るとして、少なくとも今回の大会に関しては、誰が何段ということに関係なく、我々はルール指導員。世話係りではあってもお茶汲み要員ではない。さすがに「おい、9段9段。タバコが切れた」は失礼である。(ま、しかし、世の中にはいろんな人がいる)、と思いながら作業を続けた。

 やがてすべてのゲームが終わり、参加者は立食パーティへ。こっちも腹は減ったが、パーティーの間にすべての結果を出さなければならない。食事どころではなく集計作業に没頭した。ほどなく集計は終わったが、今度は卓上で散らかり放題になっている点棒や牌の整理で大忙し....

 パーティ会場では、食事のあとに楽しい楽しい表彰式。和気藹々のうちにすべてが終了して参加者は散会した。やがて空き腹を抱えながら後片づけをしていた我々に、幹事の○○氏からパーティ会場のほうに来てほしいと連絡があった。出向くと「本日はご苦労様でした。おかげさまで大会も無事終了できました」と丁重なご挨拶。

 「いえいえ、どういたしまして」とこちらも型通りの返事。そこまでは良かったが、続いて「それではみなさんもお腹が空いてみえると思います。どうぞ心ゆくまでお召し上がりください」と、会場の中ほどを示された。ン?と思って振り返ると、ガラ〜ンとした会場の中央テーブルに、参加者が食べ散らかした残飯の....

 それまで溜まりに溜まっていたこともあり、この一瞬で全員がプッツン。大人だから口には何も出さなかったが、モノも云わずに全員、パーティ会場を後にした。う〜ん、どうもあんまりいい思い出ではない。

 囲碁・将棋なら、アマの5段、6段でも人の見る目は全然違う。プロ初段ともなれば、アマの世界では大先生だ。麻雀とのそんな違いは百も承知の二百も合点。でもでも....分かっていても、ちと残念。

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