15年くらい前、日々野君(仮名)という30才の営業マンとつきあいがあった。麻雀が大好きで、営業担当であるのを良いことに、外回りの途中でみつけたフリー雀荘に飛び込んでは麻雀してた。
そんなある日、例によって名古屋の某所にある楊貴荘という雀荘に飛び込んだ。麻雀をやりたい一心で飛び込んだが、じつは千円しかもってなかったという。
本人は(勝てばいい)と思っていたそうだが、世の中、そんなに甘くない。最初のゲームの東場で大きくマイナス。(困ったなぁ、どうしよう....)と思っていたら、外からなにやらサイレンの音が。
そこでとっさに「あ、パトカーだ。オレ、変なところに駐車してあるから動かしてくる」と云って返事も待たずに店を飛び出し、そのままトンズラしたという。
日々野君は知らないことだが、実は楊貴荘のオーナーはσ(-_-)の知り合い。しかし友達というレベルの知り合いではない。ふんづかまったりした挙げ句、σ(-_-)の名前が出たりしたらどうしてくれると思った。(~0~)
そんな無茶をやる日々野君であるが、感じのいい好青年。そこで少しでも役にたてばと思って、サイコロの振り方や洗牌法など、一通りのことを教えてあげた。そしたらおおいに喜び、雀荘通いにますます熱が入った。
そんなある日、喫茶店であったら、「浅見さん、この前、こんな事がありました」と話をはじめた。なにかと思ったら、名古屋の某所にあるNクラブという雀荘で競技麻雀の参加者を募集していると聞いて出かけたという。
(むにゅう、それもσ(-_-)の知り合いじゃん....そんなとこで、また何かしでかしたのか)と思いながら聞いていると、
「Kさんという人から“初めてですか?”と聞かれたので“はい”と答えると、“それじゃあ、ルールの説明しがてら打ちましょう”と云う事になりました」
「うん」
「そいで洗牌が終わってサイコロを1回振ったら、Kさんが手をとめて、“日々野さんは、どなたかのお弟子さんですか?”と聞かれたんです」
「ふん」
「そいでとっさに“浅見さんという人です”と答えたら、“あ、なるほど。道理で”と云われました」
「ふん」
「そんなこと聞かれると思わなかったのでなんだかドギマギしてしまったけど、ちょっと嬉しかった」
「雀荘から逃げ出した話じゃなかったから、こっちも安心したよ」(^-^;
その日々野君が、あるとき「麻雀プロになりたい」と言い出した。
「え〜、どうしてそんなことを....」と聞くと、
「だって自分は麻雀強いから....」(゚0゚)
「う〜ん....でもそんなこと考えないほうがいいと思うな....」
「でも東京へ行って、ぜひともプロになりたい」
そこで「日々野君は、私とどっちが麻雀、強いと思う?」と聞いた。すると
「そりゃあ、浅見さんの方が....」
「そうか。でもσ(-_-)は、とてもプロという腕だとは思ってない。そのσ(-_-)よりヘタだというなら、とてもプロなんて無理だと思わないか?」
「・・・・」
「ほいじゃあ、仮に日々野君がσ(-_-)よりずっと強いとしよう」
「はいっ」
「でもプロと云うなら強くて当たり前だろ」
「はい」
「いま日々野君が、誰からもすごいと云われるレベルならともかく、σ(-_-)より強い程度では、プロ団体に入ることが出来たとしてもその他大勢だよ」
「・・・・」
「その中で注目を浴びようとすれば、他の人にはない何かを日々野君が持っていなければいけないと思うが」
「そうですね」
「で、日々野君には、なにがある?」
「・・・・」
てなやり取りがあって、結局プロ転向は止めることになった。いまも普通の会社員の日々野君だが、きっと正解だったと思うじょ。
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