My battle 七聴八闘


    (1)「上石神井決戦 1」(by 財○ 宏)


月例会後、「オープン卓予約、K場さん、H和さん、財前、あとひとり〜
  ・・・こう呼びかけたのはいつの日のことだったか。

 会議室での麻雀の強さに関する議論が平行線で、徒労を感じていたからかもしれない。そしてK場さんの月例参加発言を受けてその気になった。そこへ別人さんが手をあげたことで、風雲急を告げることになる。

「フェアリールールでいいですか?」(K場さん)
「絶対だめです」(H和さん)
「四の五の言わずに、とにかく座っち!」(別人さん)がトドメだった。

 麻雀に人生の「何か」を賭けている3人にとってK場さんとの対戦は、絶対に負けられない勝負である。K場理論=K場さん本人ではないのは明らかだが、結果に言い訳はできない。6回戦とはいえ、万が一、K場さんがトータルでトップにでもなれば、「やはり、麻雀に上級者はいません。言ってみれば、みんな上級者なのです。麻雀は運です。それがわかったことは不幸なことではなく、麻雀の未来にとって喜ばしいことなのです」と言われるくらいのことは想像に難くない。

 麻雀は、弱い人がラスを引くゲームとはいえない。むしろ、直接対決で負けた人がラスになる公算が大きい。K場さんが勝つことはないとしても、3人のうちの誰かが負ける。実力通りならば、指定席にはわたしが座るのだ(-.-;

 「真剣勝負だ」と吼えまくった。もう遅い。かZさんの「とうとう言っちゃった。骨は拾ってやるか」という発言を某所で読んで、さすがに覚悟した。誰でも負けることはあるだろう。けれどこの対局で負けた人間は、K場さん以外、身の置き場がない。それこそが、真剣勝負の意味である。

 麻雀の実力はベールに包まれていて、短期戦の結果ではわかりにくい。実際、ツイていれば初心者でも勝てるのが麻雀であるとも言える。しかし同じ面子で真剣に打ち続けると、結果によらず実力差を感じるものである。
 「格」の違いと言うべきもの。長期戦のデータに現れる実力差を数回で見抜くもの。
 遊びの麻雀では感じない、真剣勝負特有の「心の揺れによる判断ミス」の自覚症状と言えるだろうか。

 日程が決まった。1か月の猶予。とにかく情報を集める。
 H和さんが強いことは周知の事実。大人の麻雀にどっぷり浸かっているから、本番でビビるような人ではない。聴牌が早く、リーチを好み、打ち方はオーソドックス。徹底的な攻撃型。「彼の選択肢は、強気と超強気しかない」と専らの噂。「イケてないとき、雑になるからそれほど恐くない」という情報も入手。

 別人さんは知る人ぞ知る強者。RT麻雀の飛び抜けた成績は尋常ではない。RT麻雀において一番強い人を選ぶことが許されるならばわたしは別人さんを推す。梅田さんの破壊力、枯れ葉さんの切れ味、キヨトさんの自在さ、いずれも際立つ技量だが、隙がなく懐が広いという点で右に出る者はいない。

 独創的な手作りとともに迎撃七対子の名手でもある。幾分、面前手役指向で、2副露するとか安手の先制リーチ風味は好まないようだ。もちろん戦略ミスや手順ミスをするレベルではないから、手なりの早い3門張リーチもあるし、あがり点に制限が付いてくる南場、値段の都合で2副露する場面はあるが、どちらかと言うと中盤でのダマ聴に凄みがあり、振り込んだ相手の心にダメージを蓄積させていくダイオキシンの恐ろしさ。

 K場さんはあまり麻雀をしないようで情報は少なかった。ゲーム関係者からは「研究家であって、プレイヤーとしては一流とはいいにくい」、「いわゆる博才はない」と聞いた。

 直前の月例会に参加したことで、同卓した人や観戦した人からの貴重な情報あり。
「リーチにはベタオリしていた」、「リーチがない終盤、合わせ打ちをせず、無筋を平気で通していた」  とはいえ、トータルでプラスしていたことは特筆すべきである。

 さて、戦略を練る。
 トップで終わることが理想だが、少なくともK場さんより上であること。
 K場さんの月例会での打ち方はみずからの唱えるK場理論とほど遠いという話。しかしK場理論で打ったとしてもガードが甘いはず。かえって楽だろう。

 まずいのは逆に自分以外の混一色や対々和をアシストする場合だ。いずれにせよ聴牌の早さと、どの程度理論通りに打つのかがわからなければ何とも言えない。ただ麻雀についての言及や次の一手の回答を見る限り、彼との直接対決なら勝算あり。

 問題は実力上位のH和さんと別人さんへの対策である。多分リーチで局面をリードしていく役はH和さんが買って出るであろう。そのなかで前半の1、2回戦は様子見。K場さんの力量を測り、別人さんの出方を窺おう。

 別人さんは、H和さんに照準を合わせてくるはず。おそらく草Bさんは眼中無しであろう。H和さんをリーチで局面をリードする攻めの麻雀とすれば、別人さんはゲームを支配するタイプ。受け崩し。H和さんの隙を突く返し技でくるのではないか。

 わたしにとって有利な展開があるとすれば、緒戦必勝。お互いの力量が明らかになる3回戦あたりからの別人さんのダマ聴ボディーブローがH和さんに決まれば面白い。

 前半でポイントを稼ぎ、H和さんが脱落して別人さんとの勝負になったら、リーチで行く。中盤以降にもつれ込んだダマ聴勝負では勝ち目はない。リード分を保険として天運に賭けよう。

 結局、勝機があるとすれば、
(1)前半戦、特に緒戦に勝つこと
(2)H和さん退治は別人さんに任せ、弱ってきてから、わたしも退治に参加する。
(3)H和さんと別人さんのバトルの間隙を縫って、トップを横取りする。
(4)相手が別人さんだけとなったら、先制リーチで天運勝負。

 決戦の日まで後一週間になった。
 気分を変えようと関西月例会に。梅田さんにお会いした。RT麻雀の強者で、毎日教えてもらっていたから、初対面という感じがしない。

 梅田さんの麻雀は大好きである。見切りがシャープだ。トップ狙いでなく、マルエー狙いのブー麻雀の色が強く、降りればトップでもさらに加点を目指す豪腕の持ち主。RTでもそうだが、昼間から酔っぱらっている。(^^;

 ○子姉さんも酔っぱらっている。酔っぱらいは見ていて楽しい。けれど長生きできないだろうなぁ。。。。
 ○子姉さんが赤ら顔で、「あら、こんな素敵なのツモっちゃったわ」と嬉しそうにリーチ棒を出しているのが見ていて楽しかった。
 鴨○亭ではサンマなど。京○さんを拝んで、本番でドラがたくさん乗るおまじない。

 いよいよ2日後に迫った。かZさんから自動麻雀卓をお借りして、K場邸に搬入の帰り、いの○し邸で麻雀を打っている。「いまさら、どうにもなるものではない」とぼんやりと考える。

 いの○しさんは、実に小気味のいい麻雀打ちだ。平日は毎日フリーへ通い、週末は仲間を集めて自宅の麻雀専用ルームで徹夜麻雀を楽しむ入れ込みよう。ほとんど降りない攻撃麻雀で、読みは的確。ここに集まる面子では一格上だろう。F麻の強い面子と囲むのを見たい。前日夕方に帰宅。

 当日。草B邸12時対局開始だが、11時から訪問可とのこと。観戦者もいるようだ。

 午前11時。石神井公園駅から歩いてK場邸を確認後、途中にあった喫茶店に引き返す。
 夕べから食事を摂っていない。仕事でも勝負のときは、胃を空にする習慣がある。緊張していれば腹は空かない。不思議なもので、胃の負担をなくすと臭いや気配に非常に敏感になる。アップルパイとカプチーノを頼んで、煙草を取り出す。こういうときの一服は何物にも代え難い。

 すぐにK場邸に行かなかったのは、親睦麻雀風味にしたくなかったからである。観戦者が来ていれば、K場さんはゲーム命だから、みんなでワイワイ、ボードゲームをしているだろう。その中に混じって嬌声をあげて楽しむと、K場さんはリラックスする。真剣勝負の雰囲気がなくなれば、お笑い対局となりかねない。

 わたしたち3人は、K場さんに「K場理論で真剣に打ってください」と伝えてある。その真剣の雰囲気が無くなるのが怖い。リーチがかかる。全ツッパ。「結構、当たらないものですねぇ」、「当たっちゃった。満貫ですかぁ。まいったな〜、あはは」
 勝つためのK場理論なら文句はないが、お笑い対局では堪らない。

 11時40分。K場邸へ。予想以上の観戦者。Nーださん、Bーたさん、Bーたさんの弟子の方、K場理論をまとめて論文として発表したN雲さんも来ている。対局者はわたしだけ。むむむ。べーTさんは超饒舌だ。

 N雲さんがプロ麻雀誌に掲載された「井手プロ vs K場 &N雲議論」の記事を見せてくれる。k場さんからは、早速、ゲームのお誘い。目の前に雀卓がある。折角4人が揃っているのに、麻雀は打っていなかったようだ。何故か寂しい。

 開始時刻直前。ほとんど同時にH和さんと、メガラックスの相棒、M○Nさん、別人さんが来る。別人さんとは初対面。う〜む、脂ぎった方(E場さんと好対照だ)プロ麻雀誌に麻雀の研究論文が掲載された頃には別人さんの名前を知っていた。

 世の中には、こんな凄い人がいるんだなと思った記憶がある。RTではまだ実感はなかったが、対局者としてお会いできる日が来るとは。感慨無量。H和さんはいつものような笑顔。目が笑っていないのが印象的だ。

 対局開始。NーださんとM○Nさんは快く採譜を引き受けてくれた。
 いよいよ、この時が来た。配牌を取る。
 K場さんがどう打つか・・・・。

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