Laboratory 研究室


    (1)海野十三


 戦前、海野十三という冒険小説作家がいた。「爬虫館事件」とか「地球発狂事件」などの作品がある著名な作家で麻雀も大好きであった。好きがこうじて「麻雀の遊び方(S5:博文館\60銭)」という入門書まで書いている。実はこの人、「麻雀は運が十」という考えの持ち主であった。そこでペンネームも「運が十さ」をもじって「海野十三(うんのじゅうさ)」としたと伝えられている。

 言うまでもなく、麻雀は偶然性に左右される部分があるゲーム。この偶然性の部分を俗に「運(ツキ)」と呼び、技量の部分を「腕」と呼んでいる。しかし運だツキだと言っても、実際は偶然性の偏りが昇華されるに十分なゲーム数が行われれば、プレイヤーによって運のせいには出来ないレベルの成績差が表れる。

 もちろん運のせいには出来ないレベルという以上、もう一度、同程度のゲーム数をこなした場合、アバウトであっても前回と似たよう成績差を示すことが可能である。
 この事実によって麻雀が「運十腕0」のゲームではない事はみんな理解している。しかしその割合は判然とはしていない。そこで昔から「運5腕5」とか「運6腕4」とかいろいろな主張がなされている。

 では実際のところ、この運と腕はどれくらいの割合なのか。もとより偶然度や運を数字で表すなどというのは困難な話。その困難な話しに鶴亀算もあやふやな私がチャレンジしてみた・・・・

 まず海野先生の言う通り、麻雀を偶然度100%:技量度0%のゲームだと仮定する。するとプラスで終了するかマイナスで終了するかは5分5分の確率。つまりプレーヤーの実力に関係なく、運の偏りを消化するだけの十分なゲーム数をこなした段階では、全員がイーブン=+−50%の成績となる。これをプラス率のみで表現すると、最強のプレーヤーも最弱のプレーヤーもプラス率は50%程度と言う事になる。

   偶然度 : 技量度 プラス率 マイナス率
 (A) 100%: 0% → 50% : 50%(最強のプレーヤー)
     100%: 0% → 50% : 50%(最弱のプレーヤー)


※偶然度100%のゲームであっても、数学上というか現実上も、最強のプレーヤー・最弱のプレーヤーも、ともにイーブン=+−50%の成績となる事はない。ま、しかしこれは麻雀談義だかんね。そういう堅苦しいことは考えない事にする。(^0^;

 逆に麻雀が偶然度0%:技量度100%のゲームとすれば、最強のプレーヤーは100%、最弱のプレーヤーは0%のプラス率となる筈。

   偶然度 : 技量度 プラス率 マイナス率
 (B) 0% :100% → 100% : 0%(最強のプレーヤー)
    0% :100% → 0% :100%(最弱のプレーヤー)


 そして(A)(B)の中間で偶然度50%、技量度50%とすれば、プラスマイナスの比率もその中間値となる。すると最強のプレーヤーは75%、最弱のプレーヤーは25%のプラス率となる筈。

   偶然度: 技量度 プラス率 マイナス率
 (C) 50%: 50% → 75% : 25%(最強のプレーヤー)
     50%: 50% → 25% : 75%(最弱のプレーヤー)


 しかし現在まで、パソコンの通信対局を始め、さまざまなところで行われた千ゲーム以上の長期記録の結果では、最強のプレーヤーでプラス率の上限は63%前後、最弱のプレーヤーでプラス率の下限37%前後という数値が出ているそうな。これはすなわち偶然度が50%以上、技量度は50%以下であることを示している。つまりこの偶然度50%:技量度50%という比率は適切な数字ではないことになる。

 そこで仮に偶然度と技量度の比率を(A)と(C)の中間値である75:25としてみると、プラスマイナスの比率は下記のようになる。

   偶然度: 技量度  プラス率 マイナス率
(D) 75%: 25% → 62.5% : 37.5%(最強のプレーヤー)
   75%: 25% → 37.5% : 62.5%(最弱のプレーヤー)


 このプラスマイナスの比率は現実の数値にほぼ近い。するとどうやら麻雀は「偶然性(運)75%、技量(腕)25%のゲーム」という事になる。

 しかし考えてみると、パソコンなどの通信対局は我々アマチュアの集まりであって、プロ=最強のプレーヤーが参加しているわけではない。すなわちプラス率の上限アヴェレージ62.5%というのは、あくまでアマチュア対局の結果によるデータというわけだ。そこでデータが無い以上はっきりしないのであるが、最強のプレーヤーがアマチュアを相手にした場合、プラス率65%のアヴェレージを上げうるかも知れない。

 さて(C)の偶然度50%=プラス率75%が、(D)の偶然度75%=プラス率62.5%となるとすれば、大ざっぱにいって偶然度5%ほどの増減はプラス率の2.5%ほどの増減となって表れる感じである。

  25%÷5%=5   (75%−62.5%)÷5=2.5%

 そこで仮に最強のプレーヤー(プロ)であれば、アマチュアレベルの上限値であるプラス率62.5%アヴェレージを2.5%ほど上回る65%という数値をキープできるとすれば、技量度も5%ほどアップする事になり、その結果は次のようになる。

 プラス率 マイナス率           偶然度 : 技量度
 (E) 65% : 35%(最強のプレーヤー) → 70% : 30%


 ということで結論。 「麻雀は運7腕3のゲームである」

 う〜ん、かなり強引に、この結論に持っていったような気がする(笑)

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