(40)はがひたひ
一月ほど前から奥歯が痛くなった。ジンジンと毎日痛む。しかしちと忙しかったのと歯医者が恐ろしかったので我慢してた。とうとう我慢できなくなって1週間ほど前、歯医者に駆け込んだ。
見たとたん、
「う〜ん、どうしてこんなになるまで放っといたんですか。もう抜くより仕方がないですよ」
「・・・・」
「今日はとりあえず応急処置をしておきますから、1週間したらお越しください。」
昨日、屠殺場に引かれる牛の思いで歯医者に出頭した。大きく口を開けると、
「ではちょっとチクッとしますから、我慢してくださいね。」
娘より遙かに若い看護婦が、
「は〜い、すぐ済みますからね〜 ハート」
チクッチクッと2,3回やられて、5分ほど麻酔が回るまで待つ。
「では、抜きましょう」というので口を開ける。歯医者がペンチかなにかで虫歯をつかんで揺する。思わず
「ひてててて....」
「あ、まだ痛いですか、やはり奥歯ですからね〜。ではもう一回麻酔しましょう」
またチクッチクッとやられて5分ほど待つ。
「さ、今度はどうかな?」と、またペンチで歯がつかまれ揺すられる。
「ひてててて....」
「あ、まだ痛いですか?。おかしいなぁ」
(ふんな事言われたって、痛いものは痛いじょ)
「ではこっち側に引っ張たらどうですか?」と、歯が反対側にひっぱられる。
「ふがふが、はひはひ」
(そっち側へなら前ほど痛くないが少しは痛い)と言いたいが、口を開けて抑えつけられているのでしゃべれない。
「そうですか、そんなに痛いですか。もうちょっとで取れるんですけどねぇ」
「ふがふがふが(そんなこと知るか、痛いものは痛いじょ)
「ではもう一回打ちませう」
気のせいか今度は前より太いのを打たれて、また5分ほど待つ。なにか今度は急にアゴの回りがジ〜ンとしてきて、なにも感じなくなる。
「さぁ、今度はどうかな?」と、また口を開ける。今度は何も感じないでスポッと抜けた。
「はい、抜けました」
みるとでっかい奥歯。ふん、これが抜けたのか。どうりで痛いわけだ。
「では痛み止めを出しておきます。お大事に」と言われて医院を出る。ところがそのころから、麻酔がさらに効きだした。どうも最後に打った太い麻酔の分らしい。帰宅した頃には顔の右半分の感覚はまったくなくなり、手で触っても何も感じなかった。。。。
前へ 次へ 目次へ