Free talk 雑談
(25)おっとり捜査
 いまから17年ほど前、後輩・山田順一君(仮名)が友人Bとともに韓国の釜山へ観光へでかけることにした。釜山であるから下関から船で行った方が便利だと云うことになった。で、その日、下関に着き、出獄、、、、ではない、出国手続きも無事終えた。さて時間となり船に乗り込もうとしたところ、左側から一人の男がスッと近づいてきて進路をふさいだ。
 「?」と思う間もなく、
 「失礼ですが山田さんですか?」
 「はい」
 「山田順一さんに間違いありませんね?」
 「はい・・・?」

 と再度返事した途端、知らぬ間に右側から近づいてきた男が山田君の右腕をグイッとつかんだ。「おおっ!?」と思ってそちらを振り向いた途端、今度は左側の男が左腕をグイッと....そして口では「どうぞこちらへ」と言いながら、ズルズルとあらぬ方向へ......周りの乗客は何が起こったのかと興味津々でこちらの方を(ああ、カッコ悪ぅ.....)。

 「おおお、、、ちょっ、ちょっと待って・・・・!」と抵抗する山田君を無視し、両腕を抱えたまま、有無を言わせずついたところは港警察の詰め所。何が起こったかワケがわからずあたふたと着いてきた友人Bは、中へ入れず外でウロウロ......

 訳も分からず港警察のチンケな机の前に座らされた山田君。
「いったいどういう!....」と問う声を無視した刑事さん。
「え〜、山田順一さんですね?」
「ええ(何をいまさら....)」
「1週間前の*日の*曜日、どちらにいました?」
「はぁ?.....」
「岐阜県の**に行ってませんでしたか?」
.........」(もう気が動転して、抗議する事も忘れている)
「どうなんですかっ!」←声がキツクなる。
「あのぅ〜〜、そう言えばその頃、そちらのほうへ....
「で、何しに行ったんですかっ」
「あの〜、ちょっと用事があって...」
「それはどんな用事だったんでしたかっ」

 ようやくこの頃になって我を取り戻した山田君、少し逆襲に転じる。
「ちょっとすみませんが、いったい私はどういう事でここへ来ているんでせう?」
「いや、ちょっとそちらのほうで事件があったので、それで事情を聞いているだけです」
「事情と言ったって、どうしてそれが私と関係あるんですか?」
「それは捜査上の秘密だから言えない」
「そんな無茶な。私はこれから韓国へ行くんですから」
「いや、事がハッキリするまでは、出国できません」
「そんなぁ・・・・・・」
「それじゃあ貴方、一つ裸になってくれませんか」
「?・・・・」
「実は犯人には上半身に入れ墨があることが分かっている。ですから上半身を見せてくれればハッキリします」
「わかりました」

というので上半身裸になる → もちろん入れ墨などない → 疑いが晴れる → 急に刑事の口調がなごやかになる。

「いやあ、どうもお手数かけました。ところであなた、最近免許証を無くされませんでしたか?」
「はぁ、そう言えば・・・」
「届け出もせずにほってあるんじゃないですか?」
「ええ、韓国行きの準備で忙しかったので」
「実は犯行現場に貴方の免許証が落ちていてね。そこで貴方の事を調べてみたら、今日、韓国へ向かうということが分かって・・・。それで、すわ高飛び!というので下の関まで飛んできたのですよ。ま、誤解だと言うことが分かってよかったですね。これから気をつけてください。で はどうぞ元気でいってらっさい」
「はい、どうも有り難うございます。では行って参ります」

 というわけで結局は30分ほどのち無事解放され、出発時間にも間に合った。いや、災難はどこから降りかかってくるか分からない。

 ※今回、このエピソードをアップするについて本人に確認をとったところ、「このときは私もまだ若く、ひどいめにあわされたのに、文句を言うどころか御礼まで言ってしまった。しかし考えてみたら間違えられた上に云いたい放題言われたわけで、思い出すと怒れてくる。今だったら韓国行きなどほっといて『署長を呼べ!、弁護士を呼べ!』と喚めき倒している」とのことであった。(笑)

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