村山俊男という方が、ビルマ(現ミャンマー)でイギリス軍の捕虜になっていたときに作成した牌。一緒に写っているお金は、戦時中に日本が発行した軍票(賭け金はこれで精算したという)。
村山俊男氏は1978(大正7)年、京都府に生まれた。機関銃兵としてビルマ(現ミャンマー)方面に出征、ラングーン(現ヤンゴン)の北方、ペグー近辺の山中で終戦を迎えた。昭和21年までイギリス軍下にて抑留され、使役生活を送った。その間に日本兵数人が協力して、このような麻雀牌を10組ほど造ったという。
大工が本職の兵士がチーク材の枕木を鋸で切り、レンガで表面をこすってなめらかにした。達筆な兵士が表面に字牌や万子の字を書き、指物師(家具職人)が本職であった村山氏が五寸釘を使って彫刻した。筒子は五寸釘の先端をヤスリで削って三つ又にし、それを回転させて彫ったという。
色は、陸軍配給の2色エンピツ(両端がそれぞれ赤と青)と、マラリアの特効薬であるストリキニーネの黄色で三原色を作り出して塗ったという(現在、色は褪せてしまっている)。
この牌は日本兵の間に好評であったが、この1セットの他はすべて散逸してしまった。村山氏はこの1セットを持って帰国し保存していたが、縁会って昨年、大阪商業大学アミューズメント産業研究室に収蔵された。
いま“ なんでも鑑定団 ”が大人気。しかしあそこでの価格は、基本的に骨董品としての評価額。骨董品となれば工芸品としての完成度・美しさ・材料・保存度・いわく因縁・現在の需要度(どれくらいのコレクターがいるか)などの要素が勘案される。
しかし物にはそれ以外の見地からの評価もある。たとえば映画・インディジョーンズに出てきたイエス・キリスト愛用の杯(聖杯)、材質は普通の木で見た目も質素なものだった。しかしホントに発見されたら、とてもじゃないが値段がつかない。この枕木牌も同じこと。美術骨董品的な見地からの価格は別として、麻雀の文化/歴史の資料としての見地からは超一級品。
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