ミリタリーグリーンにあう薔薇は・・・
あれは薔薇だ…

その薔薇を見つけたのは・・・
フェンスの内側にコイル状に巻かれた有刺鉄線がおいてあり
監視カメラのまわっている敷地の中。

薔薇は枝をアーチのように伸ばし、幅3メートル位、高さもそれくらいあるだろうか。
どうもつる薔薇のようだ。
薔薇の向こうには、雨風に晒されて何色か判らなくなったような幌をかけ
6桁のナンバープレートをつけた、ミリタリーグリーンの車輌が
何台も並んでいる。


あんなところに薔薇があったかな…
毎日通る場所なのに
今までどうして気づかなかったんだろう…


それから、その横を通るたびに薔薇を眺めるのが楽しみになった。
何色の薔薇が咲くのだろう…
あのミリタリーグリーンには何色の薔薇があうだろう。
やっぱり赤かな。
ハードボイルドだし…
いや、黄色も捨てがたい…
そんなふうに考えると薔薇を眺めては毎日ニヤニヤしていた。


ある雨の日、信号待ちをしていてふと見ると、
薔薇が咲いていた。

それは 小さな白い花が房になって
折からの雨にしょぼくれている。
花はまるで、ごみのようだった(ゴメン)
私は少しがっかりした…
多分、台木の薔薇だ。


・・・・・・・・・・


かつてはその台木に色鮮やかな薔薇が接がれて
大輪の見事な花を咲かせていたのだろう。
その薔薇は枯れ、今は台木の薔薇だけになってしまったのか。

もしも家の庭やばら園で台木の枝が出てきたら
嫌がられて切り捨てられてしまうだろう。
もちろん、それは必要なこと。
(考えてみれば、台木の薔薇って…かなり気の毒な立場だ…)

ここでは台木の薔薇が取って代わってしまったようだ・・・
たぶん、枝を切られることはあっても
根から掘られるようなことはないだろう。


・・・・・・・・・・


台木の薔薇はのびのびと枝を伸ばし
思う存分自由を満喫しているようだった。
この場所を終の棲家としているように…



そうだ…
ミリタリーグリーンに
房咲の白い薔薇はあうのかもしれない。







ノイバラ