１．所在地

奈良市高畑町921番地 Googleの地図では史跡名が表示されていないが「ホテルウェルネス飛鳥路」の裏側に「頭塔」がある

２．草創･開基

この土塔について「史跡頭塔保存顕彰会」が参観者に配布されている「国指定史跡　頭塔」には以下の通り説明されている。

「頭塔は東大寺南大門の南約950m、新薬師寺から西北約700mの位置に築かれた方形七段の土塔です。古くより奈良時代の僧玄�ﾑの頭を埋めた墓との伝説があり、その名の由来とされてきましたが、本来の土塔「どとう」がなまって頭塔（ずとう）と呼ばれるようになったものと思われます。
  神護景雲元年（767）に東大寺の僧実忠（注１）が土塔を築いたと古文書の記録があります。それが頭塔にあたり、その役割は五重塔と同じように仏舎利を納める仏塔と考えられています。頭塔は大正11年（1922）3月8日に国の史跡に指定されています。」

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３．頭塔が築造された目的

• この塔が築造される3年前の764年に恵美押勝の乱が起こり、一方の当事者である孝謙太上天皇は鎮護国家と乱による戦死者の鎮魂を祈念して西大寺金銅七尺四天王像造立や百万小塔を作らせたことはよく知られるところである
• この時期に塔の築造が重なっており、また古文書記録には、この塔の築造目的について「鎮護国家の為」とあることなどから、孝謙太上天皇（称徳天皇）の一連の発願の一つであったのではないかと考えられている

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４．築造当時の構造

昭和53、同62年、平成元年に渡って奈良国立文化財研究所（注２）が発掘調査を行い以下の通りのことが現在では判明または推定されるに至っている

（築造当時の全体像）

• 先ず方形の基壇があり、その上に７壇の土壇が版築工法によってピラミッド状に築かれ、石積みは自然石を使用している
• 発掘時には瓦が発見されている
• これら発掘調査結果を踏まえ築造時の土塔は、下図のようなものではなかったかと想像されている
  
  
  
  「奈良文化財研究所」作成

（塔の大きさ）

• 基壇：一辺　32m　高さ　1.2m　第一壇：一辺　24.2m
• 上壇になるに従って3mづつ縮小し最上壇では一辺6.2mとなっている
• 高さは、奇数壇で1.1m　偶数壇で0.6m　基壇の裾から頂上までの総高は、約10mとなっている

（石仏の配置状況）　　　　

• 各奇数壇の一辺ごとに、第一壇：5体　第二壇：3体　第三壇：3体　第五壇：2体　第七壇：1体、と安置され、総石像数は合計44体あったものと推定されている
• 但し、発掘調査の結果発見されている石仏は28基のみで、うち一体は郡山城石垣に使われていることが判明している
• これら石仏は、その彫刻方法に統一性があり、奈良時代後期の石仏の有り様を伝える貴重な資料となっている

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５．特記事項

• 日本の仏塔は五重塔などの木造建築が主として作られ残されているが、このような土塔は希少で、このほかの類例として行基が作ったとされる堺市中区の土塔が見られる程度である
• また、この塔は当時の四方四仏の浄土構成図に基づいて建立されたと考えられている
  即ち、北：弥勒浄土　東：薬師浄土　南：釈迦浄土　西：阿弥陀浄土　である
• なお、こうした土塔と同様の形式のものが朝鮮には数例あり、これが伝わったものとも考えられている
• 頭塔の伝説
     この頭塔には昭和に入って本格的な調査研究が行われ、「仏舎利を納める仏塔」であることが判明するまでは、玄�ﾑの墓であると信じられてきた。そう信じられてきた痕跡が以下の通り古文書にも残っており興味深い。（注３）
  （１）「今昔物語」には、以下のようにこの頭塔について以下の通り記述されている。
  

  「藤原広嗣が悪霊となって政敵である玄�ﾑに祟り、玄�ﾑの体を空中に舞い上げバラバラにして落下さ
    せた。弟子たちは遺体を拾い集めて埋葬するが、その墓は奈良にあるという」

  （２）また「七大寺巡礼私記」には、この頭塔について、以下の通り記述されている。
  

  「興福寺の巽の方五町あまりの荒野中に十三重塔あり、僧正（玄�ﾑ）の頭を以てこの墓に埋める。
    故に頭塔と号する」

  以上、参照 同朋出版　文化庁文化財保護部史跡研究会監修「図説　日本の史跡　第四巻　古代」

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