■鬼刃〜オニノヤイバ〜■

■女系■
「ちょっと煌クン、洋輔が原因って……一体どうゆうこと?」
 間髪入れずに母さんからのツッコミが入った。
 その表情はすこし険しいものになっている。
 そりゃそうだ。
 自慢の(……果たしてそうか?)息子が娘の病気の原因扱いされては母親として黙ってはいられない状況だろう。
 ありがとう、母さん!
 あなたはい〜い人だツ!!
 さぁ、ガンガン言ってやってくんさ〜い。
「それはですね……順を追って説明していきましょう。原因としては予想はしていたことなんですが、少々予想の範疇を越えてしまっていましたので」
「それって……巴の具合がかなり悪いってこと?」
「いえ、そうではないんです。洋輔についてちょっと……」
 その言葉を聞くと、母さんは大きな溜め息をついた。
「そう……良かった。それじゃあその説明ってのをお願いするわ」
「はい」
 ……以上、母さんの言及終了。
 ちょっとマテ。
 今の会話の流れからすると何ですかい?
 巴が心配で険しい表情をしていたわけで……僕に関してはノープロブレムなわけですか?
 ちらりと母さんの表情を伺うと、その視線は巴に向けられており、僕に対してのものは少なからずともある……とは言い難い。
 オウ、シット!(嫉妬)
 ……まぁ、僕は元気なんだし当たり前なんだけどね。
 毎度のことながら、一通りの暴走が終息しはじめた頃、コウ兄は先ほどの説明を始めた。
「ズバリ、原因をいうとすると、先ほど洋輔に言った通り、洋輔が原因となっているようです」
 母さんはコウ兄の言葉を黙って聞いていた。
「とはいえ、原因が特定できたので、今回の事例に対しては心配は不要です。……それで、問題の原因というのをお話する前に、これは今後、洋輔に深く関わってくる事柄なので、洋輔にも'家'のことについて話したいと思います。……いいですか?」
 コクッとやはり黙ったままの母さんが頷いた。
 そして、その次に母さんは僕を見る。
 何かいつもと違う雰囲気、そして母さんの少し辛そうな顔が気になった。
「それでは……。洋輔、まず一つ質問をしよう。今までに”自分は他人と違う”と感じたことはあるか?」
 …………。
 それは僕の妄想癖のことを言っているのか?
 それとも……。
 他人と違うところと言われれば次々に怪しい僕の普段の行動が頭に浮かんでくる。
 じゃあ直せよ! というのは言わない約束だ。
 う〜ん、どれから言ったものか……。
「その顔だと特にあてが無いようだな」
 しばし考え込んだ僕を見てコウ兄は話を進め出した。
「お前は今まで疑問に思ったことはないか? 自分の周りにあまりに”男”がいないってことを」
 そう言われてみれば……。
 僕の家にいる男は……僕だけだ。
「思い当たる節があるだろう? 渡辺家は”女系”の家なんだよ。そしてお前はそんな中、ごく稀に生まれてきた男なんだよ」
 ……確かに、親戚が集まる行事でも男の姿を見かけることは少ない。
 ばあさんの葬式でも男の姿は少なかった。
 いたのは叔母達の旦那だけだったハズ……。
「本家の渡辺家……そこからその血筋は始まっている。姓は変わってしまったが、ばあさん、つまり俺達の祖母のユウばあさんは元々渡辺家の出だ。……そして、その渡辺家、つまり本家はある特殊なお家柄なんだよ……昔から」
 ……特殊なお家柄?
 女系ってだけじゃなくて他にも何かあるのか?
「ちょっと長くなるかもしれないし、あまり現実味を帯びない話だが、最後まで聞いてなんとか理解してくれ」
 ……。
 …………。
 音の無い、真っ白な部屋にコウ兄の声だけが響いている。
 何か重要なことを話そうとしている、それもかなりキナくさいことを。
 僕は食い入るようにコウ兄の話に耳を傾けた。

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