■鬼刃〜オニノヤイバ〜■

■閃光■
 茶の間の戸棚で発見した絆創膏を貼る。
 一応、救急箱があったので消毒もすませた。
 小さな頃から文武両道な我が妹は応急処置も完璧だ。
 とは言っても、小さなころに傷だらけで駆け回っていた、僕の手当てでスキルアップしたのだろうが。
 巴のありがたい処置を受け、ようやく一段落する。
「もう、気をつけてよね」
「……面目ない」
 宝捜しは諦めたつもりだったが……。
 これでは結果的に"しつこいお兄様"ではないかッ!!
 お兄様。
 イイ響きだ……。
「……でも」
 巴の言葉に妄想を打ちきられる。
 ああ、甘美なひとときが……。
「一体何で切ったの? こんなに」
 ……唐突にきました、巴さまの質問タ〜イム!
 ジト目で睨まれる。
 また宝捜しをしていたと思われているらしい。
 結果的にそうなって怪我をしたわけだから……。
 う〜む、叱られる要因が大きいなぁ。
 わはははは……ははっ……はぁ。
 い、言い訳を考えねばっ。
「ま、まぁまぁ、座って話そうではないか」
 内心冷や汗をかきながらもぎこちない微笑みで、巴ともどもコタツに座る。
 ペンダントを汚してしまった事についても対処になければ。
 僕の脳みそがオーバークロック気味に動き出した、まさにその時。

 パアァァァァァァァァァ……

 突然の光。
 天井の、蛍光灯の光さえ見えなくなるほどの強い光が僕達を包み込む。
 巴の持つ石が光り出した。
「お、お兄ちゃん! ま、また光が!!」
 恐らく、巴の言っていた光とはこのことだったのだろう。
 巴の胸の上にあるはずの石は、すでに直視することが難しくなっている。
「巴、光を押さえてくれ。これじゃあ何にも見えない」
 あたふたしていた巴が両手で石を覆うと、やっと目のくらむ光から開放された。
 巴のような反応が普通なのだろうけれど、なぜか僕は落ち着いている。
 しかも、これが当たり前のことのように思えてきていた。
「お兄ちゃん! お兄ちゃんのポケット!!」
 言われて自分のジーンズのポケットを見ると光を放っていた。
 光の強さは巴のオペンダントほどではないが、ポケットにの中で光っているのだから、相当の強さだろう。
 光をポケットから取り出すと、それはさっき、僕の指に傷を負わせた古い刀の切先。
 こちらも手で覆わなければ直視できないほどの眩しさを放っている。
 ……呼応している。
 そう感じた。
 次の瞬間、光は強さを増し……。
 僕は真っ白な世界に立っていた。


―――汝、我ガ主タル契約ヲココニ結ベリ―――
 頭の中に響く重苦しい声。
 何もない、ただただ真っ白な世界に僕が1人だけだ。
―――我ハ汝ト共ニアリ―――
 頭がぼーっとしている。
 一体何が起こったのだろう。
―――我ガ刃ノ全テ持チテ、汝ニ仇為スモノ全テヲ―――
 ……懐かしい声。
 何を言っているかよくわからないが、ひどく懐かしいことだけは覚えている。
 ああ、お前は……。
―――滅セン!!

 どさ。

 そんな音と共に僕は正気を取り戻した。
 辺りを見回すが、さっきとなんら変わりがない。
「一体なんだったんだ? 今のは……」
 それと、あのひどく懐かしい声は……。
 手のひらをみると、じっとりと汗ばんでいた。
 そこで気がつく。
 ……切先がない。
 どこいったんだ?
 テーブルの周りを探すと、そこには巴が横向きに倒れていた。
「おい! 巴! どうした!!」
 慌てて駆け寄り、巴を抱き起こして軽くゆする。
 返事がない。
 身体中の血が引いていく感じがした。
「巴! 巴!!」
 強めに身体をゆすってみたが、返事を返してはくれない。
 なんだか寒気がする。
 小刻みに身体な震えている。
 ……マジかよ。
 部屋の中がしんと静まりかえった。

すぅー、すぅー

 微かに聞こえる呼吸音。
 それは巴から発せられていた。
 「……はぁ〜〜〜〜〜」
 安心してヘナヘナと座りこむ。
 気を失ったのだろう。
 いや、そうだ、そうに違いない!
 これ以上なんかあってたまるかッ!
 やり場のない怒りを吐き出し、大きくため息をつく。
「う、う〜ん……」
 巴が寝返りをうった
 はぁ、こちらのお嬢様は大丈夫のようだ。
 目を覚ましたらイロイロと話し合わねばならない。
 しかし……。
「なんだったんだ? あれは」
 静かに眠っている巴の髪をやさしく撫でながら呟いた。

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