■鬼刃〜オニノヤイバ〜■

■古刀■
 物置の中はさっきと変わらずホコリだらけだった。
「いくら物置だからと言っても少しは整理しておいてくれよ、ばあちゃん……」
 もういない祖母に向かって一言、文句を漏らす。
 まぁ、この現場を見たら誰でも言いたくなるだろう。
 惨憺たるありさま。
 そんな言葉が1番似合う光景が広がっている。
 無造作に積まれたダンボール、並べたと言うのがおこがましいくらいに置かれた数々のガラクタ。
 挙句の果てには紐で縛られた本、がそこかしこに詰まれている。
 最初に入った母さんもお手上げだったのだろう、ほとんどがそのままの状態であった。
 何故わかるかと言えば、ほとんどがホコリをかぶったままだからだ。
 そんなわけで、僕が被害を被ってしまった。
 僕が大きくなってからは、あまり来ることがなくなっていったこの家。
 小さな頃に祖母と過ごした思い出は、古いものから順にここへ入れられてきたのかもしれない。
 それが、僕がこの物置にこだわる理由だ。
 家の中ではそれらしい物を見つけることが出来なかった。
 ここが最後。
 どうしても見つけたい。
 早速目的の品を探すことにした。


 ……10分経過。
 相変わらず大しての収穫も無いまま時間だけが過ぎてしまった。
 もちろん、何も見つからなかったわけではない。
 敬老の日に贈った肩叩き券、それと……。
 紙に描かれた怪しげな文様。
 曲がりくねった棒線、歪んだ丸の組み合わせがとても怪しい妖気を発している。
 それを人物画と理解するまでに暫くの時間を要した。
 ……理解したと言うか、昔描いたということを思い出しただけなのだが。
 事実、今、改めて見ると……。
 印象派?
 当時の僕は多才だったんだなぁ。
 うんうん。
 印象派の画家にとても失礼なことを考えつつも、作業を再開する。
 もっと他になにかないのだろうか?
 更に奥へと進むことにした。


 母さんが中学生の頃から、ばあちゃんは女手だけで、母さんを育ててきた。
 じいちゃんが亡くなってしまったからだ。
 いろいろと無理をしたかららしい。
 当然僕も、遺影でしかその姿を見たことがない。
 そのじいちゃんがまた、いろんな物を集める趣味があったようで……。
 その成果の結晶がこの物置。
 だから結構大きめに出来ている。
 奥から探していけば何かあるはずだ。


 奥に進むと若い頃の2人のアルバムなんかも眠っていた。
 ばあちゃんがかなり綺麗だったりして驚きだ。
 その隣に半ば腐りかけた棒状の袋が見える。
「なんだこれ?」
 袋を手にとって見る。
 まわりのホコリも一緒に舞い上がってしまい、少しだけむせた。
 最初は釣り竿でも入ってるだろうと思っていたのだが、口紐を解くと中からは一振りの日本刀が出てきた。
「お、お宝!?」
 ついつい気がはやる。
 思い出の品探しをしていたつもりだが、さすがに価値が有りそうな物を発見してはそうも言ってられない。
 わくわくしながら鞘から刀身を抜く。
 ぼろ……
「あ……」
 口にした時にはもう遅かった。
 半分くらいまで引き抜いたところで刀身が崩れ落ちてしまった。
 というのも錆、錆、錆。
 慎重に引き抜いたとしても、結果はさほど変わらなかったと思われるほどだ。
 刀身は一気に崩れ落ちて、柄だけが僕の手に残った。
「ああ、僕のお宝……」
 別に僕の物でもなんでもないのだが、さすがにヘコむ。
 仕方なく床に落ちた破片を拾うことにした。
「何やってんだかなぁ」
 ぐちを漏らしても、この現場を見つけられ、問いただされるよりはマシだ。
 大きな破片を中心に拾い、手近なダンボールに入れていく。
「――ッ」
 拾っている最中に刀の切先で指を切ってしまった。
 不思議なことに切先だけは錆びていなかったのだ。
 悪いことは続くもの。
 日本刀というものは刀の類では1番切れるものだ。
 軽く触れたつもりが、結構深く切れてしまっていた。
 とりあえず作業は中断。
 消毒して絆創膏を貼っておかなくてはならない。
 なにしろかなりキタナイ物だし……。
 なんとなく、手に残った柄だけを持って出口へと向かうことにした。

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