■Angelic Feather■
| ■消失■ |
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| 高校受験。 そんな言葉があたしの耳に何度も何度ものしかかってくる。 季節は受験シーズンの一歩手前の秋、まぁ、当然といえば当然なんだけど。 あたしの場合、受験事態はそんなに大事ではない。 けれど、パパやママは違った。 どこを受験させるか……そして今更になってあたしの性格がどうこうとか、育て方がどうこうとか……。 そんな会話ばかりだ。 いや、会話っていうよりは「喧嘩」が正しいんだと思う。 あたしが小さかった頃から二人とも仕事ばかりで、そんなにかまってすらくれなかったくせに……。 二階の部屋で娘が受験勉強しているというのに、下ではほとんど喧嘩口調での話が続けられている。 「こんなの……はかどるわけないじゃない……」 いつもはかなりテンションが高いと言われるあたしも、この状況ではさすがにヘコむ。 「ん? なんかまた解らないトコあったの?」 あたしのベッドで黒猫のBと遊んでいた(猫に遊ばれていた?)イノスがBの魔の手から逃げて、机の上にちょこんと座った。 このBもあたしと同じようにイノスが見えるのだ。 昔からイノスは勉強の先生もしてくれている。 「イノスとかBはいいわよねぇ〜……」 今のあたしには心からそう思える。 イノスに逃げられたBは、ベッドの上で退屈そうに伸びていた。 この猫のBは半年前、近くの崖から落ちそうになったところをイノスに助けられ、それ以来、なし崩し的にうちの飼い猫になっている。 Bって名前は通行人AとかBとか、そういうところからきているのではない。 さすがにそれは酷いし……。 黒→Black→Bというルートからの名前。 何気にあたしはこの名前がお気に入りだ。 「え? 何? また勉強がつまんなくなった?」 イノスは相変わらず心配そうにあたしを見つめている。 「ううん、だいじょび。ちょっと休憩」 そう言って立ちあがり、先程からつまらなさそうにしているBの喉をさわさわと撫でる。 すると気持ちよさそうに目を細め、ゴロゴロと喉を鳴らし始めた。 この家で一番だい好きなのはパパでもママでもなくてイノス。 なんでも知っていて、お兄ちゃんみたいで、それでいて弟みたいで、そして……。 いつもあたしを包み込んでいてくれる。 あたしが今のあたしでいられるのもイノスのお陰……とBのお陰。 いつまで一緒にいられるんだろう……。 なんだか最近、イノスの姿を見失うことがある。 もしかして天界に帰ってしまったのかと家中を捜したこともあった。 でも、いつものようにあたしのベッドの上でBとじゃれていたり……。 そんな不安が再び首をもたげたときだった。 玄関のドアがバタンと大きな音を立てて閉まったのだ。 何事だろうと思い、部屋を出る。 あんまり一階には下りたくなかったけれど、なんだか妙な胸騒ぎがしたからだ。 ダイニングに行くと、パパがテーブルに両肘をついて、両手で頭を抱えていた。 ……ああ、出ていったんだ。 そう直感した。 そんな時、パパがあたしに気づいてこう言った。 「パパとママ、どっちが好きだ?」 って……。 気がつくとあたしはベッドの中で泣いていた。 パパの言葉を聞いたあたりから記憶がない。 その日はずっと布団を頭から被って泣いていたのかもしれない。 翌朝、くしゃくしゃの顔を机の鏡で見て、さらに気持ちが落ち込んだ。 もうイヤだ。 パパもママも、みんな、みんな大嫌い!! ……イノスと話がしたいな。 そう思ってイノスの姿を探すが、いつものクッションの上に見当たらない。 「イノス〜? ねぇ、イノス〜、どこ〜?」 けれど結局イノスの姿を見つけることはなかった。 その日以来ずっと……。 次の日から一週間、あたしは学校を休んだ。 |