【 白夜散華 】


先週(07.42号)先読みで弥勒様救済の突発文を入れたせいもあり、今週は感想&考察だけでと思っていたのですが、別口でネタが2本ほど浮かんでしまいました。

今週の弥珊的展開は、それをイチオシで活動してない私などが弄るにはあまりにも憚られるような内容です。軽々しく、あれこれ言うのはおこがましくて……。原作の展開を静かに待ちたいと思います。




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 ……どこかで、あいつがくたばれば良いと思ってた。俺をいいように使いやがって、そのうち先にあいつの為に殺されたり死んだりした兄弟たちのように、俺もあいつに殺されるんだろうと思っていたから。

 だから、できるだけ楽しく生きてやろうと思った。
 軽佻浮薄にふらふらと相手を煙に巻いてだまくらかして、風向きが悪くなりゃさっさと逃げ出してさ。

 目の前で曲霊が数多の妖怪が、そして奈落までがあの兄弟と破魔の巫女に吹き飛ばされた様を見たときにゃ、俺も年貢の納め時だと思った。
 特にあの兄貴の方には、俺の臭いだけで酷く毛嫌いされているほどだからな。

 まぁ、仕方ないか。
 俺も、奈落の『分身』だかなら。

「へへ、最後に残ったのは俺だけか。あ〜あ、あらかたの妖怪はあんたらで殺し尽くしちまったな。残ったのは、そこの河童や狐みたいな害にも益にもならないような奴らだけ。お前たちが最後の『妖怪』ってこったな」
「……言いたいことはそれだけか」

 殺生丸の手にした刀から、雷光が迸っている。
 犬夜叉もいつでも冥道を開ける構えだ。

 かごめも破魔の弓を引き絞っている。

「おいおい、俺ぁ一人なんだぜ? それを三人がかりかよ?」
「ああ、お前で最後だからな! もう、これで本当に……」

 ―――― この『事』の最初からの当事者であった犬夜叉の声には、言葉に尽くせぬ想いが篭っている。

 俺は空を見上げた。もともと『奈落』なんて妖怪の寄せ集めで本当ならこの世に『無かった』筈のものの分身なら、無に空(くう)に還るが道理だろう。

 でも、なんだろう?
 この胸に感じる、この寂しさ虚しさは。
 なんだ、自分でも判らないのに胸の奥から溢れてくるこの感じは……。

 ぴく、とかごめの弓を引く手が動いた。
 ああ、浄化されるのか。
 どんな気分だろう?

 少なくとも体半分冥道に叩き込まれたり、体の中から爆裂させられて消滅させられるようりは楽かもしれない。

 覚悟を決めて、かごめにむかって俺は少し笑って見せた。かごめは構えた弓を下ろし、真っ直ぐな瞳で俺を見る。

「……あんたの答え次第だけど、今 あんた何を考えてる? こんな事を言うと変だけど、すっごく今のあんたが悲しそうに見えたから ―――― 」
「考え? さぁ…、俺にも判んねぇ。ただ胸の奥からこれで終わったんだって、もう『自由』なんだって、なにもかも無くなってしまえって声が聞こえる」
「自由?」
「ああ、自由だ。俺は奈落の分身と言う奴隷だったからな」

 俺が言った自由と言う言葉が、波紋のようにあたりに広まる。雷光を操る殺生丸の表情に一瞬浮かぶ、慈しみの色。そう、奈落からの自由を心から求めて風になった、彼の者の面影。
 かごめの瞳がさらに光を増す。言葉の中の真実を見抜いて。

「……判ったわ。あんたはもう自由よ。あんたにその『想い』を託した、鬼蜘蛛の想いと一緒に」
「鬼蜘蛛!?」

 かごめの横の犬夜叉が、驚いたようにその名を繰り返す。

「そう、鬼蜘蛛。とんでもない大悪党で今までの報いで全身大火傷をして全身不随になった男。匿い命を助けてくれた桔梗に浅ましい想いを抱いて、『奈落』を生しめした男」
「かごめ……」
「その鬼蜘蛛の本当の願いは、自由になりたいだったの。動かない自分の体もだけど、どうしようもない極悪人になってしまった自分からも」

 事の経緯に気付いた殺生丸が爆砕牙を鞘に収めた。

「もう、あんたは自由。だから、ゆくべきところにおゆきなさい!!」

 それは光の言霊。
 俺の足元から俺の形が光の珠に砕け、風に溶けてゆくのを感じる。

 ああ、風が気持ち良い。
 さぁ、どこに行こうか。


 俺は、自由だ ――――


「いいのか? かごめ。あいつ、消えてしまったぞ」
「うん、大丈夫。あれも浄化の形だから…。自分が納得して、次への階段を上がっていったの。白夜の中に残っていたほんの僅かかもしれない鬼蜘蛛の魂も救われたわ」

 三人は吹き渡る風を見る。
 その中に光る、小さな光の粒を見送って ――――



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一応、犬夜叉最終回での一場面を妄想してみました。なんだか白夜って憎めないキャラなので、あえて救われる形で書いてみました。


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