■阿倍仲麻呂(あべのなかまろ)
・天の原ふりさけ見れば春日なる三笠の山に出でし月かも
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■有馬皇子(ありまのみこ)
・家にあれば笥にもる飯を草まくら旅にしあれば椎の葉にもる
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■在原業平(ありわらのなりひら)
・ちはやぶる神代も聞かず竜田川からくれなゐに水くくるとは
・名にしおはばいざ言問わむ都鳥わが思ふ人はありやなしやと
・世の中に絶えて桜のなかりせば春の心はのどけからまし
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■在原行平(ありわらのゆきひら)
・立ちわかれいなばの山の峰に生ふる松とし聞かばいま帰り来む
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■大江千里(おおえのちさと)
・月見ればちぢに物こそ悲しけれわが身ひとつの秋にはあらねど
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■凡河内躬恒(おおしこうちのみつね)
・春の夜の闇はあやなし梅の花色こそ見えね香やは隠るる
・わが宿に咲ける藤なみ立ちかへり過ぎかてにのみ人の見るらん
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■太田道灌(おおたどうかん)
・わが庵は松原つづき海近く富士の高嶺を軒端にぞ見る
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■大伴家持(おおとものやかもち)
・うらうらに照れる春日に雲雀あがり情悲しも独りし思へば
・春の苑紅にほふ桃の花下照る道に出で立つをとめ
・わが園に梅の花散るひさかたの天より雪の流れ来るかも
・わが宿のいささ群竹吹く風の音のかそけきこの夕かも
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■他田舎人大島(おさだのとねりおおしま)
・唐衣裾に取りつき泣く子らを置きてぞ来ぬや母なしにして
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■小野老(おののおゆ)
・あをによし奈良の都は咲く花のにほふがごとく今さかりなり
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■小野小町(おののこまち)
・花の色はうつりにけりないたづらに我が身よにふるながめせし間に
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■柿本人麻呂(かきのもとのひとまろ)
・近江の海夕浪千鳥汝が鳴けば情もしのに古思ほゆ
・東の野にかぎろひの立つ見えてかへり見すれば月かたぶきぬ
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■紀貫之(きのつらゆき)
・袖ひぢてむすびし水のこほれるを春立つけふの風やとくらむ
・人はいさ心も知らずふるさとは花ぞむかしの香ににほひける
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■紀友則(きのとものり)
・ひさかたの光のどけき春の日にしづ心なく花の散るらむ
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■清原深養父(きよはらのふかやぶ)
・夏の夜はまだ宵ながら明けぬるを雲のいづこに月宿るらん
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■光孝天皇(こうこうてんのう)
・君がため春の野にいでて若菜つむわが衣手に雪はふりつつ
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■小式部内侍(こしきぶのないし)
・大江山いく野の道の遠ければまだふみもみず天の橋立
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■西行法師(さいぎょうほうし)
・心なき身にもあはれは知られけり鴫立つ沢の秋の夕暮れ
・鈴鹿山うき世をよそに振りすてていかになり行くわが身なるらむ
・道のべに清水流るる柳かげしばしとてこそ立ちとまりつれ
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■坂上是則(さかのうえのこれのり)
・あさぼらけ有明の月と見るまでに吉野の里に降れる白雪
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■志貴皇子(しきのみこ)
・石ばしる垂水の上のさわらびのもえいずる春になりにけるかも
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■持統天皇(じとうてんのう)
・春過ぎて夏来たるらし白妙の衣干したり天の香具山
(春過ぎて夏来にけらし白妙の衣干すてふ天の香具山)
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■寂連法師(じゃくれんほうし)
・寂しさはその色としもなかりけり真木立つ山の秋の夕ぐれ
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■式子内親王(しきしないしんのう・しょくしないしんのう)
・玉の緒よ絶えなば絶えねながらへば忍ぶることの弱りもぞする
・山深み春とも知らぬ松の戸にたえだえかかる雪の玉水
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■舒明天皇(じょめいてんのう)
・夕されば小倉の山に鳴く鹿のこよいは鳴かずい寝にけらしも
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■蝉丸(せみまる)
・これやこの行くも帰るも別れては知るも知らぬもあふ坂の関
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■平忠度(たいらのただのり)
・さざなみや志賀の都はあれにしを昔ながらの山ざくらかな
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■太上天皇(だじょうてんのう (後鳥羽上皇(ごとばじょうこう))
・ほのぼのと春こそ空に来にけらし天の香具山かすみたなびく
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■橘曙覧(たちばなあけみ)
・たのしみはあき米櫃に米いで来今一月はよしといふとき
・たのしみは朝おきいでて昨日まで無りし花の咲ける見る時
・たのしみは心をおかぬ友どちと笑ひかたりて腹をよるとき
・たのしみはすびつのもとに打ち倒れゆすり起こすも知らで寝し時
・たのしみはそぞろ読ゆく書の中に我とひとしき人をみし時
・たのしみは機おりたてて新しきころもを縫て妻が着する時
・たのしみは書よみ倦るをりしもあれ聲知る人の門たたく時
・たのしみはまれに魚煮て子らがみなうましうましといひて食うとき
・たのしみは三人の児どもすくすくと大きくなれる姿みる時
・たのしみは妻子むつまじくうちつどひ頭ならべて物をくふ時
・たのしみは雪ふるよさり酒の糟あぶりて食て火にあたる時
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■能因法師(のういんほうし)
・都をば霞とともに立ちしかど秋風ぞ吹く白河の関
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■藤原家隆(ふじわらのいえたか)」
・志賀の浦や遠ざかりゆく波間より氷りて出づる有明の月
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■藤原定家(ふじわらのていか・ふじわらのさだいえ)
・駒とめて袖うち払うかげもなし佐野のわたりの雪の夕ぐれ
・春の夜の夢の浮き橋とだえして峰にわかるる横雲の空
・見わたせば花ももみじもなかりけり浦のとまやの秋の夕暮
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■藤原俊成ふじわらのとしなり・しゅんぜい)
・夕されば野辺の秋風身にしみてうづら鳴くなり深草の里
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■藤原敏行(ふじわらのとしゆき)
・秋来(き)ぬと目にはさやかに見えねども風の音にぞおどろかれぬる
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■藤原雅経(ふじわらのまさつね)
・み吉野の山の秋風さ夜ふけてふるさと寒く衣うつなり
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■藤原良経(ふじわらのよしつね)
・み吉野は山も霞みて白雪のふりにし里に春は来にけり
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■文屋康秀(ふんやのやすひで)
・吹くからに秋の草木のしをるればむべ山風をあらしといふらむ
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■源兼昌(みなもとのかねまさ)
・淡路島かよう千鳥の鳴く声にいくよねざめぬ須磨の関守
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■源実朝(みなもとのさねとも)
・大海の磯もとどろに寄する波割れてくだけてさけて散るかも
・箱根路をわが越えくれば伊豆の海や沖の小島に波の寄る見ゆ
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■源経信(みなもとのつねのぶ)
・夕されば門田の稲葉おとずれて芦のまろやに秋風ぞ吹く
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■源宗于(みなもとのむねゆき)
・山里は冬ぞさびしさまさりける人めも草もかれぬと思へば
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■源義家(みなもとのよしいえ)
・吹く風をなこその関と思へども道もせに散るやまざくらかな
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■壬生忠岑(みぶのただみね)
・み吉野の山の白雪踏み分けて入りにし人のおとづれもせぬ
・山里は秋こそことにわびしけれ鹿の鳴く音に目をさましつつ
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■本居宣長(もとおりのりなが)
・しきしまのやまと心を人とわば朝日ににほふ山ざくら花
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■紫式部(むらさきしきぶ)
・めぐり逢ひて見しやそれともわかぬ間に雲がくれにし夜半の月かな
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■山上憶良(やまのうえのおくら)
・瓜食めば子ども思ほゆ栗食めばましてしぬばゆ
いずくより来たりしものぞ眼交にもとなかかりて安寝)しなさぬ(長歌)
・憶良らは今はまからむ子なくらむそれその母も吾を待つらむぞ
・銀も金も玉も何せんにまされる宝子にしかめやも
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■山部赤人(やまべのあかひと)
・田子の浦ゆうち出でて見れば真白にぞ不尽の高嶺に雪は降りける
(田子の浦にうち出でて見れば白妙の富士の高嶺に雪は降りつつ)
・春の野にすみれ採みにと来しわれぞ野をなつかしみひと夜ねにける
・み吉野の象山の際の木末にはここだも騒く鳥の声かも
・若の浦にしおみちくればかたをなみあしべをさしてたずなきわたる
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■良岑宗貞(よしみねのむねさだ(僧正遍照(そうじょうへんじょう))
・天つ風雲の通ひ路吹きとぢよをとめの姿しばしとどめむ
・はちす葉のにごりにしまぬ心もてなにかは露を玉とあざむく
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■良寛(りょうかん)
・かすみたつ長き春日をこどもらとてまりつきつつきょうもくらしつ
・子どもらと手まりつきつつこの里に遊ぶ春日は暮れずともよし
・月よみの光を待ちて帰りませ山路は栗のいがのしげきに
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■その他
・あしひきの山鳥の尾のしだり尾のながながし夜をひとりかも寝む(よみ人知らず)
・奥山にもみぢ踏み分け鳴く鹿の声聞く時ぞ秋は悲しき(よみ人知らず)
・白雲に羽うちかわしとぶ雁の数さえ見ゆる秋の夜の月(よみ人知らず)
・父母が頭かき撫で幸くあれて言ひし言葉ぜ忘れかねつる(防人歌より、丈部稲麻呂)
・ほのぼのと明石の浦の朝霧に島隠れゆく舟をしぞ思ふ(よみ人知らず)
・わが君は千代に八千代にさざれ石のいわおとなりて苔のむすまで(よみ人知らず)
・わが宿の池の藤なみ咲きにけり山ほととぎすいつか来鳴かん(よみ人知らず)
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