巨人が、原辰徳氏(46=前巨人監督)に来季の監督就任を要請することを決めた。巨人は17日現在、首位・阪神に13・5ゲーム差をつけられ、V奪回が絶望的となっている。堀内恒夫監督(57)の今季限りでの退団は確実。読売本社および巨人は後任人事を検討してきたが、17日までに原氏で一本化した。今週中に滝鼻オーナーが原氏と会い、就任を要請する。
7月に入っても、巨人の浮上の兆しが見えないことから、滝鼻オーナーは渡辺恒雄球団会長ら読売首脳と会合を重ね、来季監督の人選を進めてきた。原氏のほか、中畑清、江川卓両氏、さらにこれまで“タブー”とされてきた他球団の監督経験者の招へいや外国人までターゲットを広げ、検討が繰り返されてきた。
その結果、前監督で就任1年目の02年に日本一を奪回した原氏に就任を要請することを決めた。すでに読売幹部が原氏に対して「11月以降のスケジュールを空けておいてほしい」と伝えている。
巨人が原氏に絞った背景にはファンの支持がある。TBSラジオが5月、堀内、星野、中畑、江川、原の5氏を対象に「巨人の監督は誰がいいか」をアンケート調査した結果、47%の圧倒的な支持を受けたのが原氏だった。こうした声は直接、間接的に読売首脳の耳にも届いており、日本一監督の実績とともに大きな要因となった。滝鼻オーナーはこの数日間、堀内監督の途中休養を否定するとともに、来季の体制に関しては「なるべく早いうちにピシッとやる」と断言。今月から球団会長に就任した渡辺恒雄・読売新聞グループ本社会長も「考えてなかったら、何で会長に復帰したんだ、となる。考えていなかったらバカだ」と後任監督の人選が大詰めに入ったことを示唆していた。
滝鼻オーナーは今週中に原氏と会い、就任を要請する意向だが、原氏がその場で受諾するかどうかは微妙だ。日本一奪回の翌03年秋、星野・阪神の独走を許した原監督だが、コーチ陣は残留させて出直しを図る考えだった。これに対してフロントが強硬にコーチ陣の刷新を迫り、感情的な対立に発展。最後には原監督が辞任する事態となった。日本一からわずか331日目の悲劇に多くのファンが憤り、巨人離れに拍車がかかった、といわれている。
辞任会見で「すべては私の責任。このままでは巨人の監督として権威、威厳に傷をつけてしまう」と悔し涙を浮かべた原氏。現在は読売新聞社のスポーツアドバイザーを務めているが、退団時のわだかまりは完全に解消していない、と見る向きが多い。それだけに滝鼻オーナーの就任要請にどう対応するか。少なくともコーチングスタッフ人事の全権を委任されなければ受諾しないことは明らかだ。
◆原 辰徳(はら・たつのり)1958年(昭33)7月22日、福岡県生まれの46歳。父・貢氏が指揮を執る東海大相模で1年夏から甲子園に出場し、2年(75年)時にセンバツで準優勝。東海大では3冠王を2度獲得し、80年ドラフト1位で巨人に入団。81年に新人王、83年には打点王(103打点)とMVPに輝いた。95年に現役引退。通算成績は打率・279、382本塁打、1093打点。99年に野手総合コーチとして巨人に復帰、00年からヘッドコーチ。01年オフに監督に就任し、02年に日本一。03年にV逸の責任をとって辞任した。
[スポーツニッポン 2005年7月18日]