王監督さい配ズバリ!! 代打・井出決勝二塁打!!


 王監督のさい配がズバリと決まった。選手、助監督、監督として巨人で31年。さすがにセの野球も熟知している。2ー2の7回、先発新垣の代打にベテラン井出竜也(34)を送ると、これが的中。右翼線への決勝二塁打となって、セ界最初の相手ヤクルトを退けた。雨で仕切り直しとなったホークスの交流戦。「他流試合」を苦にしない快勝だった。
 セ・リーグ育ちの遺伝子が告げていた。王監督が迷いなくベンチを飛び出し、記念すべき交流戦初勝利をもぎ取った。2―2の同点で迎えた7回1死一、三塁。粘投を続けていた新垣に打席が回ると、代打にベテラン井出を指名。さい配はズバリと的中した。
 王監督「(パ・リーグでは)野手への代打はあるが、あそこ(投手への代打)は普段では絶対ないケース。左がやっているのが見えていたから、左右どちらでも打てる井出をね。うまく打ってくれたよ」
 マウンドには右投手の川島。ここで前日まで打率・095の右打者、井出を送り出した。「スクイズなんかの小細工はない。思い切っていけ」。王監督のゲキに、今季からホークスに加わった34歳が燃えた。フルカウントからの7球目。144キロを右翼線へ運ぶ勝ち越しの二塁打だ。
 史上初の交流戦の初戦を制し、監督通算勝利数は巨人V9監督の川上哲治氏を2勝上回る1068勝。ホークスで名将の名を確立した王監督だが、セ・リーグの飯も巨人での現役、助監督、監督を通じて31年間も食べている。セで培った代打起用の勝負勘はさびついていなかった。
 前日6日には「パではさい配のことをあまり言われないけど、交流戦では言われちゃうかな」と笑っていたが、フタを開ければ堂々の“セ・リーグ野球”を展開。5回無死一塁ではプロ初打席に立つ新垣を見据え、8番の本間に犠打を命じた。「あそこは柴原勝負」。案の定、新垣三振の後、柴原が2点目のタイムリーを放った。
 もちろん、さい配だけで勝利を呼び込んだワケではない。打撃不振の井出には前日の練習でマンツーマン指導。「とにかく思い切っていけと言われました」。すべての選手に注がれる細かい目配りに、井出も燃えないはずがない。王監督の強みは「知」と「情」を合わせ持つ大きさにある。
 井出の安打は3月30日の楽天戦以来、今季3本目。昨季限りで巨人を解雇された男は、セに対する意地の殊勲打を振り返る。「昨年みたいなことはない、という気持ちでした」。絶妙のタクトで4連勝を引き寄せた王監督は「井出もこれで落ちつくんじゃないかな」とニンマリだ。
 99年の日本シリーズ第3戦でも、6回まで無安打ピッチングの永井に代打を送って勝利を勝ち取った。6週間にわたって続く交流戦は残り35試合。セ・リーグ仕込みの王監督の勝負勘は、ペナントの行方を左右する交流戦の大きな武器となりそうだ。

[西日本スポーツ 2005年5月8日]