親会社変わろうと王監督「来年もやる」


 今月中にソフトバンクへの球団売却が決定的となった9日、ダイエー王貞治監督(64)は、くしくも本拠地・福岡ドームでの開催となった日米野球第4戦の指揮を執った。全米主催ゲームでビジター用ユニホームだったが、ダイエー指揮官として本拠地に立つのは最後になる可能性が高い。「できればこのユニホームで来年も」としながらも、ソフトバンクの資金力による戦力補強を歓迎した。王監督は「来年もやる」と明言。球団名が変わっても福岡の地で、日本一奪回を目指す決意だ。
 親会社が変わろうと、ダイエー王監督の夢は終わらない。「オレは来年もやると決めている。自分の気持ちの中で決めている」。再編問題、球団売却と球界は“変革期”に突入した。誰よりも球界の発展を願い、責任感の強い王監督だからこそ、投げ出すように自分から身を引くわけにはいかない。今季連覇に失敗したチームを再び頂点に導く決意に、何ら変わりはない。
 ソフトバンクへの球団売却が決定的となった。もちろん、自分を招へいしてくれたダイエーへの恩義は忘れていない。10年間、着続けた「FDH」のユニホームにも愛着はある。くしくも、この日は本拠地・福岡ドームで日米野球第4戦。午後4時すぎにグラウンドへ姿を現した王監督の表情は硬かった。「この(ダイエーの)ユニホームで来年もできれば本当はいいが(球団売却などは)我々とは関係のないところでやっているものだから…」。全米の主催ゲームのため、黒いビジター用ユニホームに袖を通した。「ホーム用じゃないんだよね」と語る89番の背中は寂しげだった。その「FDH」ユニホームでの本拠地ラストゲームが濃厚な状況で、試合は黒星を喫した。「最初に勢いをつけたかったが、先に点を取られると苦しい」。試合後は、連敗を止められなかった悔しさが口をついた。
 複雑な思いは封印し、前に進まなければいけない。ここ数年はダイエー本社の経営難もあり、大型補強に乗り出せなかった。昨オフの小久保無償トレードに続き、今度は井口もチームを去る。総資産2兆円近くといわれるソフトバンクが経営母体となれば、状況は一変する。「現状より補強費が出る?  それは大歓迎だね。(今まで手が出なかった外国人など)調べる選手の範囲も広がる。戦力がないと戦えない。戦力補強が重要」。ファンへの最高のサービスは勝利だ。そのために不可欠な戦力補強に話が及んだ時は、笑みを浮かべながら明るく、振る舞った。「福岡で野球をやれることが大事。福岡はファンとのつながりもしっかりしている」。年間300万人を超える熱烈なファンの期待に応えるためにも、来季V奪回しか、王監督の脳裏にはない。

[日刊スポーツ 2004年11月10日]