【パ・プレーオフ第2ステージ第5戦、ダイエー3−4西武=延長十回、11日、福岡ドーム】絶対に見たくない光景だった。本拠地の空に舞ったのは敵将。悔しさ、無念さがグッとこみ上げる。目を真っ赤にさせた王監督の目前に、ファンからのメガホンや紙テープが、怒りと悲しみとともに飛び交った。
「いい試合だった。いい試合だった、じゃいけないんだけど。プレーオフはいい試合で、選手も気合が入っていた。お客さんも思い出に残る試合だったと思う」
自信をもって胸を張れる試合。しかし悲願の連覇が、まさかこんな形で終わろうとは…。
球界再編のうねりの中、チームへの愛情を再確認した1年でもあった。『もう一つの合併候補』と名指しされながらのシーズン。球団関係者と積極的に会合を持ち、本社、球団の思いを確認した上で、「我々のやることは一つしかないんだ!」と何度もナインを鼓舞した。
一方で、7月には読売関係者から古巣・巨人の監督就任の非公式な打診を受けた。「渡辺オーナーが“土下座しても来て欲しい”と言っている」との口説き文句で懇願されても、きっぱりと固辞した。死に場所は、福岡の地に決めていた。
レギュラーシーズン133試合を西武に4.5差をつけて、トップでゴールに飛び込んだ選手たちを最後まで信じた。連覇を信じた。王手をかけられても、王手をかけかえす力があった。昨年の日本シリーズと同じだ。九回には柴原の同点打。両こぶしを何度も振った。リーグ1位の意地と執念はみせたが、最後の最後で女神はそっぽを向いた。
王者にとっては理不尽な制度だが「日本シリーズに出るためには乗り越えないといけないこと。急に言われたことじゃない」。言い訳はしない。敢えてグッと前を見た。
「シーズンでも西武を乗り越えていくことが1つのテーマで、来年も取り組んでいく。勝つと案外見えないこともある。この悔しさを来年晴らす。残念ながら受け止めるしかない」
来季11年目。打倒西武、そしてV奪回へ、座右の銘『氣力』はまだまだ衰えるところを知らない。
[サンケイスポーツ 2004年10月12日]