<プレーオフ第2S:西武4−3ダイエー>◇第5戦◇11日◇福岡ドーム
ダイエーが屈辱を胸に、来季巻き返しを図る。宿敵西武との最終決戦。最後は延長10回、守護神三瀬が1点を失い力尽きた。中4日で先発した新垣の145球の熱投、城島、井口の1発、そして土壇場9回に同点に追いついた粘り…。敗れはしたが最後まで「王者」のプライドを見せて散った。レギュラーシーズン1位ながら日本シリーズ出場を逃したが、王貞治監督(64)は「この悔しさは来年、お返しする」と早くも来季のV奪回を力強く宣言した。
「王者」が散った。連覇の夢は消えた。王監督は敵将の胴上げも見ず、一塁側ベンチ裏に退いた。目が充血している。今季最後のミーティング。選手を責める言葉はない。「球史に残る戦いだった。来年もプレーオフはある。何かが足りなかった。シーズン1位も実力。日本シリーズに出られなかったのも実力だ」。再びグラウンドに現れ、敵将と握手。だが表彰式途中にベンチ裏へ。レギュラーシーズン1位通過も、V逸の屈辱に耐えられなかった。
わずか1点に泣いた。新垣の熱投に報いようと、城島が4回に先制弾、8回には井口が追撃弾。そして9回、驚異の粘りで同点に追いつく。だが延長10回、守護神・三瀬が決勝点を失い力尽きた。「こちらは城島の本塁打、井口の本塁打。向こうは石井や野田、普段のメンバーではないところが点を取った。こちらは基本の形(レギュラー)でしか点を取れなかった。層の厚さが出た」。シーズン133試合を制した価値は薄れない。それでも敗戦を認めざるを得なかった。
ダイエー球団16年目。福岡で初めて目の当たりにする敵将の胴上げ。その屈辱が、来季巻き返しへの原動力だ。プレーオフ制度には「決まっていたこと。乗り越えないといけなかった」と多くを語らないが、短期決戦で初めて分かったこともある。「課題が浮き彫りになった。西武にはシーズンでも(11勝14敗と)負け越していた。ロッテにも(シーズン)負け越したしチームはまだまだ本物ではない。勝ってしまうと見えない部分がある」。
苦手チームとの対戦が命取りになることを痛感した短期決戦。だからこそシーズンからの「1勝」にこだわる。敗戦後には、11月スタート予定だった秋季キャンプを、10月下旬に繰り上げるプランを提案。V奪回へ、再出発を期した。「この悔しさは、来年お返しする」。王ダイエーの05年の戦いは、屈辱とともに始まった。
[日刊スポーツ 2004年10月12日]