王さん無念…連続日本一ならず


 【ダ3−4西】無念のフィナーレ。ダイエー・王監督は伊東監督に歩み寄り、両手を握り締めた。だが、それが精いっぱいだった。レギュラーシーズンを1位通過しながらプレーオフ敗退。引き揚げる指揮官の背中には、むなしさが漂っていた。

 「いい試合だったけどな。でもいい試合では駄目。よく追いついたけど、突き放せなかった」

 城島が4回に先制弾を中堅に叩き込んだ。そして逆転を許した後も、8回に井口が中越えソロ、9回1死三塁から柴原が左前へ運んで追いついた。しかし、続く2死二、三塁のサヨナラの場面で松中が二ゴロに倒れた。3冠王がプレーオフ第2ステージで19打数2安打と大ブレーキ。背中に違和感を訴えたのも要因だったが、タオルで顔を覆って号泣した松中は声を絞り出した。「みんなに迷惑をかけた。力がなかった。またキャンプでやり直せと神様が言っているんだと思う。この悔しさは忘れません」

 長い1年。138試合目の1敗で、優勝の2文字が消えた。「今年はトップでゴールしたとはいえ、突き放す戦いができなかった。プレーオフはシーズン前から決まっていたこと。日本一になるには乗り越えなければいけない」。王監督はそう振り返った。シーズンは2位・西武に4・5ゲーム差。あと0・5ゲーム差で1勝のアドバンテージを得ることができた。それでも指揮官は言い訳にしない。9月中旬の神戸遠征で持病の腰痛が再発。大嫌いなハリ治療を受け、グラウンドに立ち続けた。昨オフに4番・小久保が無償トレードで巨人に移籍。村松もFAでオリックスへ去った。グラウンド外でも6月以降は球団合併や本社の産業再生機構入りの情報が連日流された。荒波の中で連続日本一を目指し選手と戦った今季。最後の最後に夢はついえた。

 「この悔しさを来年に何とか…」と王監督は言った。監督就任11年目の来季。無念の気持ちは来季の日本一奪回で晴らすつもりだ。

 ≪新垣 力投実らず≫怪物よりも長く、新垣はマウンドにいた。6日の第1戦から中4日で9イニング、145球。2度の熱投を博多のファンの目に焼き付けたが、最後に勝者となることはできなかった。「9回まで投げさせてもらえたから期待に応えたかった。6回はもったいなかった」。1点リードで迎え、3失点で逆転を許した“魔の6回”がすべてだった。3回までに許した走者は四球による1人だけ。7回からの3イニングも9人で完ぺきに抑えた。

 過去の松坂との対戦は1勝1敗だが、勝ったのは松坂が初回で負傷降板した試合。チーム最多の11勝を挙げた上での今季初対戦は、成長した自分をはかる物差しでもあった。7月の球宴第2戦が行われた長野から東京への移動では松坂のマイカーに同乗するほどの仲。互いに認め合う間柄だからこそ、激しい火花を散らした。「少し休んで出直しです」。この悔しさを無駄にはしない。来年は必ず、笑顔でマウンドを守り抜く。

[スポーツニッポン 2004年10月12日]