ダイエーの王貞治監督(64)が18日、福岡市内で報道陣の取材に応じ、来季の12球団堅持を主張してスト決行を決断した選手会に、早期のスト解除を求めた。球団経営の窮状を理解した上で、選手会に歩み寄りを期待する王監督は、スト決行で中止となった18、19の両日の西武戦(ともに福岡ドーム)の再試合を提案。ファンの気持ちを一番に考え、さらなるストを避けるよう訴えた。
本来なら西武戦(福岡ドーム)で試合を行っているはずが、スト決行でグラウンドにも立てない。王監督は私服姿で福岡市内の料理店で報道陣と食事をしながら、寂しげな表情を見せた。
「今の時代は企業も伸びたり、縮んだりしている。選手会が雇用の枠を譲れないというのだけでは、まかり通らない」
70年のプロ野球史上初となるスト突入。最悪の週末を迎え、黙っていられなかった。前日10時間もの交渉で決裂し、あくまで新規参入による来季の12球団維持にこだわった選手会の姿勢を疑問視した。「(新規参入は)来季からは日程的に厳しいのでは。仙台など名前が挙がっているけど、地元のバックアップ体制づくりもすぐには難しい」と、確固たる基盤のないままの性急な参入には無理がありすぎると訴えた。
巨人での現役、助監督、監督、そしてダイエーの監督と今年で40年間ユニホームに袖を通してきた。特に人気球団の巨人からダイエーの監督になってからは、球団経営の厳しさを目の当たりにした。「今、球団を持っている企業もこれまで頑張ってきた。球団を持つ熱意はあったのだから、そういう点は評価されていい。そういうこともひっくるめて(選手会は)考えないと」。その言葉には現役時代に世界記録の868本塁打、監督として1043勝を積み重ねてきた重みがある。
10日にスト一時回避が決まった際には拍手して心から喜んだ。そして「ストは現場だけでなく、ファンも喜んでいない」と言い続けてきた。選手会にだけではない。6月27日には1リーグ制か2リーグ制かで揺れる機構側に早急な決着を訴えた。その心にあるのはファンの存在。野球人として「ファンのためにグラウンドで恩返ししたい」との思いが常にある。だからこそ、スト決行で中止になった西武戦2試合の再試合を提案した。
「ファンのためにもやりたい。どういう話でやらないという方向になっているのか分からない。やる方がお互いに納得すると思う」。再試合がなければ、プレーオフ1位進出が決まる。しかし、それではファンへの裏切り行為になると考えている。次回25、26の両日のスト回避に向けて協議・交渉委員会は22日に再開する予定。ストが長引けば、ONをはじめ、先人たちが築いてきた球界は崩れていく。王監督の叫びは選手会、そして機構側へ届くだろうか。
≪星野SD 経営者側の姿勢批判≫阪神の星野SDが経営者側の姿勢を批判した。「せっかく新規参入したいという企業が出てきているのに、なぜ拒否するのか説明もない。審査っていう言葉も上から見下ろしてるように聞こえる。“たかが選手”発言に通じるものがある」とバッサリ。「ファンが選手会の方を多く支持したというのがすべてだよ」と話し、(1)オーナーと選手会の直接交渉(2)新規参入の門戸開放(3)ファンのための球界改革――の3カ条を提案した。
≪落合監督 経営者側に苦言≫王監督が選手会の姿勢を疑問視したのに対し、中日・落合監督は機構側に苦言を呈した。「経緯を考えてみろ。選手会もやりたくてストをやったわけじゃない。(機構側に)やりようならいくらでもある。時間もまだあるじゃないか」と名古屋駅の新幹線ホームで話した。「長年、この世界にいるから経営者側、選手会側の言い分も分かる。ただ赤字が続くというなら赤字を減らす努力をなぜしないんだ」と強調。この日60歳の誕生日を迎えた信子夫人を祝うため帰京したが、セ、パの首位チームの監督で主張は食い違っていた。
[スポーツニッポン 2004年9月19日]