ダイエー王監督1000勝! 史上11人目


 世界のホームラン王が、指揮官としても偉業を達成した。ダイエー王貞治監督(64)が史上11人目の「1000勝監督」となった。東京ドームで行われた日本ハム戦で松中、井口、城島ら、手塩にかけた選手がそろって祝砲を挙げる白星。今季最多タイの1試合5発、得点すべてが本塁打と、王監督の現役時代を思わせる豪快野球でメモリアル勝利に華を添えた。巨人時代を含め、15シーズン目での大台到達。これを通過点に、2年連続日本一への道を加速させる。
 ナインの喜ぶ顔が一番のプレゼントだった。王監督は試合後、両手を上げてスタンドの歓声に応えた。手には選手会長の松中から手渡されたウイニングボールがしっかりと握られていた。
 王監督「自分としては(1000勝の意識は)そうでもないのですが、選手が頑張ってくれて。選手に余分なプレッシャーをかけたくなかったので、リーチがかかってすぐに勝てて、こんなにいいことはないと思います」。
 大台到達は「世界の王」が率いるチームらしい豪快野球だった。1点を先制されたが、2回にズレータの3ランですぐに形勢逆転。主砲松中の2打席連発、井口の2試合連続アーチ、トドメは城島の20号ソロと一気にたたみかけた。
 記念の白星は生まれ育った地、監督生活もスタートした東京でつかんだ。その東京を離れて10年目。巨人5年間で347勝、ダイエーで653勝となった。巨人監督時代はリーグ優勝1度。ダイエー監督就任を決断した最大の理由は、東京で成し得なかった「常勝球団」の夢を達成することだった。首位西武に1・5ゲーム差。今年もV戦線の真っただ中にいる幸せが64歳の王監督を包んでいる。
 「おれは自分のことがラッキーだと思うよ。ユニホーム生活40年だろ。これだけ自分の好きな野球に携われるなんて。本当に幸せな男だよ」。順調にいけば同じ15年の監督生活で1034勝を挙げた長嶋氏を今年中に抜く。病魔に倒れた長嶋氏が先日、リハビリ施設から退院したことを知ったとき、あらためてユニホームの重さを実感した。「ユニホームを着たい気持ちが回復につながっているのでは」。
 人生を「円」に例える。「季節で言えば春が来れば夏が来て、秋、冬がある。人生もいいことがあれば、悪いこともある。野球も同じ。調子いいときもあれば、必ず、悪いときもある。どれだけいい時期を長くして、悪い時期を短くするかが大事」。だからこそ、最善を尽くせるように体調管理には人一倍気を使う。大のビール党が2杯目から焼酎を口にするようになった。試合前に毎日のように入っていたサウナも控えるようになった。5月下旬には両足につける0・5 キロ の健康器具を購入、ウオーキングに備えている。
 この日朝、故恭子夫人の墓前で手を合わせてから球場入りした。「1つ1つ勝ちを積み重ねていけば優勝できる。勝ち続けたい」。1000勝はあくまで通過点だ。

[日刊スポーツ 2004年6月8日]