王の威信、仙の意地…どちらも負けられぬワケ


 球界関係者から王ダイエーへ悲痛なエールが送られている。

 「人気のセ、実力のパと言われたのは、もう大昔の話だ。パ・リーグで唯一、セ・リーグに勝てる可能性がある球団。もし、その王ダイエーまでが敗れたら、パ・リーグは完全にセ・リーグのマイナー化してしまう」

 深刻な危機感を抱くのも無理はない。昨年、西武がエース松坂で自爆して、巨人に屈辱の4連敗。一昨年は"いてまえ打線"の近鉄がヤクルト・古田リードの前に音無しで1勝4敗。パ・リーグが日本シリーズを制したのは、最近10年間でたったの2回しかない。

 今回は奇しくも王監督vs星野監督の再戦になった。返り討ちで4年ぶりの日本一を目指す王監督には、パ・リーグの威信もかかっているのだ。

 存続をかけ、来季から3位までシリーズ出場権獲得の可能性がある変則プレーオフを実施するパ・リーグにとって、王ダイエーしか救世主はいない。

 「バカな制度だ。ウチが来季優勝したら、シリーズはやらん」と早々と、巨人・渡辺オーナーからシリーズボイコット宣言まで飛び出しているからだ。

 王ダイエーが星野阪神に惨敗するようなら、さらに渡辺オーナーの言動は過激化するだろう。

 ダイエー・王監督に対し、阪神・星野監督には新カリスマ監督として勇退するプライドがかかる。3度目の正直で何とか初の日本一監督にならないと、阪神に18年ぶりの優勝をもたらし、勇退する名声にも響いてくる。

 「日本シリーズには勝てない監督」というレッテルを張られたままユニホームを脱ぐことになるからだ。第一次政権でリーグ優勝2回しながら日本一になれなかった巨人・長嶋監督も、復帰した後の3度目のシリーズ挑戦で森西武を倒している。現役時代から打倒・巨人、ONをモットーにしてきた星野監督とすれば、先輩カリスマ監督のONに後れを取るわけにはいかない。

 日本中に星野阪神大旋風を巻き起こし、勇退するエピローグとしても、日本一でなければ、似合わないだろう。

 互いにメンツをかけた両監督。返り討ちか雪辱か。18日午後6時15分のプレーボールが待ち遠しい。

[夕刊フジ 2003年10月17日]