巨人・渡辺恒雄オーナーが、王ダイエーの身売り問題で、外資系投資企業の介入を排除宣言。波紋を呼んでいるが、実は、王貞治監督も外資系企業の球団買収には拒否反応。外資系企業が球団売買にかかわってくれば、ユニホームを脱ぐという非常事態も考えられる。
現在、表面化している王ダイエーの身売り問題は、ダイエー本社のメーンバンク主導だ。
シーホークホテルと福岡ドームを買収する外資系企業が、日本企業の中から球団の身売り先を決める。銀行側の描いているシナリオだ。
ところが、球団身売りを迫られているダイエー本社は、球団を手放すつもりはない。
「ダイエー本社トップ、球団首脳、どちらからも『球団を売るつもりは全くない』といわれている」と、王監督が明言する。
とはいえ、泥沼のダイエー本社再建のために、銀行側が球団身売りは欠かせないと判断している以上、抵抗できるのも時間の問題だろう。
が、銀行側にとって衝撃的な大誤算になるのは、王監督が外資系企業の介入に強烈な拒否反応を持っていることだ。
「プロ野球協約で外資系企業が球団を持てないようにしてあるのは、大事なことだ。重要なケジメ、歯止めだよ。ダミー会社などを使った外資系企業の参入を許したら、日本のプロ野球界は、大リーグのマイナーリーグ化する恐れがある」
外資系企業の介入を許せば、大リーグ球団の株を持つ企業がダミー会社を利用して日本の球団を買収。
いつの間にか、日本の球団はメジャー傘下のマイナーチーム化する。そんな差し迫った危機感を王監督は持っているのだ。
巨人・渡辺オーナーが、銀行主導の王ダイエー身売り計画に激怒した理由とオーバーラップしてくる。
「ダイエーをハゲタカファンドに身売りさせるわけにはいかん。間接的にいろいろ入れてごまかしても、最終的にはハゲタカに身売りすることになるんだ。実権をハゲタカに奪われ、名目的に日本人(オーナー)が入るなんてことは許されない」
王監督同様に、渡辺オーナーも外資系企業のダミー会社の横行を危惧しているのだ。
「ワンちゃんにはハゲタカの下で監督をやってもらいたくないんだよ。巨人にすぐにってわけにはいかんが、(将来的には監督で)あり得る。巨人のオーナーだっていいんだ」
銀行側のシナリオ通り、外資系企業が介入してダイエー身売りになった最悪の場合、渡辺オーナーは、王監督の巨人復帰計画を口にしている。
外資系企業の介在に対し、強烈なアレルギー反応を持つ王監督だけに、新球団誕生と同時に退団はあり得ない話ではない。
そうなれば、渡辺オーナーが言うように、巨人復帰の可能性も十分に出てくる。
ダイエー球団の身売り問題が煮詰まれば煮詰まるほど、王監督の去就が一段と注目される。
[夕刊フジ 2003年7月23日]