連覇失敗決定的で渡辺オーナーの大号令の下、星野阪神流コピー、というよりも長嶋監督時代の大補強に逆戻りしようとしている原巨人。が、そんな古巣の動きに真っ向からダイエー・王監督がストップをかける。
「巨人は生え抜きでもう一度、チームを作り直す必要がある」
ONコンビでV9という日本プロ野球史上、不滅の金字塔を打ち立てている世界の王、ダイエー・王監督は、こう訴える。
「巨人というのは、特別なチームだから、FAとかで他のチームからきた選手には重圧がかかる。生え抜きでないとダメなんだ」
球界の盟主という重たい看板を背負ってきた巨人を再建するには、生え抜きが主役でないと務まらない。そう断言するのだ。
「自分がいたから、今の巨人軍がある。そういうプライドはもちろんある。でも、巨人軍に入団したから、今の自分があるのも確かだ」
-ONとも日頃から異口同音に認める巨人という特殊性。それを踏まえた上で、王監督は改めて「巨人再建は生え抜きで」と強烈にアピールするのだ。
そのためには環境の整備が必要になる。
「厳しいかもしれないが、FA選手を整理する必要がある」と明言する。
清原、江藤、工藤-限界が見えてきたFA選手たちを一掃することが、生え抜きによる再建の第一歩だという。
王監督が緊急アピールするのは、巨人が危険なUターンをしようとしているからだ。
「ウチのフロントには伊良部を取る発想がなかった」という渡辺オーナーの敗戦の弁から、再び大補強をもくろむ。
FAの西武・松井、マイナー落ちで日本球界復帰がウワサされるメッツ・新庄など、あちこちにターゲットを広げ、乱獲の動きだ。
大独走V、8月末の胴上げにひた走る星野阪神の原動力が、メジャー帰りの伊良部とFA移籍の金本のコンビなのは間違いない。
渡辺オーナーとすれば、来季、V奪回するためには、星野流コピーでも何でもやれ! ということだろう。
というよりも、大補強は長嶋巨人が元祖だったのだから、本家本元の意地を見せろの意味か。
どちらにせよ、古巣・巨人に人一倍愛着を持っている王監督にしたら、黙って見過ごすわけにはいかない。
「王さん、いくら言ってもムダですよ。またFA選手を取ろうとしているんだから。生え抜きといったって、高橋なんか清原の後をくっついて歩いているんだから、期待できっこない」
同じV9巨人ナインのOBがこう王監督に絶望的に語りかけたが、「高橋由だって頼りにしていた松井がいきなりいなくなってまだ1年だからね」と猶予期間を与える。
FA選手を整理しろ! という王発言の意味はそこにこそあるのだ。
「生え抜きでV9超えのV10を目指したい」という原構想は、松井のヤンキース入りで土台から狂った。
「長嶋がカリスマ監督だからできたこと」という長嶋巨人時代の乱獲に戻れば、さらに収拾がつかなくなる。王監督の心の底からの訴えは渡辺オーナーの耳に届くか。
[夕刊フジ 2003年7月22日]