西武との決戦ムードに水を差す突然の球団身売り報道。ダイエー・王貞治監督(63)が激怒している。
首位をキープ、7連勝で本拠地・福岡ドームに戻り、西武を迎撃する3連戦。
先の札幌3連戦で3連勝。こびりついた西武コンプレックスを完全に消し去ることができるか。
3年ぶりのV奪回へ重大な意味を持つ試合だ。第1戦は松坂vs寺原という甲子園を沸かせたヒーロー対決で、戦前から盛り上がりを見せていた。
それなのに、決戦当日朝に、一部一般紙が1面トップで球団身売り報道だ。
「こういうタイミングだから、わざわざぶつけてきたのかもしれない」と、王監督は激怒。今回の身売り騒動の内幕を明かす。
「身売りなんてありませんよ。ダイエーからも球団からもちゃんと説明がありました。銀行が『本業以外のことはするな』と言っているだけでしょう。球団として身売り報道した新聞社に抗議するそうです」
確かに、王監督が言う通り、主力銀行がダイエー本社に球団身売りを迫っていることは、今に始まったことではない。
これまで球団買収先として武富士、アサヒビール、サッポロビールなどがウワサにあがったことがある。
しかし、トンネルの出口が見つからない平成大不況。実際に球団を買収する企業は、おいそれとは見つからないのが現実だ。
しかも、野球協約では外資企業の球団買収が禁じられているために、なおさら買い手は現れにくい。
高く売れるなら、ダイエーだけでなく、西武でも日本ハムでもオリックスでも球団を手放したいだろう。
バブルのころなら、ほとんどのパ・リーグ球団が身売り、新球団になっている。
「お金のある企業が買ってくれるなら、それの方がいい」という声がダイエー球団内部からもあがっているのだ。
が、実際は好条件で買い手がつかないのが現状だ。
「この時代にそんな簡単に球団を買う企業があるわけがないだろう」と、王監督が語気を荒らげるのも当然だろう。
「まあ年中行事のように書かれているから、選手は『またか』と気にもしていないけどね」と、ナインに動揺のないことを強調するのも、身売り報道に対する王監督の怒りの表れだ。
こうなったら、世界の王のメンツと意地にかけても、3年ぶりのリーグ優勝、4年ぶりの日本一奪回をするしかない。
[夕刊フジ2003年5月24日]